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杉田「できるだけ長くコートの上にいたい」 [バルセロナ/男子テニス]

4/28(金) 12:05配信

THE TENNIS DAILY

 スペイン・バルセロナで開催されている 「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月24~30日/賞金総額232万4905ユーロ/クレーコート)のシングルス2回戦で、杉田祐一(三菱電機)が世界20位で第7シードのパブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)を6-3 6-3で下して準々決勝に駒を進めた。

杉田祐一がカレーニョ ブスタを倒してATP500で初の8強入り [バルセロナ・オープン・バンコサバデル]

 ATP250のチェンナイで8強入りしたことはあった杉田だが、ATP500でのベスト8はキャリア初。地元記者に詰め寄られ、「人生最高の勝利」と答えたが、同時に「ベスト8に入ってうれしいというより、また次の試合ができることがうれしい」と、見つめるのはあくまで前だ。杉田は準々決勝で、世界9位で第4シードのドミニク・ティーム(オーストリア)と対戦する。

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 降りしきる雨のため開始は5時間近く遅れ、場所はセンターコートからコート2に移ったが、この雨は杉田にとってそれほど悪いものではなかったらしい。

「今日は雨が降って、コート(ボール)が弾まなくなっていたのが僕にとってはすごくラッキーだった。ボールもコートも重くなったために、(ライジングの)早いタイミングでボールをとらえやすいパターンになった」と杉田は言う。しかしそれができたのも、試合を重ねるごとに鋭さを増すフォアハンドの好調さがあってこそだった。

「一昨日のガスケ戦からフォアの調子が本当によく、自信をもって振りきれた。最初の数ゲームで相手が引いているのを感じたので、このままフォアでどんどん主導権をとろうと思った」

 この言葉の通り杉田は序盤から鋭いフォアを叩き込み、いきなり40-0とリードすると、簡単に最初のサービスゲームをキープした。もちろんカレーニョブスタも容易には崩れず、ブレークポイントを握られた1-1からの第3ゲームをはじめ、競ったゲームはいくつもある。しかしファーストサービスの確率81%というこの日のサービスのよさにも助けられ、試合の舵は常に杉田が握っていたと言っていい。

 第1セットでは相手のミスが連続した第4ゲームに0-30からフォアのリターンエースを叩き込み、次のブレークポイントを一発でものにした。5-3からの自分のサービスゲームでは、長短、コースを振り分けた賢いプレースメントに加え、甘い球を逃さず叩き込む、“超“強気のフォアで相手を完全に圧倒。1ポイントも与えずにゲームを締めくくると6-3で第1セットを先取した。

 杉田はその勢いのまま第2セットの第1ゲームでブレークを果たしたが、ほぼ危なげなく進んだ第1セットと違い、第2セットでは第6ゲームから第8ゲームにかけて水面下の山場があった。

 カレーニョ ブスタは3月のインディアンウェルズ(ATP1000)でベスト4に入り、「現在、キャリアで最良の時期にある」と自負する20位の選手。流れを変えようと、より粘り強く深いボールを打ち込み、ミスを減らし始めたカレーニョ ブスタを前に、杉田が強気で打ちにいったショットがミスとなるパターンが少しずつ増え始めた。

「あの辺りはかなり重要で非常に迷った」と杉田は振り返る。「そこまでやや打ちすぎていて結構ダメージもあったので、このまま打ちきって勝つか、しっかり組み立てつつ一回ペースを落とそうか、すごく迷ったが、結局、打ちきろうと決めた」

 悪いほうに転べば流れが逆転しかねなかった局面で最終的にカギとなったのは、引かずに攻めきる姿勢を貫いた杉田の選択だった。

 形勢逆転を狙うカレーニョ ブスタの駆け引きは、杉田が2度のブレークポイントをものにし損ねたあと3-2から迎えた杉田のサービスゲームですでに始まっていた。相手のミスが減りポイントが競り始める中、杉田は強気の姿勢を崩さず。振ったかと思えば、同じコースを2度狙って相手の逆をつく頭脳的な攻めで、このゲームをもぎとる。しかしこの傾向は、ここだけでは終わらなかった。

 おそらく最大の正念場は、次の杉田のサービスゲーム、4-3からの第8ゲームだった。最初のポイントを取ったあと、アグレッシブに打ったショットのミスが続き、杉田は15-40とブレークポイントを握られてしまう。

「リスクはあったし、ミスも絡んで非常に危険な状態になった」と自ら認めたこの局面。ラリーの末の相手のミスで30-40となったあと、杉田は渾身のフォアの逆クロスを打ち込んでエースを奪い、この危機から脱出した。決まった瞬間にあげた雄叫びは、彼がこのポイントの重要性を知っていた証だろう。

「30-40で逆クロスのエースを取りにいった。あれが今週の意気込み(の象徴)ですね」

 そして、そのあとには杉田の真骨頂も出た。杉田がアドバンテージを握ったあと、打ち込んでコート内に踏み込む杉田をかわそうとカレーニョ ブスタは2本のロブを上げる。1本目のスマッシュを返されても杉田はまったく慌てず、2本目で豪快なジャンピング・スマッシュを決めた。

「ジャンピング・スマッシュが一番得意なんです」と試合後、杉田はその場面を振り返って満足げな笑みを見せた。「まあよかった。持ち味は出していこうかなと」。

 おそらくこれでカレーニョ ブスタの抵抗の勢いは絶ち切られ、杉田は次の相手のサービスをブレークするという形でとどめを刺す。最後は杉田がフォアでダウン・ザ・ラインを狙い、対処しきれなかったカレーニョ ブスタのショットがコートを割って試合に幕が降りた。

「今日は本当に素晴らしいプレーをし、その上で勝った。今後のためにすごく重要なこと。本当にうれしい」

 試合後、杉田はスペインの記者にこう言ってから、「実はクレー・シーズンの連戦をするのは初めてなんだ」と言い添えた。

 杉田は昨年末、イタリア・サンレモにあるボブ・ブレットのアカデミーでトレーニング・キャンプを行い、徹底的にクレーコートでトレーニングを行ったのだと言う。そして、やはりイタリアでクレーのトレーニングをしたのちにモンテカルロに入った。

「フットワークが僕の武器だと思うので、クレーはそれを上手いこと生かせるコートだとは思う。プレー自体はぜんぜん変わってくるので、まだまだ難しいところはあるが、今それがうまくフィットしてきている」と杉田は言う。「本当にクレーがお気に入りのサーフェスになりつつあるので、これを形にしていきたい」。

 そして何より今、杉田は強い相手と対戦するのが楽しくて仕方がない、という雰囲気なのだ。

「いろんな選手と戦いたい。素晴らしい選手がたくさんいるので、ひとつでも多くの試合をプレーして、少しでも長くコートの上にいたい。それが、絶対今後に役に立つと思うので」と杉田は言う。

 ATP500の大会での初のベスト8入りという喜び以上に、「また次の試合ができるということがうれしい」とする彼と、世界9位のティームの準々決勝は、28日の現地時間12時30分からセンターコートのラファ・ナダル・コートで行われる。

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子)

Photo: BARCELONA, SPAIN - APRIL 27: Youchi Sugita of Japan celebrates after winning his match against Pablo Carreno Busta of Spain during the Day 4 of the Barcelona Open Banc Sabadell at the Real Club de Tenis Barcelona on April 27, 2017 in Barcelona, Spain. (Photo by fotopress/Getty Images)

最終更新:4/28(金) 12:05
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