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渋谷の再開発をしかける東急社長、思い出す意外な街の原風景とは

4/28(金) 14:30配信

ニュースイッチ

<野本弘文>ふるさとの商店街、街は人生を輝かせる「舞台」

 街は人生を輝かせる「舞台」である。それぞれの「役(キャスト)」を演じるかのように、いきいきと働き、くつろぎ、住まう場所―。そんな街は多くの人を惹きつけるはずだ。渋谷と原宿の中間点に28日開業する複合施設を「渋谷キャスト」と命名した裏にはそんな思いがある。

 2020年の東京五輪・パラリンピックへ向け大規模開発が進む東京。中でも東急グループによる六つのプロジェクトが進行する渋谷駅周辺の再開発は「100年に一度」と呼ばれる規模だ。「渋谷キャスト」を皮切りに毎年、新たな施設が出現する。

 「安心・安全」はもちろんのこと、歩きたくなる、立ち寄りたくなる―。常に変化があり、オンリーワンの楽しさが連続する。それこそ街の魅力ではなかろうか。歴史や文化に育まれた独自性を生かし、周辺地域との回遊性を高めることで、街全体がひとつの経済圏として発展、活性化していく。渋谷はエンターテインメントやネットビジネスの発信基地であると同時に、原宿や青山、表参道など周辺エリアとの結節点として活況を呈している。

 私にとって街の原風景は、ふるさとの商店街である。両親は福岡県で酒屋と果物屋を営んでおり、幼い頃から店の手伝いをした。夏の土曜日。ひときわ高ぶる気持ちは今も忘れられない。

 市が立ち、近隣から住民が集まってくる。あちこちにできる談笑の輪を眺めながら、スイカやかき氷を売った。街とともに暮らしがあった幸せな記憶として心に刻まれている。

 楽天が本社を移転したことでも話題を集めた東京世田谷区の複合施設「二子玉川ライズ」は第1期の開業時、東日本大震災に見舞われた。第2期開発を延期すべきだとの声もあったが、社長就任間もない私は反対意見を押し切った。にぎわいを生み出すはずの街を開発途上で放置することがあってはならないと考えたからだ。

 東急電鉄の前身は田園調布の都市開発のため敷設された目黒蒲田電鉄。都市開発のための鉄道敷設が原点だ。関東大震災が田園調布を、戦後の住宅難が多摩田園都市の開発を生んだように、当社は街づくりとともに歩んできた。鉄道と都市開発を事業の軸としながらライフスタイルの多様化やそれに伴う需要を取り込んできたのだ。

 それからおよそ1世紀―。いま経営は、創業期に匹敵する転換期を迎えている。

最終更新:4/28(金) 14:30
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