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震災支援に尽力した台湾人を生き生きと表現 『アリガト謝謝』著者・木下諄一さん

4/29(土) 14:48配信

中央社フォーカス台湾

(台北 29日 中央社)台湾在住30年。2011年には在台日本人5人の奮闘を描いた中国語作品「蒲公英之絮(タンポポの綿毛)」で外国人初の台北文学奨を受賞。今年3月に「アリガト謝謝(シエシエ)」(講談社)を出版し、東日本大震災を受けて台湾で広まった募金・支援活動とそれを取り巻く台湾人らの姿を事実を基にしたフィクションで表現した。

オムニバス形式の作品中にはさまざまな世代や、違った立場の人々が登場。その一人ひとりが、あたかも実際に存在していそうな絶妙なリアリティーをもって描かれている。30年間の滞在を通じて感じ取った台湾人像で、「自分にしかできない、ほかの誰にもできないこと」と胸を張る。

台湾に初めて足を運んだ時、特別な感情はなかった。だが、反日的な思想が残る戒厳令下で、日本と全く違う環境や文化をおもしろいと感じた。台湾に住む日本人は決して多くなく、当時の日本文化が浸透していない時代。必然的に台湾人と触れ合い、中国語を含めてたくさんのことを学んだ。その後の民主化の過程では、さらに理解を深めようと、「外国人」としての中立な立場を貫きながら、違った政治思想の人々と交流を持ち、積極的に意見や考え方を聞いた。「好奇心が強かったのかな」と笑うが、結果的に小説執筆に生かされた。

募金や支援の輪が広がった事実を描いた中で伝えたかったのは、「台湾では(日本をめぐって)それぞれの世代によって違う見方がある」という考え方の多様性だ。「一言で『親日』という人が多いが、実は根本的な部分は全く違う」「一言で言えば『台湾人は日本を好き』と言えるけれど、その『好き』の意味はいろいろあって、その原因もいろいろある。もちろん好きじゃない人もいる。それで全体として台湾が成り立っている」。

「台湾を知ってもらいたい」と木下さん。「台湾のことを知らない日本の読者が、台湾像を感じて、台湾に興味を持ってもらえれば、約30年台湾にお世話になったぼくが、少しは恩返しができるのではないかな」。今後は台湾でも中国語版を出版する予定。台湾からの支援を受け、日本の有志らが台湾の新聞に感謝広告を出すまでの一部始終を理解してもらえればとしている。

(齊藤啓介)