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「今が勝負のとき」杉田が掴んだ足掛かり [バルセロナ/男子テニス]

4/29(土) 12:04配信

THE TENNIS DAILY

 スペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月24~30日/賞金総額232万4905ユーロ/クレーコート)のシングルス準々決勝で、杉田祐一(三菱電機)が世界ランク9位で第4シードのドミニク・ティーム(オーストリア)と対戦し、1-6 2-6で敗れた。

杉田祐一は準々決勝で第4シードのティームに敗退 [バルセロナ・オープン・バンコサバデル]

 バルセロナのベスト8に進出した初のラッキールーザーとなった杉田は、ティームが織りなす多彩な球種に翻弄され、最後まで自分のリズムをつかむことができなかった。しかし、「ツアーレベルでいえば僕は新米」と言う杉田は、ここで得たチャンスから貴重な足掛かりを掴む。リシャール・ガスケ(フランス)、パブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)と20位台の実力者たちを倒したその攻撃的プレーは欧州の人々に強い印象を残しただけでなく、杉田に自信と、彼をキャリア最高の70位台に導くランキング・ポイントをもたらした。

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「完敗だった」と試合後、杉田は言った。第1セットの第1ゲームでいきなりティームのサービスをブレークしはしたが、杉田がここまでの3試合のリズムで打てていないことは一目瞭然だった。ティームは強めのスピンのかかった彼本来のショットに低く滑るスライスを巧みに混ぜ込み、体勢を崩された杉田にこれまでになかったミスが出た。

「相手のボールの回転がすごく、打ちたいタイミングで打たせてもらえなかったのが一番の問題。あの重い回転で徐々にタイミングをずらされていく。僕の場合は特に、本当にピンポイントで当てないといけないフラットにとらえて攻めるプレースタイルなので、あそこまで強力なスピンで跳ねてくると僕の打ちたいところで打つことができない」と杉田は振り返った。

 フォア、バック双方からの強打の鋭さのみならず、そのショットのセンスと多彩さゆえ次期全仏チャンピオンにその名を挙げられ始めているティーム。一年ほど前まではただ強打しては勝手にミスをする不安定さもあったが、ここ一年で試合運びはぐっと賢明になった。

 杉田が挙げた高く跳ねるスピンに加え、そこにまったく違うスピード、バウンドのスライスが巧みに混ぜ込まれ、終始変わるテンポ、球種に杉田は一度も安定したリズムで打つことを許されず。ティームが低いスライスでいなし、杉田がそこを打ちにいってミスする場面、また「スライスで少し前におびき出して、そのあとにしっかりスピンをかけて深いところに入れてくる」場面も多々あった。

「さすがにツアーのトップでやっている選手、うまいと思った。いろんな勝ち方を持っており、球種の質とレベルがやはり違った」と杉田は言う。そしてそれは、ティームが意識して行ったことでもあった。

「彼が3人の優秀な選手を倒し、素晴らしい調子であることは知っていた。だから最初から非常に集中し、最初のポイントからアグレッシブにいくよう努めた」と試合後、ティームは言った。「僕の戦略プランは、彼に心地よい状態、心地よいリズムで打たせないようにすることだった。いいテンポで打たせると本領を発揮してくるのはわかっていたので、スライスをたくさん混ぜ、それからハイスピンを打つなどし、バウンドを変えて多彩なショットでリズムを狂わせるよう努めた。今日はそれがうまくでき、効果を生んでいたと思う。またスピンを打ったときにボールが高く跳ねる、今日のドライなコンディションも僕には有利だった」。

 杉田は自分の側を振り返り、「もちろん相手の使う球種への対処が難しかったというのもあるが、大事なところ、本来もっと試合の中に入り込むべきところで自分のミスが出た」とも言う。「悪い形で第1セットを落とし、タイミングが合わないまま第2セットに入ってしまっていたので、なかなかうまく切り替えができなかった」。

 ペースを変えられないままミスをさせられる形で第1セットを1-6で落としたあと、杉田はファーストサービスを入れて浮き球を叩き、初めていいパターンでウィナーを奪うことにより、第2セットの第1ゲームを取る。次のゲームでは相手のミスもあってブレークを果たし、2-0とリードしたが、それに乗じてプレーレベルを高めることができなかった。

「入り込むべきところでできなかった。2-1の15-30でフォアハンドのエラーをしたのだが、そこでもやはり、しっかり回転をかけてくるティームのショットが一段とうまかった。素晴らしい選手だなと思った」

 終わって見れば1-6 2-6の完敗。「一度も落ち着いてプレーさせてもらえなかった」と試合後に漏らしたとおり、そこまでの3試合で見せた、ミスのない、しかし果敢な攻撃的テニスを、ティームのうまさに封じ込まれた形となった。しかし、この大会で見せたトップ20を倒しうる攻撃的テニスは、今後の杉田の起爆剤となり得るものだ。

「このようなトップの選手と連戦できる機会は今までなかったので、本当に実りある経験だった。強豪と戦いながら、要所要所で自分の持ち味も出せた。いい形で入れたときには素晴らしい選手も倒せたし、自信になった大会であることは間違いない」と杉田は言う。

「本当にうまく戦えたときもあるし、今日のように簡単に崩れてしまい、課題を見せつけられるときもある。もう一段階ステップアップしていくために必要なプレーというのを、もっともっと磨いていかないといけない」

 杉田は昨年末からクレーコートでトレーニング・キャンプを行い、これまでやらなかったクレーでの連戦というプランを立てた。それは、「ランキングも100位前後に上がってきた今、次の壁を破るためにはやはりクレーは必須だと思っていた。そこにトライするなら、年齢的にもやはり今年しかないと思った」からなのだと言う。

「こうやってランキングが上がってきた今が、間違いなく勝負のときであると思う。逆に言えば、あとがないという気持ちでやっているし、絶対にこのチャンスを逃さないようにしないといけない」と、杉田は決意を見せる。

 ATP500のバルセロナでのベスト8で来週にはランキングが70位台に上がることが予想され、第一段階はうまくいった。そして次は、すぐにやってくる。

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子)

Photo: BARCELONA, SPAIN - APRIL 28: Yuichi Sugita of Japan serves against Dominic Thiem of Austria on day five of the Barcelona Open Banc Sabadell in the quarterfinal on day five of the Barcelona Open Banc Sabadell on April 28, 2017 in Barcelona, Spain. (Photo by David Ramos/Getty Images)

最終更新:4/29(土) 20:35
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