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99%は基準外 日本の「ガラパゴス投信」は顧客を見ていない

4/30(日) 17:10配信

ZUU online

金融庁長官が日本の資産運用ビジネスにおいて「販売者の論理」が横行している事について警鐘を鳴らした。現在の投信の99%は積立NISAの投資対象基準に満たないという結果になっている。しかし米国では上位10本のうち8本が基準を満たしているのだ。

■公募投信の99%が「基準外」

金融庁長官の森信親氏が述べた内容が日本の金融業界の問題点をあぶり出した。2017年4月7日に「日本の資産運用業界への期待」と題された日本証券アナリスト協会での講演で述べた内容である。その一部を原文通り引用する。

「積立 NISA の対象となりうる投信は、インデックス投信とアクティブ型投信あわせて約 50 本と、公募株式投信 5406 本の1%以下となりました。 ところが、同じ基準を米国に当てはめてみると、全く異なる結果となります。米国で残高の大きい株式投信については、上位10本のうち8本がこの積立 NISA の基準を満たしています。一方、我が国の残高上位 30本の株式投信の中で、この基準を満たしているのは 29 位に一本あるだけ」なのだ。出所:金融庁ホームページ「日本の資産運用業界への期待」日本の公募投信が米国に比べてコスト高であることを、積立NISAの商品選択を行っている専門家が指摘しているのだ。

■積立NISAとはどんな制度か

積立 NISA は、年間 40 万円を上限として行う積立投資について、配当・譲渡所得 を 20 年間非課税とする制度である。投資信託や株式運用で利益が出た部分については、通常20.315%の税金がかかる。

しかしNISA、積立NISA,個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)のいずれも非課税となり、20.315%がかからない。制度上の金額の範囲内であれば、税引き後リターンが改善するので、まずこれらの制度を上手に活用した方が良いといえる。ただし書類提出などで通常の口座開設よりも時間と手間がかかることも付記しておく。

今回、積立という側面に日が当たった理由を考えてみる。
1. 投資時期の分散(積立投資)により高値掴み等のリスクを軽減できる
2. 安定的に株式市場に資金が流入する仕組みを作る
3. 日本人に投資に慣れ親しんでもらい、金融を使いこなすチカラ(金融ケイパビリティ)を向上させる

毎月積立を行うことで、相場が下落している時にはより多く購入ができる、いわゆるドルコスト平均法の仕組みを広く紹介できる。投資家が株価下落局面でも投資を過度に恐れない耐性を身に付け、株式相場の上昇・下落に一喜一憂しない姿勢、投資はギャンブルとは異なること、体験として身につけることを、積立NISAは後押しするであろう。

■なぜ「分配型」は積立NISAだとダメなのか?

積立NISAの対象として、いわゆる「分配型」の投信が今回は除外された。投資信託を作っている運用業者からは「なぜ顧客ニーズがあるのに、除外されるのか?」「分配型はダメだという誤解を与えるのでは?」といった反対意見も出ることだろう。

積立NISAの目的としては、金融商品を通じて長期の資産形成を、ということであろう。長期の資産形成という側面ではインカム(配当や利息など入ってくる収入)を再投資して複利で運用する方が効率が良いことは事実だ。イメージとしては3%の運用をするケースで、100万円運用して3万円の利益が出た。翌年は100万円+3万円の103万円を運用の元本にすると、増えた3万円部分にも3%の運用ができるということだ。これを長年積み重ねることで、チリも積もれば山となる様に資産形成に役立つという事である。

しかし、これ以外にも分配型が外れた理由がある。言葉は悪いがタコ足配当だ。

■タコ足配当とは何か

自分の足を食べているタコ、という表現がタコ足の語源だ。分配金で受け取っている資金は実は自分自身だったという恐ろしい事柄である。

2015年の分配型投信の運用はマイナス3.4兆円であったにもかかわらず、分配金の総額は5.7兆円であったという。実際とは異なるがどんな事柄なのかイメージをしてみよう。

元本100で運用して、運用益で5.7を受け取ったのでは無い。元本が100のままでは無い。元本は運用損で「100-3.4=96.6」と減少した上に、分配金を払い出したため、96.6-5.7=90.9となってしまった、というイメージだ。

分配金を沢山受け取ったが、それは運用で得をした部分ではなく、投資した元本を受け取ったに過ぎないというわけだ。まさに投資元本をただ受け取っているだけのタコ足だ。たくさん受け取っているからトクしていると考えることは認識不足である。問題なのは運用益でない部分を受け取っているという事実に気づいていない投資家が相当数であろうことである。

なお、全ての分配型がこの形では無い。海外ETFのインカム型の基本は運用や配当収益の交付で元本を減らして交付しているものでは無い。分配型のすべてが悪い訳ではないが、日本独自のタコ足分配型というガラパゴス化が問題なのだ。

安東隆司(あんどう・りゅうじ)
RIA JAPAN(http://ria-japan.co.jp/)おカネ学株式会社代表取締役。CFP®ファイナンシャル・プランナー、元プライベート・バンカー。日米欧の銀行・証券・信託銀行に26年勤務後、独立。お客様サイドに立った助言を実践するためには高い手数料は弊害と考え、証券関連の手数料を受け取らない内閣総理大臣登録の「投資助言業」を経営。著書に「iDeCo おしえてあげる 1時間でわかる版」

最終更新:4/30(日) 17:10
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