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ティームがマレーを圧倒、対ナダルの決勝へ [バルセロナ/男子テニス]

4/30(日) 12:01配信

THE TENNIS DAILY

 スペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月24~30日/賞金総額232万4905ユーロ/クレーコート)のシングルス準決勝で、第4シードのドミニク・ティーム(オーストリア)が第1シードのアンディ・マレー(イギリス)を6-2 3-6 6-4で下し、決勝に進出した。ティームはそこで、前年度覇者で第3シードのラファエル・ナダル(スペイン)と対戦する。ナダルはホレイショ・ゼバロス(アルゼンチン)を6-3 6-4で退けて勝ち上がった。

「今が勝負のとき」と杉田、ティームに完敗するも掴んだ足掛かり [バルセロナ・オープン・バンコサバデル]

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 オーストリアが生み出したモーツァルト以来の偉人はニキ・ラウダ(F1のレーサー)だと言われるが、オーストリアが生み出したニキ・ラウダ以来の偉人はドミニク・ティームだと言われるようになる日は近いかもしれない。スコアが見せる以上に圧巻のプレーで世界1位のマレーを倒したあと、ティームは感慨深げにこう言った。

「これはマレーに対する僕の初めての勝利だ。そしてまた、トップ10選手に対する今季初の勝利でもある。今日の勝利にはポジティブな要素がたくさんあるよ。おそらくこれは、今年ここまでのところの最良の勝利だ。なぜって、勝っただけでなく、僕は本当にいいプレーをした。彼のプレーは試合が進むにつれよくなり、僕は第3セットの出だしにがっかりしていたが、そこからどんなふうにメンタル的に奮起できたかは大きな前進の一歩だった」

 ティームが前日、杉田祐一(三菱電機)に使った多彩なスピンの混合は、マレーに対しても通用した。

 低く沈むスライスでミスを誘われ、強烈なドライブのかかった強打でノータッチエースを奪われ、マレーは3度のブレークを許したあとに第1セットを2-6で落とした。

 第2セットに入っても形勢はそう変わらなかった。グラウンドストロークの打ち合いでは太刀打ちできないと判断したマレーは、頻繁にネットをとり、ドロップショットを多用してなんとかポイントを稼ごうとしていたが、目につくのはティームのショットの見事さばかり。

 ラリーを支配していたのは常にティームのほうであり、実際、マレーが第2セットを取り返したことが矛盾に思えるほどだったのである。

 マレーは自分のサービスをキープするのに非常に苦労し、毎回長い時間をかけていた。それでも、じりじりと相手の調子をくるわせ、形勢を変えることができたのは、おそらく勝負強さと経験値のおかげだろう。

 第2セット3-3からのマレーのサービスで、ティームは目の覚めるようなフォアハンドの逆クロスを叩き、その浮き球をスマッシュで決めてブレークポイントをつかむ。

 ところがその直後、決めようと力んだせいか、そこまで見られなかったアンフォーストエラーをおかし、マレーのいいサービスとネットダッシュがそれに続いて、ティームはそのゲームを落とした。

 そしてこのあたりから、マレーのプレーが少しずつ安定性を取り戻し、ティームのミスが少しずつ増え始めるのである。

 ドロップショットを多発し続けるマレーはミスを誘うことによって、次のティームのサービスをブレークすることに成功。ティームが1ブレークの3-6で第2セットを落とし、ミスの連発で第3セット第1ゲームをブレークされたときには、非常に嫌な空気が漂った。

 しかし、ティームはすぐに立ち上がり、本来の自分に戻るのである。

「(悪い流れの)すべては、第2セットの3-3でブレークポイントを握ったときに始まった。僕はブレークポイントで非常にアグレッシブにいき、それ自体はよかったと思うがミスをしてしまった。そこから僕は少しナーバスになって疲れを感じ始め、自分のサービスゲームでとんでもなくひどいミスをおかしてしまったんだ。第3セットの0-1まで精神的に落ち込んでいたが、そのあと頭を上げて奮起し、非常にいいゲームをすることができた」

 こう試合後に振り返った通り、次のゲームでふたたびアグレッシブな姿勢を取り戻したティームは、ネットに出てくるマレーをパスで抜き去り、フォアのウィナーを叩き込み、最後はスマッシュを決めてブレークバックに成功する。

 マレーはかなりの質のドロップショットを乱発していたが、ティームがそれを切り返す頻度は上がっていた。

 第2セットにおいてさえ、ストローク戦ではティームが優り、試合運びのうまさでゲームを取っていたマレーだが、ここでまた試合の均衡は崩れる。

 第6ゲームでふたたびショットの回転を多様化し、要所で強烈なストロークを打ち込み始めたティームは、目の覚めるようなバックハンド・ドライブをダウン・ザ・ラインに叩き込み、ブレークポイントを奪取。マレーは次のポイントでダブルフォールトをおかし、ティームがふたたびブレークに成功した。

 ティームはその直後の自分のサービスを、自らのミスで落とすのだが、精神的にはもう落ちなかった。バック、フォアの双方から目の覚めるようなウィナーを連発して会場をうならせ、次のサービスをキープしてスコアは5-4に。次のマレーのサービスゲームで、ティームがついにマレーのドロップショットを切り返して決めたときには会場がどっと沸いた。おそらく観客も、多すぎるドロップショットより、ウィナーに魅せられていたのだ。最後にティームが笑ったとき、そこにあったのは勝つべきほうが勝った、という印象だった。

 試合後、マレーは浮かない表情で「本当に競った試合だった」と言った。

「第1セットは、どうしようもなかった。第2セットでの僕は、よりいいプレーをし始めた。風が強くてリズムをつかむのが難しかったよ。彼は本当にハードにボールを打ち始め、僕をベースラインの後ろに押し返した。こういう状況では、自分が主導権を握る側にならなければいけない。試合が進むにつれ、僕はよりよい仕事をし始めていたが、ただ最後のゲームでミスをおかしてしまった。僕はたぶんミスすべきでなかったショットをミスしたんだ」

 それでもマレーは、ここバルセロナで望んでいた『いい練習』をできたと感じたようだ。

「よかったよ。3日間に、それぞれタイプの違った3人の選手とプレーできた。(フェリシアーノ・)ロペスはサーブがよく、ショットが多彩だった。昨日はよりベースライナータイプの、やはり左利きのラモス(アルベルト・ラモス ビノラス)と対戦し、今日はクレーでは今季初の右利きとの対戦だった」とマレーは言った。

「昨日の3時間の試合のあと、今日2時間以上戦ったのもフィジカル面の鍛錬にいいだろうね」

 一方、ティームは決勝で対戦するナダルに対し、最大限の警戒心を見せる。ナダルとの対戦成績は、ここまで1勝2敗で、昨年のブエノスアイレス(ATP250)ではフルセットの末に破っているが、「彼は昨年初めとは違っている。今、彼は自信に満ち、コート上で違う選手のように見える。彼にフォアで好きに打たせたら終わりだ」とティームは言う。

「もっとも重要なのはポイントの主導権を握るよう努めること。受け身にならず、僕がラリーで先手を取る側になることだ。実行するのは簡単なことではないけど、それが決勝でのプランだよ」

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子)

Photo: BARCELONA, SPAIN - APRIL 29: Dominic Thiem of Austria celebrates after winning the match against Andy Murray of Great Britain during the Day 6 of the Barcelona Open Banc Sabadell at the Real Club de Tenis Barcelona on April 29, 2017 in Barcelona, Spain. (Photo by fotopress/Getty Images)

最終更新:4/30(日) 12:01
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