ここから本文です

写真家ロベール・ドアノー「カメラは腕の一部」 孫娘が明かす真実と素顔とは

4/30(日) 7:20配信

クランクイン!

 フランスの国民的写真家ロベール・ドアノーの真の姿を捉えたドキュメンタリー映画『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー<永遠の3秒>』公開を記念して、メガホンを取ったドアノーの孫娘クレモンティーヌ・ドルディル監督が来日。テロが多発する不安定な時代だからこそ、「祖父の姿を通して、自由に、軽やかに、生きることの“幸せ”を伝えたかった」と作品への思いを真摯に語った。

【関連】『パリが愛した写真家』監督インタビューショット&作品写真<フォトギャラリー>


 本作は、撮影風景やインタビューなど当時の貴重な資料映像や、女優のサビーヌ・アゼマら親交のあった著名人の証言により、写真家ロベール・ドアノーの知られざる素顔と創作の秘密に迫る初のドキュメンタリー映画。家族ならではの視点から、優しくユーモア溢れる祖父の顔、撮影にこだわり抜く写真家の顔、さらには世界中が恋した写真「パリ市庁舎前のキス」の撮影秘話などが描かれる。

 ラジオ局に勤めていた頃、祖父ドアノーのドキュメンタリー番組を作ることになったドルディル監督は、制作過程の中で、スーパー8mmフィルムで撮影されたドアノーの映像が出てきたことから、「これはもう、映画を作るしかない!」と奮い立ったという。さらにこの時期、日本を訪れたドルディル監督は、ドアノーの著書『不完全なレンズで』(月曜社刊)の訳者・堀江敏幸氏と出会い、祖父に対する造詣の深さに感動し、「ドアノーのことを世界中の人々にもっと知ってほしい」と、映画化への決意を固めた。
 
 ドルディル監督は、かねてから「ドアノーは世界に愛を発信し続けた人」と語っているが、皮肉にも、本作を制作するという契約書にサインをした日、真逆のことが身近なところで起きた。パリを震撼させた風刺画を巡る“シャルリー・エブド襲撃事件”が発生したのだ。「しかも、私たちは編集部の隣のレストランにいたのよ!その後もいくつか事件が続いたけれど、これが私たちの背中をさらに押してくれたの。ドアノーの映画で少しでもこの状況を慰められたら」と思いはさらに深まった。


 ところで、ドアノーは、「パリ市庁舎前のキス」で世界中に恋の魔法をかけ、愛<アムール>の国・フランスをイメージ付けたが、なぜ、こんなにも人々に愛される写真を撮ることができるのだろうか?「ドアノーは人間の“幸せ”を見せる写真が基本だった」と振り返るドルディル監督。生涯にわたり、パリの日常を捉え続けたドアノーは、街角に潜む瞬間のドラマを職人技ですくい取り、ときには演出によって“真実”をより深く表現する。

 「有名な『パリ市庁舎前のキス』も、まだ路上でキスをすることなど珍しい時代、役者に頼んでドアノーが演出したもの。彼はどんな写真でも、まず、“ここは絵になるぞ”という風に全体をイメージするんです。背景、情景、セットが決まったら、そこにメッセージを込めて被写体を撮る」。構図を決め、何を伝えるかを考え、そして撮影に臨む。それはまるで、一編のドラマを構築していく映画監督のようだ。

 「カメラを持っていないドアノーを見たことがない。 本人も“カメラは腕の一部”だと言っていたわ」と笑顔を見せるドルディル監督。「祖父としては、優しくてユーモアがあって楽しい人だったけれど、写真家としては、とてもこだわりが強く、頑固だった」と述懐。「不服従と好奇心は写真家の原動力」と本編で語っているが、彼は自身の作品によって何を伝えたかったのだろうか。「厳しい時代を生き抜いた人だけれど、自由で、軽やかだった」と言葉を噛みしめるドルディル監督は、最後に「祖父の姿を通して、生きる“幸せ”を伝えたい」と締めくくった。(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー<永遠の3秒>』は、東京都写真美術館ホール、ユーロスペースほかにて公開中。

最終更新:4/30(日) 7:20
クランクイン!