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ナダルがティームを倒して10度目の優勝 [バルセロナ/男子テニス]

5/1(月) 13:35配信

THE TENNIS DAILY

 スペイン・バルセロナで開催された「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月24~30日/賞金総額232万4905ユーロ/クレーコート)のシングルス決勝で、前年度覇者で第3シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第4シードのドミニク・ティーム(オーストリア)を6-4 6-1で下して2連覇を成し遂げるとともに、同大会10度目の優勝を果たした。ナダルは前週のモンテカルロ(ATP1000)でも、やはり10度目の優勝を祝ったばかりだった。

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 紙吹雪の舞う表彰台で10度目の大会優勝を祝ったあと、『優勝者はボールパーソンとともにプールに飛び込む』という伝統儀式を速やかに行ったナダルは、風呂上がりのようなすっきりした表情で記者会見場にやってきた。

「今日は素晴らしい試合ができた。いい気分だ。今季の初めから大いにハードワークを積み、いいプレーをしてきたから、これが今季のベストマッチのひとつかどうかはわからないけどね」とナダルは言った。

「ティームは最高レベルの厳しい相手だ。彼はきっと将来、すごいことをやってのけるに違いない。僕にとってこれは質の向上のために準備してきたのだということを自分自身に証明して見せるために、非常に重要な試合だった。ここ数日、いやここ数ヵ月、僕が正しいこと、よいことをやり続けているのは明らかであり、きっとできると感じていた。いい感じを覚えていたんだが、でも、感じるのとやるのは別。重要なのは実際にやってのけるということだ。だからこの勝利を本当にうれしく思う」

 ナダルが素晴らしかったか否かは別にして、勝負強かったことは間違いない。“ラファエル・ナダル“を倒すには、目覚ましいショットを打つだけでは十分ではないのだ。

 第1セットのティームは、前日に第1シードのアンディ・マレー(イギリス)を黙らせた強打を叩き込みながら、よく競り合っていた。しかし大概の相手に対してウィナーとなるはずの強打を、ただ返すだけでなく、深く嫌な場所に切り返してくるナダルの高いディフェンス力をねじ伏せるには、通常以上の何かが必要だった。

 ナダルのスマッシュをティームがローボレーで返して最終的にポイントを取ったシーン、フォアハンドの強打のワン・ツーでノータッチエースを奪った場面など、第1セットにはティームも多くの見せ場をつくった。しかし普通以上に厳しいところを狙わなければウィナーにならないがために、ティームはやや無理をし始め、その結果、アンフォーストエラーがじりじりと増え始める。

 第1セット4-4からのナダルのサービスゲームで、ティームは優勢にラリーを運びながら、ショットをラインの数cm外に外した。それからバックハンドのリターンを打って戻ろうとしたときに逆を突かれ、次の渾身のフォアハンドのストレートは、アウトとコールされた。最後はドロップボレーを決められ、ラブゲームでのキープを許したティームは4-5から自分のサービスを迎えるのだが、この第10ゲームが、この試合のキーゲームとなる。

 ティームは30-30から、フォアハンドの逆クロス、回り込んでのフォアハンドのダウン・ザ・ラインによるワンツーパンチを叩き込み、ゲームポイントをつかんだ。勝負をかけたティームは、次のポイントでフォアハンドの強打を連発し、ナダルはそれを拾いまくることに。そしてその一見、ティームが優勢であるかに見えていたラリーの終わりに、やや甘かった一本をナダルが深く切り返し、走らされて体勢を崩したティームは、その返球をミスするのである。それは、締めるべきところを逃さず締めるナダルの勝負強さが輝きを放った瞬間だった。

「ビッグプレーヤーに対しては、第1セットを取ることが常にキーとなる。彼らはセットを先取すると、いっそういいプレーをしてくるからだ。だからもちろん、僕は第1セットを取ろうと食らいつき競り合っていたが、彼は4-5のときにいくつかの信じられないようなショットを打ってきた」とティームは振り返る。

「僕はゲームポイントを手にしたのに、ちょっとしたミスをおかしてしまった。フォアハンドが十分なだけ正確ではなかったんだが、彼はそこを逃さず、すごいバックハンドを打ってきた。そのせいで僕は第1セットを落としてしまったんだ」

 そのあとの成り行きを見ると、このゲームでのミスでティームが払った代償はセットだけでなく、試合だったとも言えるだろう。第2セットで自分の最初のサービスをキープして1-1とするまでは、ティームも次第に増えていくミスの合間で、まだ断続的にビッグショットを放っていた。例えば15-40の劣勢からライン上に叩き込んだフォアハンドのダウン・ザ・ライン。それに続く、ドロップショットとバックハンド・パッシングショットのコンビネーション。

 しかし、1-2からの自らのサービスゲームで、かなりうまく落としたドロップショットを拾われ、強いられたハイボレーをミスするという形で、攻めながらまたもポイントとゲームを落としたあとは、ほぼナダルの独壇場となった。ナダルがどうという以上にティームの集中力が切れ、ミスが格段に早くなったのだ。そこからティームが1-6でセットと試合を落とすまでに、そう長い時間はかからなかった。

「今日の第1セットは非常にハイレベルだった。第1セットでの僕はよく競り合っていたが、ただ、それを最後まで続けることができなかった。彼は“ラファ“だ。彼はこの大会に10度勝った王者であり、それがすべてを物語っている」と試合後、ティームは悪びれずに言った。

「全体的にいって彼はほとんどアンフォーストエラーをおかさず、まったくといっていいほどフリーポイントを与えてくれなかった。こういうナダルに対してプレーするのは、世界のどのプレーヤーにとっても難しい。今日、第1セットはとてもよかったから、自分のプレーにそう不満を言うことはできないよ。僕の全仏に向けてのゴールは、この高いレベルを維持することだ」

 一方、やり直せるならどこを直したいかと聞かれたティームは、「まず第1セットで5-5にするね。そうすれば何が起こるか誰にもわからない」と半ジョークで返してから、こう続けた。「今日、彼がバックハンドを突いてきたとき、押し返せなかった。だから次にやるときは何かを変えるよ。バックハンドでのポジションを変え、より強いトップスピンを使うようにする」。

 ティームが次回に向上させなければならないことの中には、精神的な粘りもあるだろう。セットを落としたあとに明らかに集中力を切らし、最後まで抵抗しきることができなかったティームとは対照的に、ナダルは鋼のメンタルを見せた。かつてのように爆発的に相手を圧倒できなくても、ナダルはレベルを上げるべき瞬間、締めるべきポイントを知っている。その堅固さは、2年前のバルセロナで消えかかっているかに見えていたものだ。

 当時の彼は、自信を喪失し、病んでいた。しかし今、状況はようやく変わりつつある。

「今、僕は自信を感じている、これは非常に重要なことだ。ボレーとバックハンドを向上させようと努め、上達させることができたと思う。僕はここで非常に堅固なプレーをした。フォアハンドのドライブと、いいバックハンドにより、重要なポイントで優位に立つことができた」とナダルは言った。

「過去数年、僕のフォアハンドは劣化していた。僕の今年のゴールは、劣化から元に戻ってきたフォアハンドを上達させることだ。今日の自分のフォアハンドの出来には満足している」

 ティームは、ナダルは全仏の優勝候補かと聞かれると、「イエス」と即答した。「ラファはモンテカルロで優勝し、ここでは1セットも落としていない。そして、マレーやジョコビッチは、まだ本調子じゃないように見える。ラファは今年、フェデラーにしか負けていないが、クレーでの彼はフェデラーより上だ」。

 一方ナダルは、「今、この時点では、僕はロラン・ギャロスのことは考えていない」と言った。

「モンテカルロ、バルセロナという2つの重要な大会に勝ったなら、それは自分が正しいことをやっているということの印だ。しかし、ここから全仏までにまだまだ大会がある。今は、ここ2週間に成し遂げたことについて喜ぶべきときだ。大きな自信を感じているが、マドリッドに向けて準備しなければいけない」

 表彰式でのトロフィー授与の前、スタジアムのスクリーンには、最初に優勝したときのエネルギーあふれる18歳のナダルから、毎年ひとつずつ歳をとっていくナダル、昨年ベテランとなって久々に王座に戻ったナダルの映像を、走馬燈のように映し出した。

 今のナダルは、ラリーを一方的に支配した、かつてのナダルではない。しかしそれでも彼は勝利への道をふたたび見出した。今、彼を18歳のナダル、25歳のナダルと、比べるべきではないのだろう。

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子)

最終更新:5/1(月) 13:35
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