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高齢者のがん治療が大きく変わる? 過度に抗がん剤は使わないという流れに

5/3(水) 8:30配信

THE PAGE

 高齢者のがん治療が大きく変わろうとしています。厚生労働省が高齢がん患者の治療に関するガイドラインを策定することになりました。患者が高齢の場合には、過度に抗がん剤は使わないという流れになりそうです。

 抗がん剤は特定のがんには非常によく効きますが、部位などによっては効果が不明瞭なものもあります。また副作用も多いため、全身の状態が悪い高齢者に対しては慎重な投与が求められます。しかし、現時点では高齢者に対する治療について明確な基準はなく、主治医の裁量に任されている状態でした。

 国立がん研究センターが2007~2008年にかけて実施した調査によると、肺がんの場合には、75歳未満では抗がん剤治療をした方が、生存期間が長いという結果になりましたが、75歳以上の場合には、抗がん剤を使っても使わなくても生存期間に大きな差はありませんでした。この調査はサンプル数が少なく、高齢者のがん治療に関する詳細な情報を得るためにはもっと大規模な調査が必要ですが、一部のがんでは、高齢者に対する抗がん剤治療はあまり意味がないという結果が出ていることになります。

 こうした状況を受けて厚労省は、今後、本格的な調査を実施するとともに、その結果をふまえて高齢者の抗がん剤治療に関するガイドラインをまとめる方針を固めました。

 もし大規模調査の結果、高齢者に対する抗がん剤治療がそれほど有効ではないという結論が得られた場合、高齢者のがんの治療は大きく変わることになります。抗がん剤は、吐き気や貧血など多くの副作用があり、一部の患者は重篤化します。

 苦しい抗がん剤治療に耐えても延命効果があまりないということであれば、無理に抗がん剤は投与せず、生活の質を重視する方がよいという考え方があります。医療の世界ではQOL(クオリティ・オブ・ライフ)と呼ばれていますが、高齢者のがん治療は、QOLを重視するという方向に変わっていく可能性があります。

 がんの治療に対しては様々な考え方があり、どれがよいと一概に決めることはできません。しかしこれまでは「標準治療」という形で画一的な治療しか行われていなかった状況を考えると、治療に対する新しい選択肢の登場は評価すべきことでしょう。

 また抗がん剤治療には多額の費用がかかります。2014年度における日本の医療費(医科診療)は約29兆円でしたが、がんの治療費は約4兆円と全体の14%を占める状況でした。抗がん剤の使用が抑制されれば、がんの医療費が大幅に減る可能性がありますから、医療費の分配に関する議論にも影響を与えることになりそうです。


(The Capital Tribune Japan)

最終更新:5/10(水) 6:04
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