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やはりマーケットは正直? 賃上げETF、ほぼ取引ゼロの状態に

5/8(月) 8:00配信

THE PAGE

 株式市場を通じて賃上げを支援しようという日銀の目論見が早くも頓挫しかかっています。賃上げを実施する企業の株式を組み入れた上場投資信託(ETF)に買い手が付かない状況が続いているのですが、何が原因なのでしょうか。

 日銀は2015年12月の金融政策決定会合において、「設備・人材投資に積極的な企業の株式を組み入れるETF」を購入する方針を明らかにしました。これは年間3兆円のETF購入枠とは別の扱いで、アベノミクスの趣旨に沿った経営を行う企業の株式を購入することで、量的緩和策を補完しようという狙いがあります。

 条件に合致するETFがあれば、日銀は確実に買ってくれるわけですから、これほどおいしい商売はありません。投信各社はこれに飛び付き、次々と賃上げETFを組成して市場に上場させました。しかし、日銀や投信各社が考えるほど現実は甘くありませんでした。賃上げETFは総じて一般投資家から不人気で活発に売買されず、出来高は縮小する一方でした。

 日銀は、1日あたり12億円、年間で3000億円という購入枠を設定していましたが、これとは別に、一般投資家など日銀以外の投資家と同額までしか購入できないというルールも定めていました。一般投資家による売買がほとんどゼロになってしまったことから、日銀も買い入れができなくなってしまい、事実上、これらのETFは市場から消え去った状態になっています。

 投資家から不人気だった理由は簡単で、あまり儲かる見込みがない商品だったからです。賃金が上昇することはマクロ経済的には望ましいことですが、それはあくまで景気がよく企業が儲かっていればの話です。企業がただ賃上げを実施しただけでは、短期的には収益を減少させるだけで終わってしまうでしょう。

 一方、賃上げに耐えられるということになると、高い業績を上げている企業に限定されてきますが、こうした高収益企業は業績がすでにピーク・アウトしている可能性が高くなります。すでに株価が上がり切ったところで買ってしまえば、逆に投資パフォーマンスが低下するリスクもあるわけです。

 大和証券投資信託委託の「ダイワ上場投信-MSCI日本株人材設備投資指数」、野村アセットマネジメントの「NEXT FUNDS野村企業価値分配指数連動型上場投信」、日興アセットマネジメントの「上場インデックスファンド日本経済貢献株」など主要各社の賃上げETFのパフォーマンスはいずれも日経平均を下回っています。

 市場メカニズムというのは、多くの人が自らの判断で行動することで効果を発揮するものです。中央銀行が特定企業の株式購入を推奨しても、そこにしっかりとした裏付けがなければ投資家はついてきません。ましてや中央銀行の金融政策がうまくいっていない状態で投資家にリスクを取ることを求めても、市場はしらけてしまうばかりです。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:5/14(日) 6:12
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