ここから本文です

「年利20%」と聞いてどんな印象を受ける? 詐欺に遭うワケ

ZUU online 5/2(火) 20:32配信

つなぎ融資を騙った熊本出身の62歳の女性がタイで逮捕された。大企業へのつなぎ融資で公称25%の利息が付くという架空の投資話で資金を募り、被害者は50人を超え総額は7億円に達する投資詐欺事件のようだ。

集めたお金でタイに家を購入したりホストクラブで豪遊したりといった話も伝えられている。こういった投資詐欺は、過去に何度も繰り返されている。被害を受けないためにどうしたらいいのだろうか?

■過去最大の投資詐欺は金地金の悪徳商法による2000億円

過去最大の投資詐欺は1985年の豊田商事事件。金地金に投資すると公称10%の利回りが付くとして数万人の投資家から2000億円を超える資金を集めた。実際には、集めた資金で金を購入せずに預かり証を渡すだけという現物まがい商法という悪徳商法だった。

次に大きいのは2001年の大和都市管財事件。不動産を担保とした抵当証券を、公称10%の利回りで1万7000人から1100億円の資金を集めたが、経営破綻して投資詐欺となった。

この2事件は10%というあり得そうな利回りだったために詐欺の被害が拡大してしまった例だろう。

■「年利20%」と聞いてどんな印象を受ける?

ある程度金融リテラシーがあるのなら、年20%なんていう利回りがそう簡単に達成できるもではないことが解るはずだ。2016年1月に日銀が史上初めてマイナス金利を導入し、現在日本国債10年債利回りは0.1%程度だ。

米国はリーマンショック以降の実質ゼロ金利を解除して、金利を上げ始めているが、米10年債利回りは2.2%程度だ。投資信託ではハイイールド債が利回りを求めて人気を盛り返しはじめた。ハイイールド債とは信用格付けが低く破綻リスクの高い債券のこと。

ジャンク債扱いとなるCCC格付けのハイイールド債インデックスでも、やっと10.1%程度の利回りだ(4月末時点)。金融機関は低金利で余剰資金はあるが、運用商品がないことに苦労しているような状況。

こうした基本的なリテラシーがあれば、「年利20%」という投資話はかなり疑わしいと思うはずだ。さらに、元本保証を掲げるようなら限りなく詐欺の可能性が高いと思っていい。そんな投資商品は簡単にはあり得ないのだ。

最近の投資詐欺の事例でも、明らかに疑わしい高利回りを騙った投資詐欺が多い。2011年に4207億円の被害を出した安愚楽牧場事件は和牛のオーナー制度で公称16%の利回だった。

2013年に450億円の被害を出したスピーシーというスポーツの賭け屋(ブックメーカー)のアービトラージファンドはなんと公称年利回り180%。15年に60億円のシンフォニーの高配当FXファンドは36%。2016年に36億円のヴァンネットのワイン投資ファンドは29%。2016年に113億円のクエストキャピタルマネージメントの日経先物の高頻度取引は108%。それぞれ常識を逸脱した利回りを騙っていた。もし仮にそれほどパフォーマンスがいいのなら、決して一般の投資家にまで勧誘を拡げる必要はないことは、金融関係者なら解るだろう。

投資詐欺にあっているのは、残念ながら高齢者の比率が大変高いようだ。金融リテラシーの不足から詐欺に引っかかってしまうという側面があることは間違いないだろう。

■金融業界のプロもだまされてしまう投資詐欺も

12年のAIJ投資顧問による1900億円の年金消失事件は衝撃的だった。企業年金を運用している金融のプロ達がAIJの不正に気がつかなかったからだ。

AIJは中小企業の厚生年金基金の運用を主力としており、124の企業年金から約2000億円の年金資産を運用委託されていた。同社は、日経平均の先物やオプションで常にプラスの運用利回りを確保していると顧客に説明してきていたが、実際には虚偽の報告をしており運用資産2000億円のうち1900億円は投資の失敗で失っていた。証券取引等監視委員会の検査により明らかとなり同社は破綻した。

AIJ事件が日本で起きる3年前、2009年の米国でも史上最大の金融詐欺事件であるマドフ事件が発覚した。マドフは元ナスダックの会長でもあり金融界の重鎮で30年にわたり高パフォーマンスを騙り巨額の運用資金をネズミ講でつないでいたのだ。

マドフによる巨大な詐欺が発覚したきっかけは、2008年のリーマンショックで株が暴落し、複数の投資家から一気に約70億ドルの解約を求められたからだ。マドフは、キャッシュが不足していたことで解約に応じられず、不正が発覚し逮捕された。損失総額は確定できていないが、概算で200億ドル(当時で約2.4兆円)に達していると言われている。

金融界のプロ中のプロであってもこうした詐欺事件の巻き込まれてしまう。金融リテラシーがあるだけでも完全に投資詐欺を防ぐことはできない。両事件を契機に世界的にコンプライアンスやデューデリ(投資対象、投資リスクに対する調査)体制が強化されることになる。

■詐欺事件にあわないために

金融庁もこうした投資詐欺をだまって見逃しているわけではない。その度に規制を強化して同じような事件の再発が起きないようにしている。金融庁のホームページでは、「投資被害にご注意ください!」として以下の勧誘には気をつけるように公示している。

「上場確実ですので、必ず儲かります! 元本も保証します!」
「△△社の株を買ってくれたら、あとで高く買い取ります」
「被害を回復してあげます。その代わり、別の商品を買ってください」
「郵便や宅配便等で現金を送付してください」
「金融庁の者ですが……」

未公開株が簡単に手に入ることはありえないこと、聞いたことのない商品や利回りが高い商品や私募債は仕組みやスキームを理解すること、自分で理解できない場合はリテラシーの高い複数の知人に相談すること、変動商品にはリスクがつきものでありリスクについて説明がない場合は疑うこと、そもそも金融庁に登録されている業者以外から金融商品を購入しないことが大切だろう。

立派すぎるパンフレットや華やかな説明会などにも気をつけたほうがいい。自分の資産を守ることは自分にしかできない。高齢者の資産も守れるように協力したい。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

最終更新:5/2(火) 20:32

ZUU online