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15分早ければ…日本初の9秒台を逃した桐生祥秀の不運

スポーツ報知 5/4(木) 16:01配信

 陸上の織田記念国際(4月29日、エディオンスタジアム広島)は歓声とため息が入り交じっていた。16年リオ五輪400メートルリレー銀の桐生祥秀(21)=東洋大=が10秒04を出したが、不利な向かい風が0・3メートル吹き、日本初の9秒台突入はお預けとなった。桐生は10秒16で走った予選も同じ向かい風0・3メートルだった。結局あの日は条件が悪かったのか…というと、実はそうではない。

【写真】「世界は9秒を出してからがスタートライン」…桐生に聞く

 桐生が決勝を走ったのは午後3時50分。その15分前のことだ。女子の100メートルB決勝で、追い風2・0メートルが吹いた。計算法は諸説あるが、一般的に追い風が1メートル強くなると、タイムが0秒1前後速くなるとされる。2・0メートルは公認となる上限のギリギリで、いわば“最高のアシスト”を受けられるのだ。トラックの決勝種目はパラ競技を含め14レースあったが、うち8レースが追い風で、1レースが無風。向かい風のレースは5レースで、追い風より少なかった。かなりの高確率。紙一重の差で、桐生には風が味方しなかった。東洋大の土江寛裕コーチ(42)が「(9秒台を)出す準備はできていたし、悔しさが先に出ちゃって、(レース内容を)思い出せないくらいもどかしい」と嘆くのも納得できる。

 桐生の決勝の走りは、無風で10秒02前後。追い風2・0メートルなら「10秒の壁」どころか、9秒8台が出ていた計算になる。今季の世界ランク1位(4月30日現在)は、シドニー・シアメ(ザンビア)の9秒88。日本記録(10秒00)を大幅に更新し、暫定とはいえ今季世界一に躍り出る歴史的なレースを目撃できるチャンスがあった。そう思うと歯がゆい。

 100メートルの次戦は、ダイヤモンドリーグ・上海大会(13日)。土江コーチは「レース時間がもう少しずれていたら、違う結果になっていたかもしれない。ただ、それは神様が見ていること。世界が見ている中で、記録を出すのが良いのかもしれない」と切り替えた。以前は1メートル以上の追い風がないと9秒台は難しかったが、今は向かい風さえ吹かなければ「日本初」が出るレベルにまで、桐生の走りは磨かれている。人類初の9秒台は1968年6月。米国のジム・ハインズが手動計時(現在は非公認)で9秒9をマークした。それから49年。日本陸上界の“その時”が近づいている。(記者コラム・細野 友司)

最終更新:5/4(木) 18:07

スポーツ報知