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習い事をやめたい…続けさせるべきかどうか迷います

5/2(火) 14:00配信

ベネッセ 教育情報サイト

教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】
自分から行きたいと言い出したので習字教室に通わせることにしました。ところが、数回行ったら「もうやめたい」と言い始めました。せっかく始めたのだから2年間くらいは、それが無理ならせめて1年間はやらせたいと思うのですが、先日はおなかが痛いと言い出してとうとう行きませんでした。続けさせるべきかどうか迷います。

相談者・花いっぱい さん (小学4年生 女子)

【親野先生のアドバイス】

花いっぱいさん、拝読しました。

これはとてもよくあるケースですね。
こういう時、親としては次のように考えることが多いと思います。

1.一度やり始めたものは続けさせないとやめ癖がつく
2.ここでやめさせてしまうと、嫌なことがあるとすぐやめるような根気のない人間になってしまう
3.ずっとは無理でも、せめて1年間くらいは続けさせないと
4.自分からやりたいと言い出したのだから、自分の行動に責任を持たせなければ

保護者のかたがこのような考えにとらわれ過ぎていると、子どもは不必要に苦しむことになります。
たとえば、土曜日に嫌な習い事がある場合、気の弱い子なら金曜日あたりから憂うつな気分になります。

「あーあ、明日の土曜日は○○があるな。嫌だなあ。なんで私やりたいって言っちゃったんだろう。だって面白そうに見えたんだもん。でも、やってみると、つまんないなあ。何にも面白くないし、うまくいかないし……」
「嫌だなあ。やめたいなあ。でも、ママはやめちゃダメって言うし……。先生もなんかあんまり好きになれないし……。本当は、友達と遊びたいなあ。あーあ、熱でも出ないかなあ」

こういううっくつとした時間が長いと子どもの精神衛生面でのリスクが高まります。子どものうつ病やうつ状態が増えているというデータもあります。
現代の子どもたちは自分が本当にやりたいことがやれず、保護者のかたにやらされることばかりが増えていて、そのストレスが原因だと言われています。
子どもの時にこういううつうつとした精神状態でいる時間が長いと、将来的にうつ病を発症するリスクが高まるという説もあります。

保護者のかたは「せめて1年」などと考えますが、子どもの1年は大人の1年とわけが違います。子どもの1年は大人のそれよりはるかに濃密で長いのです。
私なども年を追うごとに1年が短くなってきていると感じています。特に50代になってからは1年1年が非常に短く、5、6年などあっという間に過ぎてしまいます。ところが、子どものころの小学校の6年間は非常に長かったです。皆さんも、そう感じているのではないでしょうか?

そこで、私の個人的な感覚で、大人と子どもの時間の換算してみました。

・20代の人の2年間と小学生の1年間は同じ。
・30代の人の3年間と小学生の1年間は同じ。
・40代の人の4年間と小学生の1年間は同じ。
・50代の人の5年間と小学生の1年間は同じ。

小学生の1年間は40代のママさんの4年間と同じということです。それほど長い年月にわたって、週に1回、うっくつとした精神状態になるのですからたまりません。

「子どもが自分からやりたいと言い出した」ということを盾にとってやめさせない保護者のかたもいますが、子どもはそんなに深く考えているわけではありません。友達が楽しそうにやっている、道具を持って歩く姿がかっこいい、などといった軽い気持ちで言い出すこともよくあります。
それで実際にやってみると自分には合っていないとわかったり、それほど楽しくないと感じたりすることはよくあることです。
大人でも、やってみなければわからないことはたくさんあります。

やめ癖というのも、迷信です。
たとえ10個やめ続けたとしても、11個目にピッタリ当てはまるものに出会えば、ちゃんと続けることができます。そういうものに出会えば、やめろと言ってもやめません。

でも、これも例外もあります。
何年かやってきて、成果も出ていて、素質的にも性格的にも向いている。でも、今ちょっとした壁にぶつかってもがいている。
そういうものだったら、乗り越えさせたほうがいい場合もあります。ですから、ケース・バイ・ケースです。
ただ、やめ癖がつくといけないから始めたものはせめて1年は……、などと考える必要はないということです。
そんなものはさっさとやめて、また別のものにチャレンジさせたほうがいいのです。子どもが何に興味を持つかわかりませんし、どこに才能が隠れているかもわかりません。
意外なものに引かれて、やり出したらピッタリだった、などということは大いにあり得ます。いろいろチャレンジすれば、そういうものに出会う可能性も高まります。

昔は習い事と言っても一つや二つしかありませんでした。そういう時代なら、一つのものにしがみついて伸ばすという戦略も有効だったと思います。
でも、今はいくらでも選択肢があります。嫌なものを無理やり続けさせるより、いろいろやってみたほうが子どものためになります。
たとえ数回やってすぐやめたとしても、それをちょっとでも経験したことはムダではありません。
やったことのない子に比べれば、一つ引き出しが増えたということです。
後年、それが何かの役に立つことは大いにあり得ます。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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