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顧客の事業変革が使命の「ワトソン」、生みの親“IBM”の事業まで変えてしまった?!

5/2(火) 15:41配信

日刊工業新聞電子版

ワトソン、実践の1年に

 IBMの「ワトソン」をご存知の方は多いでしょう。2011年に米国のクイズ番組で人間のチャンピオンに勝利したことで一気に知名度が広がり、それ以来、IBMの看板商品とも言える存在となっています。

 「今年は日本IBMにとって設立から80周年を迎える特別な年。昨年はAI(人工知能)とは何か、コグニティブ(認知機能)とは何かに焦点を当てていたが、2017年はAI、コグニティブをいかにビジネスや社会で実践していくかにテーマを据える」。

 4月27日、28日の2日間にわたって日本IBMが都内で開催した「ワトソン・サミット2017」では、4月1日に日本法人の社長に就任したばかりのエリー・キーナン氏が登場。ワトソンとIBMクラウドによって、顧客企業の事業変革や社会変革の推進に全力を挙げていくことをあらためて宣言しました。

 キーナン社長によれば、16年に医療やビジネスを通してワトソンと関わった人は全世界で4億人以上。それが17年には2.5倍の10億人以上に及ぶと見込まれ、世界に500社以上あり「エコシステムパートナー」と言われるワトソン関連の協力企業の数も「増加が加速している」とのこと。日本では40余りの業種で合計数百社がワトソンを業務に採り入れているといいます。

 その効果については、世界中で合計3億ページにも上る金融分野などでの規制文書をワトソンが読み込み、顧客の企業にコンプライアンス(法令順守)を徹底させることで合計1500億ドル以上に相当する罰金を未然に防ぐ効果を上げたほか、ヘルスケア分野では東京大学医科学研究所で昨年あったワトソンによる病名診断が有名になりました。分子生物学・医学関連で2000万件もの大量の論文をワトソンが学習し、60代の患者の遺伝子変異を突き止めることで特殊な白血病の診断につながり、人命が救われたという事例です。

 さらに、「見る、聞く、感じる、読む」というワトソンのコグニティブ能力は、色の識別機能の向上で、ほくろと悪性皮膚がんである黒色腫の区別を95%の精度で判別でき、皮膚科による診断の平均を上回っているといいます。ヘルスケア関係について、米IBMのアーヴィン・クリシュナ・シニアバイスプレジデント兼IBMリサーチディレクターは、「16年には1万人のがんの診断にワトソン・ヘルスケアが使われた」と明かしました。

 人間の会話の理解度についても、人間が会話で単語を聞きもらす割合が5%と言われるのに対し、ワトソンのエラー率は5.5%。「ほぼ人と同等レベル」とキーナン社長は強調し、自然言語処理によるコールセンター業務で、エンドユーザーの質問に回答するプロセスを10倍効率化できた、といった成果が国内企業から報告されました。言語は日本語を含め12言語に対応。インターネットトラフィックの90%をカバーできるということです。

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