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社説[入学支援金]子の門出 社会で祝おう

5/2(火) 7:50配信

沖縄タイムス

 真新しいランドセルを背負った小学生、おろしたての制服に身を包んだ中学生…。この春、入学した新1年生たちは、そろそろ学校に慣れたころだろうか。

 子どもの進学は親にとってうれしい成長の節目だが、入学準備に思った以上に費用がかかり苦労したという話をよく聞く。

 もしかしたら必要な品をそろえるのにお金を使い果たし、今ごろきゅうきゅうとした生活を送っている家庭があるかもしれない。

 「子どもの貧困」が深刻化する中、入学にかかる負担を少しでも減らし、経済的に苦しい家庭を支えようとの動きが広がっている。

 子どもの貧困対策に取り組む公益財団法人「あすのば」(東京)は、今春、入学や新生活を迎える低所得世帯の子ども2200人以上に3万~5万円の給付金を届けた。給付決定通知には「あなたを思っている人がここにいるよ」とメッセージを添える。

 NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京)は、ひとり親家庭を対象に3万円の入学支援金を360人余りに送金した。

 それぞれ支給枠を大きく上回る応募があったといい、ニーズの高さを示している。

 沖縄タイムス社も「沖縄こども未来プロジェクト」に寄せられた支援金を活用して、入学応援給付金を創設。来春、小中学校に入学する子ども各300人を対象に3万~4万円を給付する。

 人生の門出を笑顔で迎えてもらうため、社会が届ける「おめでとう」である。

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 思い出しても胸が痛むのは、2014年に千葉県銚子市で起きた中2娘殺害事件だ。

 家賃を滞納し県営住宅の明け渡しを求められた母親が、強制執行の日の朝、娘を絞殺した。母親は娘が中学に入学した際、必要な費用を工面できず、ヤミ金業者から借金をし、返済に追われていたという。

 経済状況が厳しい家庭の小中学生に学用品代などを補助する「就学援助制度」の中に、1年生を対象にした入学準備金がある。支給額は自治体によって異なり、那覇市の場合、小学生が2万3千円、中学生が3万7千円。

 一方、ランドセルやカバン、制服、体操着、体育館シューズ、ジャージ、副教材など新入学準備には10万円ほどかかるといわれる。

 入学準備金では到底足りない。

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 憲法26条は「義務教育は、これを無償とする」と記す。

 子どもの貧困対策法は、貧困対策における国や自治体の責務を明記する。

 それなのに日本の国内総生産に占める教育機関への公的支出割合は、先進国の中で際立って低い。教育の家計負担が際立って重いのである。

 現に困っている親子のことを思うと、民間の直接支援が果たす役割は大きい。支援の手は多ければ多いほどいい。

 だがしかし入学準備金と実際にかかる費用の差は制度設計の問題である。本来、行政が取り組むべき課題であることを忘れないでもらいたい。

最終更新:5/2(火) 16:10
沖縄タイムス