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観光から食品まで、ハラルで経済振興目指す仏教の国 タイ

5/3(水) 9:47配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【5月3日 AFP】時間を区切って男女が同時に利用できなくしたプールがあるホテルから豚骨由来のゼラチンではなく海藻からつくったゼリーまで──仏教の国タイはイスラム教の戒律にのっとったハラルでの経済振興を目指し、ムスリム(イスラム教徒)の観光客を受け入れ、同国製品をイスラム圏にアピールしている。

 首都バンコク(Bangkok)郊外のイスラム教徒が多く住む地区にある五つ星ホテル、アルメロス(Al Meroz)ホテルの広々としたダイニングホール内では、薄いあごひげを生やした年配の男性がイスラム教の聖典コーランの節を読み上げる中、落ち着かない様子の花婿が花嫁の到着をいまかいまかと待っている。

 鮮やかな白のドレスとそれに合わせたヘッドスカーフを身に着けた花嫁が到着すると、花婿ははじけるような笑顔を見せた。

 バンコク初の完全な「ハラル」ホテルとなった同ホテルでは、数か月の間にこの式を含めて数十件の結婚式が執り行われた。

 タイには以前からパーティーや歓楽街、安酒、トロピカルビーチに引き付けられて、南国の光と熱を求める旅行者や快楽主義者が訪れていた。

 しかし観光客の多様化を目指す同国は、地味ながらよく練られた戦略の一環としてイスラム圏の国々からも膨大な数の観光客を呼び込んでいる。

 このホテルは、あらゆる面でイスラム教徒に配慮することで差別化を図っている。

 酒類を販売せず、最上階のプールとジムの使用時間を男女で分けることから手を付けた。

 シーツと枕カバーを特定のやり方で洗濯することからアルコールや動物性脂肪が使われた洗面用品を排除することまで、イスラム教の信仰を実践する人たちのための厳しいチェックリストに従って、ホテル内のすべてのものをイスラム教の教えで許されている(アラビア語でハラル)ものにした。

■時代を先取り

 10年にわたる政治的混乱にもかかわらず、タイを訪れる観光客は2006年の1380万人から過去最高となった昨年の3250万人へと爆発的に増加している。

 欧米人観光客の数はほぼ変わっていないが、もっとも伸びが大きいのは中国人観光客で10年前の94万9000人から昨年は870万人に増加した。

 政府統計をAFPが分析した結果、中東やアジアの主要なイスラム教徒が多数派を占める国々からの観光客は2006年の263万人から昨年は603万人に増加したことが分かった。

 シンガポールを拠点とするイスラム教徒やハラルを専門に取り扱う観光調査会社クレセント・レーティング(Crescent Rating)の創業者ファザル・バハルデン(Fazal Baharden)氏の推定によると、イスラム教徒の観光客の数は2000年の約2500万人から2015年の1億1700万人に急増しているという。

■ハラル食品改革

 鶏肉、シーフード、米、フルーツの缶詰など、タイは以前から世界有数の食品輸出大国でもある。タイでは今、多くの食品会社が顧客層を広げようと、ハラルに対応した商品に切り替えている。

 タイ政府は2020年までに、世界でも五指に入るハラル輸出国となることを目指している。

 国民の圧倒的多数を仏教徒が占めるタイがハラルを受け入れていることに驚く人もいるかもしれない。

 しかし、チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)ハラル・サイエンス・センター(Halal Science Center)のウィナイ・ダハラン(Winai Dahlan)氏は、タイにはハラルへの移行を受け入れやすい土壌があると語る。

 タイの人口の5%がイスラム教徒で、反政府組織の活動に悩まされる南部国境地帯以外では、国民の大多数を占める仏教徒とよく統合されている。

 タイ国内のイスラム教徒たちが、イスラム教で禁じられているものが使われていないかを調べるハラル試験センターの設置を求めたことがきっかけとなり、同国でハラルがブームとなった。

 ヘッドスカーフを身に着けた女性検査技師が豚のDNAが入っていないかどうか食品を調べる中、ウィナイ氏はAFPに対し「15年前はハラル認証を受けた食品工場は500か所しかなかったが、今では6000か所になっている」と語り、同期間にタイ国内で製造されるハラル認証済み商品の数は1万から16万に増えたと補足した。

 ハラルへの取り組みはタイに利益をもたらしている、政府の推計によると、同国のハラル食品業界の生産額はすでに年間60億ドル(約6700億円)規模に成長しているという。1月、3月撮影。(c)AFPBB News

最終更新:5/3(水) 15:37
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