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技術の限界と主力選手の高齢化…バルセロナの時代は終わってしまったのか

GOAL 5/4(木) 14:27配信

■グアルディオラ監督がバルセロナにもたらしたもの

2012年4月27日、この日ジョゼップ・グアルディオラ監督(当時)がバルセロナからの退任を発表した。この意向を受けて、多くの人々が「これでバルセロナは一つの時代が完全に終わった」と感じたはずだ。

グアルディオラは後にバイエルンの監督となるが、彼は現役時代にバルセロナで中盤のアンカー役であるピボーテとして成長し、一流選手として認められる様になった。そしてそれは、監督としても同様であった。スペインリーグの優勝を2度、コパ・デル・レイでの優勝を2度、そしてスーペルコパ・デ・エスパーニャでの優勝を3度経験している。さらに、チャンピオンズリーグでの優勝を2度、UEFAスーパーカップでの優勝を2度、そして、FIFAクラブワールドカップでの優勝を2度……。つまり合計14もの優勝トロフィーを獲得した後に、クラブを去った。この功績がいかに偉大なものであるかは、数字を羅列しただけでお分かりいただけるだろう。

だが、当時のバルセロナが収めてきた数々の成功は、すべてを語っているわけではない。もし、この優勝の数が、全時代においてブラウグラナ(バルセロナの愛称)を最も強いクラブの一つであると証明しているならば、現実にこのクラブの名を歴史に刻んで来たのは、どうやって数々のトロフィーを獲得してきたのかというその方法である。実際、バルサが世界を驚かせてきたのは、主力選手のクオリティの高さだ。スタメンの多くはカンテラこと、下部組織で育った選手たちである。だが、彼らの凄さはプレーの質だけでなく、あらゆる面で完成度が高かった。

今でこそ「ティキ・タカ」は、サッカーで一般的な言葉として使われるようになった。ボール保持のプレーで、正しいシュートのチャンスを探りながらショートパスを素早いリズムで回すスタイルのことを指す。パスは垂直方向ではなく、ほぼ水平方向で行われる。ゴール方面に手数をかけて目指すスタイルとは真逆の志向であり、これはまさに革新的であった。グアルディオラ時代のバルセロナの試合運びは、このタイプの攻撃に慣れていないチームに対してとても有効で、正真正銘の武器であったと言える。そしてその後、新しい世代の監督もこのスタイルに大いに影響され、今日でもこのタイプのサッカーを再現しようとしているチームは枚挙に暇がない。

グアルディオラはリーガ2位、チャンピオンズリーグの準決勝まで進んだシーズンが終わるとともにチームを去った。コパ・デル・レイ、スーペルコパ・デ・エスパーニャ、UEFAスーパーカップ、FIFAクラブワールドカップでの戴冠はトロフィーのコレクションを増やしはしたものの、チーム内の何かが壊れてしまったという感覚を消すまでには至らなかった。バルサは世界を制覇することを辞めてしまい、カンテラ育ちのビクトル・バルデス、カルレス・プジョル、シャビ、そしてリヨンからやってきたエリック・アビダルのような選手たちは、彼らの伝説的なキャリアの終着点にほぼ到達していた。

■一時代を築いたグアルディオラ退任後は……

退任した指揮官グアルディオラの後継者となったのは、当時助監督を任されていたフランセスク・“ティト”・ビラノバだった。クラブは、すでにブラウグラナの状況をすべて把握し、他の誰よりも前任者の通った道筋を辿る事ができる人物として彼を選んだ。

その選択は、連続性を重要視した結果であった。ラ・リーガでの結果は素晴らしく、優勝を収めている。チャンピオンズリーグでは、バイエルンに圧倒され、準決勝で敗退した事実を忘れるべきではないが…。(第1戦は0-4、第2戦はカンプ・ノウで0-3)。

しかし、2013年7月にビラノバは健康上の理由で監督の座から離れてしまう。グアルディオラ前監督の革新的なプロジェクトを、真の後継者であった彼がさらに発展させられる可能性があったにもかかわらず、その可能性は潰えてしまった。ビラノバはその後闘病生活を送った後、2014年4月に45歳で他界している。

そしてビラノバが去った後にやってきたのは、ヘラルド・マルティーノ。しかしアルゼンチン人指揮官は、14-15シーズンをバルサにとって期待外れの年にしてしまう。

マルティーノは、リーグ戦ではチームを2位に導いたが、チャンピオンズリーグでは準々決勝で敗退。グアルディオラ氏のティキ・タカはただの思い出となってしまい、“タタ”(マルティーノの愛称)はバルセロナが理想とするスタイルをピッチ上で見せることができず、たった1シーズンでチームから去ってしまった。

■L・エンリケがバルセロナにもたらした変化

バルセロナをかつての様に栄華を誇るチームに戻す試みは、かつて選手時代にバルセロナでプレーしたことのあるルイス・エンリケに任された。

14-15シーズンの開幕直後こそ困難に見舞われたが、カンプ・ノウで伝説的なトリプレーテ(3冠)を達成し、最初のシーズンを無事終えることが出来た。スペインリーグ、コパ・デル・レイ、そして、チャンピオンズリーグと3つの主要タイトルを総なめにすることに成功したのだ。

この栄光の原動力となったのは、かつての執拗なボール保持で展開するカンテラ出身で占められたバルサではなく、サッカー史でも最強の三叉の矛を持った新しいスタイルのバルセロナだった。この3トップはMSN(リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマール)と言ったほうが馴染みがあるだろう。

このL・エンリケ体制のバルセロナは、時には中盤を省いたロングボールさえも戦術として機能させてしまう。それは今挙げた前線の3人にシンプルにボールを渡すためだ。この3人はスペイン、そしてヨーロッパで今まで誰も想像もしたことがないような平均得点数を記録している。しかしながら、バルセロナが支配する新しい時代が来なかった。まるでバルセロナのパスサッカーの歴史がエンリケのアイディアに欠けるスタイルを認めない、とでも言うように。15-16シーズンもリーグとコパ・デル・レイの2冠を達成したが、ヨーロッパの舞台では準々決勝で敗れてしまった。そして、今季はユヴェントス相手にラウンド8で敗れ、L・エンリケは3シーズン率いた初年度こそ欧州制覇を果たしたが、2年目と3年目はベスト8止まりとなった。

■対ユヴェントス戦で露呈されたバルサの欠陥

今シーズンのCLラウンド8、ユヴェントス・スタジアムでの第1戦は0-3で壊滅的な敗退を喫し、さらにカンプ・ノウでの第2戦はスコアレスで終わり、ジャンルイジ・ブッフォンを打ち負かすことが出来なかった。

今日のバルセロナは疲弊している様に見える。もちろん、致命的ではないものの、おそらく実際に彼らの時代は終焉に向かっていることは確かだ。マッシミリアーノ・アッレグリ監督率いるユヴェントスの素晴らしい手柄を差し置いても、ブラウグラナの選手たちは今シーズン、明らかに限界を見せてきた。

恐ろしい程に強いスターティングメンバーの11人ではあるが、ベンチの選手層は厚くない。前線のMSNは攻撃面では手を付けられないが、彼らの後ろは完全に手薄になっている。この点で、ジェラール・ピケがユヴェントスとのマッチで、重要な時間帯に中盤に配置されたことが多くを物語っている。

守備に関しても良い状況とは程遠い。リーグ戦とCLを含めたここ16試合で23失点も喫している、つまり1試合につき平均1.4点以上を相手に許しているという事だ。そして特に、守備陣の脆さをすべての人の目下に晒している。L・エンリケはディフェンスを3人または4人で試して来たが、その結果は変わらなかった。中盤のフィルターはうまく機能せず、どの要素もスピードが足りない。これによって、カウンターアタックに長けた相手に対して、テア・シュテーゲンが守るゴールは攻略が容易なものへとなり下がってしまった。

■バルセロナが今抱える問題とは

アンドレス・イニエスタ、ジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバ、そして、ハビエル・マスチェラーノのコンディションは、随分前から最高という状態からほど遠い。そして彼らの交代要員であるアンドレ・ゴメス、リュカ・ディーニュ、サミュエル・ユムティティ、そして、ジェレミー・マテューは明らかにプレー的にもカリスマという点でも、彼らのレベルには及ばない。

つまり、ユヴェントスとの2度の戦いで(ラウンド16でのパリ・サンジェルマン戦も然り。第2戦でミラクル[0-4、6-1]が起きてベスト16での敗退をギリギリ免れた)、バルセロナのすべての欠点が曝け出された状態にある。かつての様に試合を支配するゲーム運びが出来ず、ヨーロッパのビッグクラブと互角にやり合うには、選手層に欠陥があることを露呈してしまった。

ラ・リーガ後半戦のクラシコでは敵地でレアル・マドリーを下したことで、今シーズンはまだリーガとコパ・デル・レイで2冠を達成できる可能性がある。だが、L・エンリケは今シーズン限りでチームから去ってしまうことだけが決まっていて、来シーズンのチーム体制はほとんど白紙の状況だ。引き続きバルセロナのスタイルを成熟させようにも、カンテラ育ちのメッシやイニエスタ、ピケはもはやベテランとも言える年齢になり、シーズンを通してフルに活躍を期待するのは酷な状態だ。

バルセロナの新監督候補には複数の著名監督が名を連ねているが、まだどの監督がやってくるのかは不明だ。ただ、年老いた主要選手と新たな若手をベースに、これまでとは違う何かを再構築することを試す時期に来ていることだけは確実となっている。

誰が指揮官を務めるにせよ、バルセロナは独自のスタイルを捨てて堅守速攻を突き詰めるチームではないだけに、パスサッカーをベースにした柔軟性のあるスタイルを志向することだけは間違いない。果たして、バルセロナの哲学を維持させながらリーグタイトルやビッグイヤーを狙い続けることができるのか。次期監督の選択に失敗した場合、バルセロナは21世紀初頭(2000年~2004年まで無冠)のように、タイトルから疎遠になる可能性も十分に考えられるのだ。

文=Leo Gualano/レオ・グアラノ

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最終更新:5/4(木) 14:28

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