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社説[首相 9条改正表明]危機に便乗 野党かく乱

5/4(木) 7:30配信

沖縄タイムス

 安倍晋三首相は3日、憲法改正を求める集会にビデオメッセージを寄せ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明した。

 戦争放棄などを定めた9条について「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」と述べ、9条改正の具体的内容にまで踏み込んだ。

 安倍首相は、読売新聞の3日付朝刊1面に掲載された単独インタビューでも、同じことを語っている。

 北朝鮮危機やテロの不安など、内外の政治状況を計算し尽くした上で、憲法施行70年という節目の日に合わせ、今後の憲法論議の方向性について自らアジェンダ(議題)を設定し、国民に示した。極めて巧妙なやり方である。

 ビデオメッセージで首相は、教育無償化にも前向きな姿勢を示した。これは日本維新の会が強い意欲を示している改正項目だ。公明党の引き込み、維新の会の協力、民進党の分裂、野党の足並みの乱れ-を一挙に誘う。そんな意図がメッセージに込められているのは明らかである。

 だが、安倍首相の構想はあまりにも問題が多い。

 政府の9条解釈では、自衛隊は憲法9条にうたわれた「戦力」には該当せず、「自衛のための必要最小限度の実力組織」と位置づけている。その解釈はどうなるのか。

 戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を定めた9条1項、2項を変えずに、自衛隊の根拠規定だけを新たに追加することは、まっとうに考える限りほとんど不可能だ。

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 このような「ヌエ的な9条改正」が実現すれば、いずれ集団的自衛権もなし崩しで拡大されていくに違いない。

 日本の安全保障は「9条プラス日米安保」で成り立っている。

 沖縄県民は復帰後も、この日本特有の安保体制の負担を強いられてきた。これほど長期にわたって安全保障の負担と犠牲を一地域だけに過剰に強いる例は、ほかにない。

 9条改正によって、日米安保条約はどうなるのか。沖縄に常駐する地上兵力の海兵隊は撤去されるのか。

 そのような根本的な議論もないまま、「9条は改正するが、安保・地位協定・米軍基地はそのまま」ということになりかねないのである。

 そうなれば、沖縄の負担が半永久的に固定化し、米軍・自衛隊が一体となった「不沈空母」と化すのは避けられないだろう。

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 安倍政権は、国民の根強い反対にもかかわらず、特定秘密保護法や安保関連法を数の力で制定。今また、共謀罪の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の採決に向け、強引な国会運営を続けている。

 北朝鮮危機を巧妙に利用している面も見逃せない。

 行政権が肥大化した安倍「1強」体制の下で、9条改正や緊急事態条項の導入を図るのは、国が首相個人の政治信条に引きずられる可能性が強く、極めて危険である。

 平和国家のブランドと、行政権力の暴走や行き過ぎをチェックする監視機能を失ってはならない。

最終更新:5/5(金) 17:50
沖縄タイムス