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【ライターコラムfrom松本】攻守を支える存在へ…プロ12年目の後藤圭太、讃岐戦で披露した新たな成長

5/4(木) 13:37配信

SOCCER KING

 人間は意欲を失わない限り、何歳だろうと成長できる。

 松本山雅FCの取材を始めて以降、そう感じる瞬間は数え切れないほどあった。53歳となった反町康治監督の言葉はもちろん、選手たちの言動からは常に成長への「飢え」が感じられる。そうした姿勢に刺激を受けて自らも襟を正し、現状と課題を整理しながら過ごしてきたつもりでいる。

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 今季も試合を追うごとに選手たちは成長を示しているが、中でもDF後藤圭太の存在が目を引く。3バック右のストッパーとして第2節以降の全試合で先発に名を連ねている30歳。空中戦を武器にプロ12年目を迎えたが、攻撃面が長らくの課題だった。「そこを改善できればもっといい選手になれると思う」。今季当初から、折に触れてこうした発言をしていた。

 そして実際にシーズンインすると、課題を克服しようとする意欲がプレーから色濃くうかがえた。ハーフウェーラインを越えてドリブルで持ち出したり、カウンターの局面で先陣を切ってスプリントしたり。右サイドからクロスを上げるシーンも増えてきた。

 一言に「成長」といっても、簡単な話ではない。例えば、192センチのFWケヴィン・オリス(京都サンガF.C.)との空中戦を何度も強いられた第9節。エアバトルは自身の存在価値だからこそ、絶対に負けたくない。だが強靭な相手に立ち向かおうと集中すればするほど、逆に視野狭窄に陥ってその後のプレーが粗くなってしまったという。

「ケヴィン選手は本当に強かったので、思い切りいかないとフィフティーにもならない。でも、そうすると今度は視野が狭くなってしまって、繋げるシーンも蹴ってしまったり、落ち着いてボールコントロールできるのにただ上に蹴り上げてしまったり。冷静に行くところと熱く行くところを整理しないと」

 そう話して臨んだ第10節のカマタマーレ讃岐戦。今度は攻撃の中でも最大の懸案事項だったビルドアップで改善の兆しを見せた。讃岐は出足鋭いカウンターを持つため、京都戦とは対照的に平面での対応が求められる相手。後藤はディフェンスで穴を空けず切り抜け、攻撃面でもチャレンジする姿勢を鮮明に打ち出した。象徴的なのは48分。相手のロングボールをカットすると同時にルックアップし、ピッチ中央の密集地帯を縫うようにして前線のMF工藤浩平にグラウンダーのパスをつけた。これは相手が退場者を出す前、まだ数的同数のシーン。「繋ぐことを恐れずに勇気を持ってできた。そこは次にも生かしていきたい」とうなずいた。

 ただ、チーム屈指の「天然キャラ」だと自覚しているからなのか、その表情に緩みはない。反町監督やチームメイトからは「寝ている」、「話を聞いてない」などと“強めのイジり”を受けることが多々あり、ふとした瞬間に油断が生じることも否めない。だからこそ、攻守に納得のパフォーマンスを見せた讃岐戦後も「まだまだ調子には乗れない」と口元を引き締める。

 思い返せば昨季もリーグ戦20試合に出場したが、機会を得たきっかけはDF當間建文の故障離脱だった。その當間は今季当初から別メニューだったものの、ここに来て戦列復帰。ここで定位置を譲らずにいられるか、後藤にとっては正念場だ。「ポジション争いをしつつ自分なりにチャレンジして成長すればチームとしての力になる。攻撃も(讃岐戦で)点を取れたので、勇気を持ってプレーできるようになった」。発する言葉こそ控えめだが、その裏には成長への渇望を隠し持つ。

文=大枝令

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最終更新:5/4(木) 13:50
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