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1枚の白黒画像から描画技術まで読み取る、凸版・DNPのデジタル復元の凄さ

5/5(金) 15:00配信

日刊工業新聞電子版

北斎の大作、絵の具の重ね方も再現

 凸版印刷と大日本印刷(DNP)の印刷大手2社は印刷技術を応用し、文化財を保護する活動を下支えしている。保存や再現が難しい作品に対し、デジタル印刷や仮想現実感(VR)など最新技術を駆使することで文化財の継承をサポートする。すでに両社の取り組みは15年以上に及んでおり、その実績や知見は他社の追随を許さない。多くの文化財を保有する美術館や博物館にとって不可欠な存在になっている。

 2016年にオープンした「すみだ北斎美術館」(東京都墨田区)の一角に、幅約2980ミリ×高さ約1460ミリメートルの特大の複製画がある。世界的な画家、葛飾北斎が描いた肉筆の大作「須佐之男命厄神退治之図(すさのおのみことやくじんたいじのず)」だ。

 北斎にとって晩年の傑作とされているが、1923年の関東大震災で焼失。すみだ北斎美術館のオープンを機に、同美術館や凸版印刷などが現代によみがえらせた。複製の際、参考にしたのは美術雑誌に掲載された1枚の白黒画像。現代に残る唯一の画像資料だったという。館長の菊田寛氏は「可能な限り、当時の色合いに近づけた。現代の私たちでも当時の人々が作品から受けた印象や感動を体験できる」と力を込める。

 凸版印刷は印刷の管理技術で培ったデータベースなどを基に、同時期の画像や現存している作品を調査した。同社の印刷技術や専門家の知見を結集し、画像から感光材料や撮影技法を分析することで当時の絵の具の重ね方なども再現した。

“不落”の名城、熊本城を再現

 また凸版印刷は、お城など規模的に再現が難しい文化財については、VRの作品としてスクリーンで表現する。文化財のデジタル保存データの公開手法として、VR技術を用いた「トッパンVR」を開発。

 4月21日から東京国立博物館(東京都台東区)で公開されているシアターでは、江戸時代全盛期の熊本城をVR映像で再現している。

 熊本城は築城の名手だった加藤清正が実戦本位で築いており“不落”の名城と呼ばれている。その堅固な守りの秘密は城の構造にある。天守閣にたどり着くまでに直線の道を作らず、門と曲がり角を設けることで敵軍の速力を落とす仕掛けだ。構造は複雑だが、当時の設計図や4万枚以上の撮影画像を基に同じ寸法で作業を進め、複雑な仕掛けも画面上で表現することに成功した。シアターでは城の内部を移動するように紹介している。

 このほかペルーの世界遺産「マチュ・ピチュ」や、鑑真が建立した「唐招提寺」など国内外の文化財をテーマとした50本以上のVR作品を制作している。

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