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チェッカーズ解散から来年で25年。テナー吹き、藤井尚之の過去と今

Lmaga.jp 5/5(金) 10:00配信

1983年のデビュー以降、音楽にとどまらず、社会現象にまでなったポップスバンド・チェッカーズ。そのリードボーカル・藤井フミヤの実弟であり、サックスプレイヤーとしてグループを支えた藤井尚之が、2月に発売したソロアルバムを引っさげて、国内3カ所のライブツアーを5月におこなう。バンド解散から来年で25年を迎えるのを前に、結成当時のことや自身の音楽への向き合い方など、現在進行形の藤井尚之について話を聞いた。
写真/渡邊一生

【写真】バンド時代より渋みの増した藤井尚之

チェッカーズは「バブルとともに現れバブルとともに去って行った(笑)」

──ファンならずともチェッカーズとしての活動は鮮烈に記憶に残っています。解散後はどのような活動をされていたのでしょうか。

高校を卒業してこの世界に入って、今に至るんですけど。結局音楽の世界しか知らない。バンド自体は約10年の活動だったんですが、そのあと1~2年くらいはふらっと遊んでた時期があって(笑)。まぁ、好きなことをやらせていただいて、その後にしっかり仕事しようかな、みたいな。でも、ちょうど時代的にも超バブルなときだったんで、バブルとともに現れバブルとともに去って行ったバンドですけどね(笑)

──チェッカーズを組む前までは音楽活動をされてたんですか?

アマチュアのときって、だいたい仲間でバンドを組んだりするじゃないですか。俺らの時代、まだ「音楽やる=暴走族と変わらない=不良」な扱いをされてた。でもみんなバイク、族の方に走ったもんですからね。同級生は誰1人として音楽をやるというやつがいなかったんです。

──そうなんですか?

そう、見事にゼロでしたね。みんな族になっちゃって。まあ、うちの兄貴とかは、バンドも族もやってたんですけどね(笑)。

──なるほど(笑)。

それで、チェッカーズができたときに、初期メンバーのベースが辞めるってことになって。僕がベースを弾いてたもんですから、じゃあちょっと代わりのベースが入るまで弾いといてと。で、大土井裕二さんが入ってきて、いらんもんになって。なんか、辞めさせるのもかわいそうやねぇ、というところで、サックスでもやりゃあいいんじゃないっていう・・・。

──軽いノリで。

ほんとに。でもカバーしてたバンドだったり曲っていうのが、サックスがバリバリに入っててありきの曲だったりするんですよ。そういうドゥワップバンド、ロックンロールバンドって周りにいっぱいいたんですけど、誰1人サックスやってる人がいなかった。じゃあ目立つんじゃない、というのがサックスを始めるきっかけですね。見た目もかっこいいし、サウンドももちろんかっこいいんで。もうそれからはずっとチェッカーズの活動ですよね。

──今年は9年ぶりにお兄さんとのユニットF-BLOODが再始動されます

F-BLOODは兄弟のデュオというところで、自分が曲書いて、兄貴が詞を乗っけて・・・。今までやってることをやれば良い。新しいものを作らなくちゃいけないという使命感みたいなものは、まるっきりない(笑)。基本なんですけど、自分が感じて、今まで身体に入って消化できたものが、やっぱり自分の力になってると思いますから。それをベースにしたものをこれからも作っていくのがベストだと思うんですね。それはオールドスタイルなのかもしれないけれども、それはそれで良い。良き時代のものをというわけではなくて、その都度自分が一番いいと思うものをやってる。で、それをやったことで、新たな発見ができるし、次のステップに行ける。自分のなかでは新しいものがまた生まれるんじゃないかなと思ってます。

──チェッカーズ時代の楽曲は幅広かったですよね。

それはそれで自分たちで遊んでたというか。あれだけ人数いたんで、いろんな意見を取り入れたってことですよね。それはバンドの良さであって、ソロになって1人でなんでもやんなきゃいけなくなると、やっぱり正直自分の技量はそんなにないものですから、ほかに頼れるものを探ってしまう。それは仕方ない。でもそんなことをしながら、やっぱり嫌いなことはやらないだろうしね。

サックスは「表現する楽器のひとつ」

──チェッカーズでもボーカルをとる楽曲はありましたが、解散後はどちらのスタンスもとられてますよね。ご自身では今でもサックスをメインの楽器と位置づけてるのでしょうか?

いや、音楽をやる上で自分が表現する楽器のひとつっていう位置にしちゃったんですよ、サックスを。ギターとかと変わらないレベルにね。だからサックス奏者っていう見え方じゃなくて、サックスもできんだよ、みたいな。ほかの活動をやるときって歌ったりもしていたので、フロントに立って、歌って、はい間奏サックス、ってなると休む暇もなく・・・。だんだんサックスって楽器は、歌とは別なときに披露すればいい、みたいな。でもノンコーズ(ベース・後藤次利、パーカッション・斉藤ノブのスリーピースバンド)、アブラーズ(元チェッカーズのメンバー4人で活動)・・・、結局やってるのはサックスなんですよね。ま、それはみなさん求めてるので(笑)。別に自分のなかで封印して「やだ、サックス吹かない」っていうわけではないのでね。

──そんななか、今回はテナーサックス1本で挑んだアルバムとなります

この年になって「自分はこれだ」ってちゃんと見せた方がいいのかなって。やっぱテナー吹きだっていう見せ方がいいのかなって思ってきて。もちろんバリトン、アルト、ソプラノとか実際やってきてるし、求められることもありますからね。それはもうしょうがない。自分がやってきた実績でもあるし。そこはそれでいいとして。この先、テナーという楽器にこだわって、なるべくテナーで押し切る。そういうくらいの姿勢で行った方がいいのかなと。

──原点回帰ですか?

うん。まぁ、結局ね。始めたときはテナーしか吹いてなかったし。だから自分がしっかり歩いてきたはずのその道を、寄り道いろいろしてるけど、やっぱりちゃんと踏みしめていけるものがテナーサックスって言う楽器。そう自分のなかでちゃんと意識して、これからもお付き合いした方がいいのかなって。

──ほかのソプラノやアルトと違ってテナーに魅力を感じるのはどこなんでしょうか

音域もそうですけれども。やっぱり形もそうなんでしょうね。サイズと言いますかね。わりとメロウな楽器でもあるんですけれども、バッキングに回って低音が出せるっていう魅力もやっぱりあると思いますね。リズム隊にもなれるっていう、そういうおもしろさっていうのがある。

──ノンコーズのように和音が出せないグループでも活動されていると、表現の幅はテナーが一番あると

そうだと思いますね。テクニックを使えば比較的高音まで出せますし、そのおもしろさもあったりするでしょうね。

テナーだと「ドスケベにエロくも表現できる」

──今回オリジナルも5曲ありますが、カバー曲が多いですね。

なんでこんなメジャーな曲をわざわざやるのっていうね(笑)

──この選曲は尚之さん本人で

もちろん1人でガーっと突き進んでいくというわけじゃなくて、相談してなんですけど。逆に有名な曲を並べてどれにしようか、っていうその選択肢もなかなか難しかったですよ。

──『G線上のアリア』の一発目のロングトーンがめちゃくちゃエロいですよね(笑)。

この楽器の性質で、爽やかに奏でられる奏法もあるし、ほんとにもうドスケベにエロくも表現できるっていう、その振り幅が非常にできる楽器だと思いますよね。それは奏者のどういう風に音を表現するかっていうことだと思うんですよ。当然リバーブ感とかあとで付け足したりもできるんですけども、そういうものを省いた演奏のやり方によっては、おもしろく遊べる楽器でもありますからね。

──シンディ・ローパーの『タイム・アフター・タイム』を最後に持ってきたのは?

やっぱりもう単純にこの曲の次は?、って並べていった順ですよね。意外とここ最近、レコーディングした順番のまんまが良いじゃんみたいなこともあったりするんすよ。全部が全部じゃないですけど。一番最後に触ったのが『タイム・アフター・タイム』だったし。そういうときもありますね。不思議と合ったりするんですよね。昔は、よくいう言い方でいったらA面、B面ってひっくり返す間があった。それってすごいストーリー性が作れたんですけど、今は機械が勝手に曲順なんて関係なく流したりするじゃないですか。でもまぁ今もみなさん、アルバムに関しては曲順ってすごく考えてると思いますけどね。作り手としては、絶対考えてる。

ステージの上では「そこはもう駆け引きですよね」

──アルバムを通して懐かしさを感じたのですが、アレンジの世界観ははじめからイメージしていたのですか?

アレンジはキーボードの(佐藤)雄大くんが手伝ってくれたんですけど。自分がバンド出身の人間なので、音楽のわかるアレンジをしてくれる人というのは、すごい憧れ。もう細かいことを言うより、その人のセンスを信頼してお任せする。自分にないものを要求してしまうのも当然ありますし。

──レコーディングのメンバーは、どのように声をかけたのですか?

今回雄大くんに自分がやりたいプレイヤーを呼んできてよ、って。今回はぐっと若い、平均年齢で言ったら30半ばくらい。だからもちろん、僕はダントツに年齢が上、おっちゃんなんですけど(笑)。

──彼らからの若い刺激って感じたりしますか?

みんな尖ってないんですよ。「カッチョイイからポーズでバンドやろうぜ」じゃなくて、音楽が好きで音楽を始めた連中なんですね。自分の生い立ちみたいな尖ったモノがない。ツッパリ感が全くないっていうことですね(笑)。だから安心感があるんですよ。なんでもそつなくこなす。それは自分にない音楽との接し方で、ダメなもんはダメ、見向きもしないジャンルとかってあったりするじゃないですか。でも彼らはそういうこともなく、なんでもこなせる。

──物足りなさみたいなのは感じないのですか?

そこが不思議とね。いろんな情報が手に入る世代なんでしょうね。ちょっと荒く演ってって言ったら荒くできるし。イメージを伝えれば再現してくれる。大したもんだ。

──ツアーメンバーはレコーディングとは違うんですよね

ドラマーの(平里)修一くんだけです。あとは全員違いますね。でもそれはそれで、また違うものが。必ずしもCDの再現ってことにこだわっていないですし。ライブはライブで、アレンジもちょっと手を加えてもいいと思ってます。もっとシンプルに聴かせる可能性もありますね。

──セッション風になったり?

もちろんそういう風になる、した方がいいっていうか。リハーサルをやってみないとわからないところなんですけれども。みなさん知ったメンツばっかりだったりするんですけれども、そこはもう駆け引きですよね。

──駆け引き、いい響きですね

うん。だから「はい、みんな休憩!」って1人で演る可能性も、あります。そのへんは実際そのライブの構成にもよりますよね。

時代の渦にもまれながらも、自分を信じ、周囲と協調し、あくまでも自然体でいる、そんな人柄を感じた今回のインタビュー。こだわりを持って奏でるテナーサックスの音色から、哀愁やエロティシズムもにじみでるライブツアーは、5月に東京、大阪、名古屋で開催される。大阪公演は5月28日に「ビルボードライブ大阪」(大阪市北区)でおこなわれ、チケットは7200円ほか、現在発売中。

最終更新:5/5(金) 10:00

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