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[特派員コラム] 北朝鮮という材料

5/5(金) 6:35配信

ハンギョレ新聞

 東京特派員として日本に来て1カ月余り、日本のニュースで最も多く聞いたり見たりした単語はおそらく「北朝鮮」であろう。「北朝鮮情勢緊迫」、「米国による北朝鮮攻撃時に、韓国滞留日本人の救出をどうするか」のような記事が1カ月間にニュースで休む間もなく流れた。この程度なら、日本も心配なのでそうなんだろうと受け流すこともできるが、産経新聞系列の夕刊フジなどが「朝鮮半島有事時、難民100万人」のように特別な根拠も提示せずに吐き出した記事はタイトルを見ただけで頭が痛くなる。

 日本で北朝鮮脅威論が連日のようにあふれるのには、安倍晋三政権の各種の発言と対策が大きな役割を果している。先月初めには、駐韓日本大使館が韓国に滞留する日本人を相手に「朝鮮半島情勢に注意しなさい」という文をホームページに上げて、中旬には内閣官房のホームページに北朝鮮のミサイルが日本に落ちた場合の待避方法を上げた。その待避方法とは、屋外にいる場合には近くのできるだけ頑丈な建物や地下街などに避難し、屋内にいる時はできるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動する、という程度だ。一部の日本人がミサイルが日本に落ちる場合にこの程度で対策になるのかと言うほど、対策自体として粗いが、北朝鮮の脅威を日本人に刻印させるには充分に見える。最近では、北朝鮮が発射に失敗したミサイルを理由に東京の地下鉄と一部の新幹線が一時運行中断される事態まであったので、日本人たちは北朝鮮脅威論をますます肌で感じる状況になりつつある。

 1カ月以上にわたって続いたこうした北朝鮮脅威論は、今や最終目的地に向かっているように見える。安倍晋三首相は、日本の憲法記念日である3日に読売新聞に載せられ掲載されたインタビューで、2020年までに憲法を改正し自衛隊の存在を憲法に明示し合憲化すると明らかにした。安倍首相は「『自衛隊は違憲 かもしれないけれども、何かあれば命を張って守ってくれ』というのは、あまりにも無責任だ」と述べた。朝鮮半島で戦争が起きることがありえるし、北朝鮮が戦争中に日本にミサイルを発射することもありうるのに、日本は平和憲法に縛られて備えができないという論理が展開されている。

 考えてみれば、実質的には軍隊だが名前は軍隊でない自衛隊の誕生自体が朝鮮戦争のためだった。朝鮮戦争の勃発で在日米軍が韓国に行くことになり、ダグラス・マッカーサー連合軍最高司令官は1950年に吉田茂当時日本首相に対し「不法な少数者が暴れる隙を与えないため警察力を強化しなければならない。日本政府で7万5千人規模の国家警察予備隊を設置し、さらに海上保安庁が現在保有中の保安人材に加えて8千人を増員することを認可する」という手紙を送った。こうして生まれた警察予備隊は、その後自衛隊として再誕生した。朝鮮半島の緊張が高まっている今が、日本の保守派にとっては平和憲法を改正でき、自衛隊を名実共に軍隊に変える第一歩を踏み出すことができる機会として映るだろう。

 北朝鮮脅威論は、日本のみならず韓国保守にとっても伝家の宝刀だ。北朝鮮が主敵か否かのような泥縄式の主敵論や思想論争は、選挙の度ごとに繰り返され、韓国の保守にとっては票をかき集めやすい材料だ。

 北朝鮮の政権が、核を開発したりミサイル発射実験を続けているのは、きわめて不幸なことだ。北朝鮮の軍事力強化路線が北東アジアの緊張を高め、相手の武装強化を正当化する口実を提供するので、当然これには反対する。だが、純粋な安保次元を超えて、自分たちの政治的目的を成し遂げる材料として利用しようとしている韓国と日本の勢力もまた批判を受けて当然だ。

チョ・ギウォン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )