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星野源が「音楽で遊ぶ」生放送番組『おげんさんといっしょ』を観た!

5/5(金) 12:45配信

RO69(アールオーロック)

いやあ、ゆるい。楽しい。そして一瞬たりとも目が離せない!
誰も観たことない、誰もやったことない「音楽番組」になるだろう――というのは、放送前から内容を小出しにしていた予告動画からも十分に予感していたが、実際に生放送でオンエアされた「星野源が“音楽で遊ぶ”番組」こと『おげんさんといっしょ』の、テレビの枠組みにおいてはギリギリのゆるさは、想像を遥かに超えてスリリングだったし、楽しかった。

昭和レトロ感漂うお茶の間を舞台に、おげんさん(星野源)とお父さん(高畑充希)、娘・隆子(たかしこ/藤井隆)、進行役も務めるおげんさん家のネズミ(声:宮野真守)、そして隆子同様におげんさんの息子&娘という設定の学生服姿のバンドメンバー=林立夫(Dr)/ハマ・オカモト(B)/櫻田泰啓(Key)/石橋英子(Key, Marimba)/長岡亮介(ギター)を擁して、あたかも家族もののコントの如きセットと空気感の中で『おげんさんといっしょ』は展開されていく。

「充希ちゃんも音楽番組に出たことあると思うけど、すげえ緊張するじゃない? そうじゃなくて、ものすごくダラダラした、リハーサルみたいな音楽番組をやりたいなと思って」と星野源自身が番組冒頭から「おげんさん」「お父さん」の設定を度外視して高畑に話しかけたり、なかなかタイトルコールに進まないのんびりした進行ぶりに業を煮やした隆子こと藤井隆が「怖すぎるわよ! 何この番組? 緊張感持ってやりましょうよ!」と釘を刺したり、おげんさん家のキッチンに寿司詰め状態で楽器を持ち込んでスタンバイした凄腕バンドメンバーを「全員、私の息子と娘っていう設定」(おげんさん)、「ヒゲと白髪が多すぎるわ!」(隆子)といじったり……といった場面はどれも、「音楽番組」のフォーマットからは大きく逸脱したものだ。
しかし、櫻田&石橋のW鍵盤ハーモニカ編成をバックに、おげんさんと隆子/お父さん/ネズミがボーカルパートをリレーしながら歌い上げた“SUN”は、キメキメの余所行きの「ショウ」としての音楽とはまったく異なる「普段着のうた」の魅力に満ちていた。

家族と一緒にタブレットで動画を観ているようなシチュエーションで、星野源のルーツでもあるマイケル・ジャクソンの「初めてムーンウォークを披露した『モータウン25周年コンサート』」「登場から約2分間動かず仁王立ち、伝説の『ライブ・イン・ブカレスト』」を観賞しながら、「世界中からKing of Popって言われてるのに、なんかこう、寂しそうな感じがして。僕も埼玉に住んでて、すっごい寂しかったの。全然違う、雲の上の人なんだけど、妙に親近感とシンパシーを……で、『あんなふうなカッコいい人、好きだな』って思って、音楽が好きになって、ダンスも見たりしてたの」といった自身の原風景をさらりと垣間見せ、「一緒にやってもらった“SUN”は、マイケルへの曲なんだよ?《Hey J》のJはJacksonのJなのよ」と明かし、名曲“老夫婦”をアコギ弾き語りで披露……といった具合に、番組は終始肩肘張らないモードのまま進んでいく。

そして――番組中盤、「長男」役で登場したスペシャルゲストは細野晴臣!
細野曲“絹街道”をバンドメンバーとともに演奏する一方で、卓袱台トークでは事前に募集した「くしゃみ動画」「うまそーな画像」といったテーマ投稿の紹介とともに、星野の古巣バンド・SAKEROCKの名前が、YMOのカバーでもお馴染み“Fire Cracker”の作曲者=マーティン・デニーの楽曲“Sake Rock”にちなんだものである、といった話題が、これまたさらりと自然に織り込まれていく(これがきっかけで「#おげんさん」だけでなく「#SAKEROCK」が一時Twitterのトレンド入りすることに)。
今やソロアーティストとして日本のポップミュージックシーンをリードする存在となった星野源に、自身のレーベルからのソロアルバムのリリースを勧めた巨匠・細野晴臣。アカデミックな音楽番組としてもスタイリッシュなドキュメンタリーとしてもいくらでも成立させられるはずのこのふたりの共演が「お母さん姿と学生服姿で卓袱台を囲む」という形で実現している構図こそ、この番組で星野源が目指したものを象徴していたように思う。

時に人生を変えるほど「特別なもの」である音楽は同時に、聴く者の日常と切っても切れない「普通のもの」でもある。
自身の楽曲やリスペクトするアーティストたちを、きらびやかな照明効果や張り詰めた緊迫感ではなく、昔懐かしい「普通の風景」の中に配置することで、星野源はそんな音楽の在り方の本質を浮かび上がらせたかったのではないか?――と僕には思えて仕方がない。

番組の最後を飾ったのは、「深夜なのでしっとりバージョンで」という前置きとともに披露された“恋”。日本中を席巻したあの曲のベースを細野が奏で、藤井&高畑が「恋ダンス」を繰り広げる中、「おげんさん」の歌声がひときわ伸びやかに響く――心地好いワクワク感に満ちたひとときの、最高のエンディングだった。
今回の『おげんさんといっしょ』はあくまで一夜限りの特別番組という位置付けだったようだが、ぜひまた第2弾・第3弾が観たい!と今から勝手に期待している。(高橋智樹)

RO69(アールオーロック)