ここから本文です

米オバマケア改廃法案、僅差で下院通過 上院へ

BBC News 5/5(金) 11:28配信

ドナルド・トランプ米大統領が主要選挙公約のひとつに掲げていたオバマケア(医療保険制度改革法)の廃止について、連邦下院は4日、新しい改廃法案を217対213の僅差で可決した。トランプ氏はオバマケアは「死んだ」と宣言した。与党・共和党は3月に最初の改廃法案を票数不足で撤回している。

下院(定数435議席、4議席空席)で共和党は少なくとも216票が必要だった。オバマケアの内容が大幅に削減された新法案に民主党議員193人は全員反対票を入れたほか、共和党からも20人が造反したが、必要票を1票上回ったため、法案は上院審議に送られることとなった。

米医療保険法案(American Health Care Act、AHCA)の下院採決直後にトランプ大統領はホワイトハウスで会見。「最高の法案」は上院でも可決されるはずだと述べ、「誤解のないように。これはオバマケアを撤廃しその代わりになるものだ」と強調し、オバマケアは「要するに死んだ」と宣言した。「保険料は下がる、年間自己負担額も下がる。何より、最高の法案だ」と大統領は喜んだ。

トランプ大統領にとっては政権発足3カ月を過ぎて、初の大型法案での勝利となる。

3月24日に最初の改廃法案が廃案となって間もないだけに、共和党が下院の反対派を取り込み保守派も穏健派も受け入れ可能な新法案を急きょまとめ上げたことに、大勢が驚いた。がん治療や救急救命室での治療などといった基本的給付について、提供するかどうかは州ごとに判断できるという項目が追加されたため、多くの保守派は賛成に回った。さらに保険料引き上げにつながる疾患の患者に対して、5カ年で80億ドル分の医療費が保険対象に含まれたことから、党内の穏健派も支持に回った。

一方で、新法案の提出と採決が性急すぎるという批判も多く、議会予算局(CBO)が内容を点検する時間がなかったため、新制度にかかる費用がいくらで、実際にどれほどの人が保険対象から外れるのかなど、具体的な内容が明らかになっていない。

CBOは3月に廃案となった法案については、新制度によって2018年だけで約1400万人、10年間で2400万人が医療保険の加入資格を失うと試算。この結果、2026年の時点で無保険の国民は5200万人に達すると推定している。

2010年に「負担可能医療法(Affordable Care Act、ACA)」(通称オバマケア、医療制度改革法)が成立したことによって、それまで無保険状態だった2000万人が新たに医療保険に加入することができた。

しかし、保険料が払える全国民に医療保険加入を義務付けたことなどを、共和党は連邦政府の過剰介入だと批判。患者の選択肢が奪われ、保険料の高騰につながったと攻撃してきた。

これに対して民主党は、新法案が貧困損から医療保険を取り上げ、富裕層の税負担を減らし、慢性病を患う人たちから医療手当を奪うものだと非難している。

法案はおそらく来月、上院での審議が始まる。上院で可決されるかどうかは不透明だ。

上院(定数100議席)も共和党が議員52人で多数を占めるが、その差は僅差で、すでに一部の共和党議員が、現法案に反対を表明している。AHCAの修正を検討するよりは、独自法案の提出を目指すと発言する共和党議員もいる。

上院で影響力をもつボブ・コーカー議員(共和党、テネシー州)は、現状のままでACHAが上院を通過する可能性は「ゼロだ」と述べた。

共和党幹部のリンジー・グレアム上院議員(サウスカロライナ州)は、「昨日まとまったばかりで、修正も認められず、費用試算もなく、最終審議が3時間で終わってしまった法案は、慎重に検討すべきだ」とツイートしている。

下院が可決した法案を上院が修正した場合、修正部分について下院があらためて合意する必要がある。

オバマケアから何が変わるのか


・オバマケアは保険料負担が可能な全国民に加入を義務付けたが、新法案はこの要件を削除。
・2カ月以上保険に加入していなかった人が新たに加入する場合は、3割の割り増し料が請求される。
・正規従業員50人以上の企業は従業員に医療保険を提供しなくてはならないというオバマケア上の義務を廃止。
・子供や若者が26歳になるまでは保護者の保険プランに残れるというオバマケアでも人気の仕組みは継続。
・保険会社は高齢者に若者の少なくとも5倍の保険料を請求することが認められる。
・救急医療やがん治療などの基本的医療給付を提供するかどうかついて、州ごとに判断できる。
・既往症のある人の加入を保険会社は拒否できないという禁止条項について、免除するかどうか州政府が独自に判断できる。

連邦議会の議事堂の前では法案に抗議する人たちが集まり、下院議員たちが出てくると「恥を知れ!」という叫び声が続いた。

法案に反対した民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務は「とても悲しい。この国でこれほど大々的に、富の分配が変更された例はあまりない。富裕層の税負担を減らしたいという(共和党の)願望が、あらゆるすべてのことに勝っていた」と批判した。

バーニー・サンダース上院議員(民主党、バーモント州)は、「何千人もの米国人が、医療が受けられなくなり死んでしまう」と警告。ヒラリー・クリントン氏は「共和党による恥ずべき政策と道徳の破綻だ」とツイートした。

ニューヨーク州の司法長官は、法案がもし成立すれば、市民から医療を奪うことになるため、政府を提訴する方針を示した。

一方で共和党は法案可決を大いに歓迎した。ケビン・マカーシー下院院内総務は、AHCAによって米国人の選択肢が増えるのに加え、オバマケアのもとで保険料が上昇し治療内容の選択肢がせばまっていく「死のスパイラル」が食い止められると強調した。

ホワイトハウスのラインス・プリーバス首席補佐官は「アメリカにとって大勝利」で、医療費削減につながると喜んだ。

採決の前、共和党の下院執行部は非公開会合で映画「ロッキー」の試合前の曲、「アイ・オブ・ザ・タイガー」をかけて気分を盛り上げていた。

BBCのアンソニー・ザーチャー北米担当記者は、もともと共和党が民主党に対してかなり優位に立つ下院の方が、法案を通過させやすかったのだが、それでも3月にいったん撤回を余儀なくされたのは、共和党内の分裂と、トランプ大統領の説得力の限界を露呈したと指摘。「そうした問題は今後も消えない。審議が上院に移れば、党内の断層には一層の圧力がかかるし、トランプ氏の説得術もいっそう試されることになる」と解説している。

(英語記事 Trump scores healthcare victory in House)

(c) BBC News

最終更新:5/7(日) 8:50

BBC News