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オートレース史上初SG4連覇 規格外新人・鈴木圭一郎の素顔

5/6(土) 16:32配信

東スポWeb

 将棋界ではデビュー16連勝を飾った最年少プロ棋士・藤井聡太四段(14)が話題を独占しているが、60年の歴史を誇るオートレース界でも史上初のSG4連覇を達成した“常識外新人”が出現した。その名は鈴木圭一郎(22)。これまでも速くて強いレーサーは数多く出現してきたが、鈴木が決定的に違うのは、レース前に周囲をザワつかせる立ち居振る舞いだ。不利と言われる大外枠8号車を好んで選択し、それでも勝ってしまう強さでファンを驚かせている。オート界の異端児が取った珍行動と快挙の舞台裏を探った。

 ギャンブル業界で大外枠不利は常識だろう。競馬では、2014年の有馬記念で抽選順に枠番選択権が与えられるシステムを取ったが、その時は15番目の馬が15番枠、16番目のオーシャンブルーには大外枠しか残っていなかった。

 オートも同様で、ハンデなしの優勝戦なら「1~4枠までが勝負権のある位置」との認識が、選手間でもファンの間でも一致している。最高峰の舞台であるSG優勝戦は成績上位者から枠番選択権が与えられるが、そこで史上初の“暴挙”に出て周囲をあぜんとさせてしまったのが、デビュー4年目の鈴木だ。オートの世界では4、5年たっていても新人扱い。だからこその規格外選手というわけだ。

 川口オートレース場で3日に行われたSG「第36回オールスター」優勝戦で、鈴木は枠番選択権1番目ながら大外の8号車を指名。対戦相手の誰もが耳を疑い、顔を見合わせた。優勝賞金1300万円を自ら放棄するに等しい行動と映ったからだ。

 V候補筆頭だった鈴木は、このオールスターに勝てば史上初のSG4連覇達成。そうした状況での大外強行指名に、ロッカー内はエンジンの爆音以上の大騒ぎとなった。

「アイツはオートをナメてるのか!?」。レース前に走路内で行われた選手紹介時にも全く同じヤジが飛び交ったが、本人はどこ吹く風。

「そんなことを言われてるのは知りませんでした」と平然と言ってのけた。

 その言葉通り、10周で行われる優勝戦では圧巻のレースを見せた。大外だけにスタートは8車中6番手という、常識的には苦しい位置となったが、鈴木はここから着実に追い上げる。1車ずつさばいて8周目にトップに立つと、そのまま1着でゴール。見事にSG4連覇を達成した。

 川口選手会支部長で準決勝で鈴木に屈した若井友和(43)は、最終日の異様な雰囲気をこう振り返る。

「競馬で言えばさ、ディープインパクトがわざと最後方に下げて、大外をブン回して勝っちゃうようなもんだけど、アレはもともと積んでる“エンジン”が違う。僕らは同じエンジンで戦ってるわけだからね。僕に枠番選択権があったら? 8なんか絶対取るワケないよ。だって金稼ぎたいもん」

 勝負ごとに“挑発行為”は付き物。かつてプロ野球の世界では、日本シリーズで「ロッテより弱い」と語り炎上させた投手もいた。プロレスの世界では「かませ犬発言」でリング外でファンの代理戦争の場を提供したレスラーもいた。賛否両論あれど、彼らに共通するのは興行の盛り上がりに結び付けていることだ。

 鈴木の取った今回の行動は間違いなく車券の売り上げにも貢献した。節間総売り上げ19億2837万円は対前年比27%増という盛況につながった。

 若井は異端児の出現を大歓迎する。「選手の中には『ナメられてる』と思って頭にきた人もいるし、逆にあれで『何がなんでもやっつけてやる』と奮起する人もいるからね。ああいう子が出てくることはうれしいよ。あれで普段の態度も生意気だったらもっとおもしろいんだけど、圭一郎はホント謙虚でいいヤツだからね。ああいう子がチャンプになればいいんだよ。ファンの方も楽しいでしょう」

 鈴木の兄弟子でSGを6度制したトップレーサーの一人である中村雅人(36)は言葉を選びながらこう語った。

「今回、もし勝てなかったとしても彼は絶対にそれ(枠番)を言い訳にはしない。そういう男ですよ。あえてリスクを背負って得たものに、本人しかわからない価値のあるものが潜んでるんじゃないですか。勝負師の世界はそんなもんだと思いますよ」

 ファン投票1位でオールスターに選出されたとはいえ、まだデビュー4年の鈴木が取った今回の行動は賛否両論を呼んだが、各方面からの注目を浴びたことは間違いない。オート界の“常識外新人”の行動から、今後も目が離せなくなりそうだ。

最終更新:5/6(土) 16:41
東スポWeb