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800年変わらぬ伝統の味、ブルゴーニュのブランド力

5/6(土) 15:30配信

ニュースソクラ

修道士の技、人知で受け継ぐ

 「ブルゴーニュ」は、フランスの高級ワイン産地として知られる。中でも、トップ3%だけが名乗ることを許される特級(グラン・クリュ)畑から生まれるワインは特別だ。

 ボトル1本のワインが1万円を超えるのは珍しくない。南半球の安価なワインが幅を利かせる海外市場でも、強い競争力を保つ。究極の農業マーケティングの秘密を知りたくてブルゴーニュを訪ねた。
 
 3月に地元の農業改良普及員に連れて行かれたのは、グラン・クリュ指定されたクロ・ドブジョと呼ばれる50ヘクタールのワイン畑だ。高い石積みの壁に囲まれたなだらかな傾斜の畑は、100の区画に区切られている。85人の農家がブドウを栽培し、ワインに醸造する。その中で最大手の農家フランソワ・ラベットさん(62)に話を聞いた。

▽テロワールは800年前から
 驚いたのは区画ごとに日当たりや水はけなどの違いが意識されていたことだ。その小さな区画の土壌や微妙な気象の違いが、微わなブドウの違いとなって、製品のワインに反映される。ワイン畑の基本的な地割りは、800年以上前に修道士がワイン造りをしていたときのまま。長い年月をかけて修道士たちがワインの品質に見合った地味(テロワール)を吟味して決めたという。

 「現代なら土壌の物理性や酸性度、肥沃さを分析できる。気象ロボットで畑の微妙な気象だってわかる。彼らはそれを800年前にやっていた」とラベットさんは、修道士の技に舌を巻いた。

 ブルゴーニュのワイン造りの特徴は、農家が主役だ。基本は自分の畑から取れたブドウを、畑ごとの名前を冠にしてワインを醸造する。ラベットさんは「どれだけすばらしいブドウを収穫できるかで品質の9割が決まる。醸造方法も工夫するが、役割は1割」と言い切った。それだけ、畑のテロワールの違いがワインの品質に決定的ということだ。

▽伝統、品質、希少性
 クロ・ドブジョでは、昔ながらの製法に徹底的にこだわる。干ばつのときでも、ブドウに水やりをするのは禁止。年による豊凶も多様性の一つという発想だ。品種は一つに決められ、収穫は手摘み。単位面積から収穫できるブドウの量も制限する。

 ブルゴーニュ・ワインのPR団体によると「伝統、品質、希少性がブルゴーニュの魅力だ」。長い年月の中で定められた小さな区画の畑から、厳密な規則によって多様な製品が生まれる。新興国の大量生産の対極を行くことで、ワイン一つ一つに物語を添えることができるようになった。消費者はワインを飲みながらその物語に思いを馳せる。大量生産を特徴とする後進産地が、どんなに品質を向上し追い上げても、テロワールで特徴づけられたブルゴーニュ産を超えることは難しい。

 畑のテロワールの多様性を消費者が評価する限り、ブルゴーニュ・ワインの優位は揺るぎようがない。

山田 優 (農業ジャーナリスト)

最終更新:5/6(土) 15:30
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