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【傑作の理由】Kis-My-Ft2、新作『MUSIC COLOSSEUM』から始まる新たな闘い

5/6(土) 17:00配信

RO69(アールオーロック)

前作『I SCREAM』から1年と空けないハイペースで、Kis-My-Ft2の6枚目のオリジナルアルバム『MUSIC COLOSSEUM』がリリースされた。『I SCREAM』がデビュー5周年の節目に相応しい大団円のポップ作だったとしたら、この『MUSIC COLOSSEUM』は次の5年、10年に向けて再びギアを入れた彼らの攻めの一作ということになるだろう。

大団円の5周年とは言え、キスマイの5年間はけっして順風満帆で平坦なものではなかった。デビューアルバムから5作連続オリコンチャート1位という輝かしい記録の裏で、彼らは「ジャニーズらしからぬジャニーズ」というトリッキーなキャラと戦略でもって、がむしゃらに活路を見出してきたグループだからだ。わずか2年の間にキスマイ、Sexy Zone、ABC-Zと3組ものデビューが続いた状況下で、早急に差別化が必要だったという事情もあるだろう。いずれにしても、歌番組やコンサート、ドラマでの王道の活動の一方で、『キスマイBUSAIKU!?』など自虐を引き受けた体当たり系のバラエティや、「前列メンバー」北山、藤ヶ谷、玉森と「後列メンバー」横尾、宮田、二階堂、千賀のグループ内格差を逆手にとった別ユニット「舞祭組」での活動など、時にはアイドルの枠を踏み外すことも厭わない仕事の数々でも結果を残し続けることで、若手を代表するグループへとのし上がっていったのが彼らの5年間だったからだ。そして前作『I SCREAM』は、5年をかけてグループの魅力を証明し、十二分に結果を残したことで「ジャニーズらしい or らしくない」といったフレームを必要としなくなった彼らが、ストレートに格好よさ、ポップさ、楽しさを追求した作品だった。

そんな『I SCREAM』で最初のハッピーエンディングを迎えたキスマイが、再びファイティングポーズを取ったことが瞬時に理解できるのが、“Overture ~Music Colosseum~”から“EXPLODE”、“VersuS”へと至る本作のオープニングの流れだ。コロッセウムの名に相応しく、さらに高みを目指す闘いの始まりとトップを掴むことを宣言したこれらの曲は、EDMをベースにロック、ファンク、歌謡曲と使えるものはなんでも武器にしてきた彼らの真骨頂のアグレッシブチューンの連打。中でもヒップホップと和物のリズムをミックスさせてきた“VersuS”は、アティチュードの面だけではなく、サウンド面でも出色の攻めをアピールした1曲だ。

そんな超攻撃型のオープニングから一転、中盤はラテンのリズムも軽快に駆け出す“いいね!”で《学生さんも OLさんも 頑張った自分を 誉め称えろ》と歌われるのを皮切りに、《きっと君も誰かのスーパーヒーロー》(“レッツゴー!!”)、《大丈夫 君はありのままで 僕も共に歩いていくから》(“SEVEN WISHES”)と、ジャニーズの王道と呼ぶべき応援ソングが並ぶ。これまでがむしゃらに、時間に追い立てられるように、ひたすら前へ前へと走り続けてきたキスマイが、後ろを振り向き「頑張ろう」とファンを手招きする存在となったことが感慨深いし、王道も邪道もすべてひっくるめて立つ2017年のキスマイの強さを印象づけるセクションになっている。

バラエティ等でのずっこけファニーなイメージとは裏腹に、キスマイは音楽面では常に驚くほど安定したクオリティをキープしてきたグループでもある。ジャニーズJr.時代から“FIRE BEAT”を筆頭に優れたオリジナル曲に恵まれてきたバックグラウンドに加え、どんな曲調であっても歌い乗りこなしていく頼もしき北山宏光と藤ヶ谷太輔のツインボーカルの強みもあって、デビュー後はジャニーズの中でも率先して新ジャンルにチャレンジきたのがキスマイなのだ。ここ数年のジャニーズサウンドの必須アイテムと化しているEDMをいち早く取り入れ、グループの持ち味にしてきたのも彼らだ。

そんなキスマイがEDMから派生した今最もホットなジャンルのひとつ、トロピカルハウスを導入したナンバーが“One Kiss”だ。トロピカルハウスとはアッパーでアゲアゲ一辺倒なEDMの中にあって束の間のチルタイム、スローなBPMにのってゆったり潮風を楽しむようなリラックスしたムードが特徴だけれど、そんなトロピカルハウスがここまでキスマイにマッチしたのは、ワイルドな北山とフェミニンな藤ヶ谷、ふたりのメインボーカルの両極にセクシュアルで艶やかな声の魅力が最大現に生かされているからだと思う。そこから“Sha la la☆Summer Time”へと続く夏らしいメドレーは最っ高に気持ちいい! 今年のキスマイのツアーは久々のアリーナツアーだが、この2曲の流れは野外コンサート、フェスなどでも体験したくなってしまう。

その心地好い流れをブチ切るようにインサートされるのが本作の飛び道具的コミックチューン“キスしちゃうぞ”だ。《「君のハートを頂きます!」》、《「はい、投げキッChu」と羞恥ど真ん中のセリフのインサートに悶えつつも無茶苦茶楽しいこの曲は、ジャニーズらしからぬ真性の「アニオタアイドル」として斜め上の層を開拓した宮田俊哉を擁するキスマイならではの一曲かもしれない。そんな“キスしちゃうぞ”と美しくハイファイなバラッド“君のいる世界”の2曲は、『MUSIC COLOSSEUM』においてインタールードの役割を果たしていると言っていいだろう。

なにしろ後半は、さらに躊躇なくアクセル踏み抜く展開なのだ。ビンテージな90年代Jヒップホップとラウドギターのミクスチャー、歌メロに至ってはグループサウンズ的ですらある過剰な“Bang! Bang! BURN!”、ライブでパイロがばんばん吹き上がる中で踊りまくる彼らが目に浮かぶような“r.a.c.e.”、EDMの中でもとりわけスクリレックス的な重低ベースでガツガツ追い上げていく“Tonight”、そしてシンフォニックなロックチューン“Dream on”と、最後まで手綱を緩めず攻めを貫くフィナーレが圧巻だ。

ここまでの基本の14曲に加え、通常盤にのみボーナストラック“Baby Love”、及び北山、藤ヶ谷、玉森のソロ曲が追加されている。しかし、前作『I SCREAM』では7人全員のソロ曲があったのと比較しても今回はソロ曲の印象がかなり薄いし、ユニット曲が本編に1曲も収録されていないのも特徴だ。つまり、『MUSIC COLOSSEUM』は7人を「分散」させる方向の楽曲は意図的に排除されている印象なのだ。その代わり本作で特筆すべきは、7人がそれぞれ1曲づつ、プロデューサーとして選曲、歌詞、アレンジ、歌割まで全面参加した点だ。しかも彼らのプロデュースは個々のキャラクターや特徴を生かして差別化を図るのではなく、「キスマイとは」という命題に向けて7人が互いの個性をすり合わせ、答え合わせしていく、言わば「集約」、「結束」型の仕事になっているのが本作の強みだ。

試行錯誤の末に勝ち取った5周年を経て、一丸となって向かう次の5年へ。『MUSIC COLOSSEUM』はその号令となるアルバムなのだ。(粉川しの)

RO69(アールオーロック)