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日本を応援したくて買った投資信託は全てマイナスです

5/7(日) 11:10配信

ZUU online

さまざまな分野で活躍する「デキる女性」たちに、投資の失敗談をお聞きするインタビューシリーズ第1弾として、Forbes JAPAN副編集長兼WEB編集長の谷本有香さんを直撃しています。

山一證券での失敗談をお聞きした初回に続き、2回目となる今回は失敗を経て、今はどんな投資をなさっているのかを質問してみました。

すると、「持っている投資信託でプラスになったものは1つもありません」という驚きの発言が。なぜでしょうか?

■日本を応援したい気持ちで投資信託を買っています

ーー山一證券に在籍していた頃は給料の3割は自社株、1割は公社債に投資されていましたが、勤務先が破たんし、その後、どういうふうにそのへんは変わっていったんですか?

そうですね。やっぱり経済キャスターをしていると個別株は買いづらかったので、投資信託(☆)であるとか、為替はすごくよく買ってますね。

今持っているのは、外国の債権と、あとは普通に外貨だけでも持っていますね。オーストラリアドルとカナダドル。ユーロは確か売っちゃったかな?あとは投資信託もいくつか持っています。

☆投資信託(ファンド)とは?
資産運用の専門家が株や債券などを取りまとめて運用してくれる金融商品。ひとたび資金を預ければ、その道のプロが経済動向や個別の企業についての情報収集をし、タイミングをはかって売買してくれる。

ーー株は完全にだめ、というわけではないんですね。

だめではないんですよ。やっぱり証券会社と同じルールで、購入するときは申告をして、そこから何カ月後に売れるっていう形ですね。

ーー投資信託はどういうものを持っていますか?

日本株に投資をするものですね。日経平均株価に連動するものもありますし、日経平均株価を上回る成績を目指すものもあります。

ーー投資信託は日本株のものばかりにしている理由は何かありますか?

取材などでファンドマネージャーさんにお会いしたりすると応援したくなって買っちゃったりすることが多いんですよ。

あとはやっぱり日本を応援したいって気持ちが強くて。そのときに、日経平均に連動する投資信託を買えば、日本経済全体にお金が行き渡るんじゃないか、という考え方です。

ーーご自分が投資するときの方針はありますか?

今、かなり制限があるので投資方針を完全に反映できているかわからないんですけれども、ただやっぱり、応援したいところ、であるとか、自分がファンになったところ、ここは値段が下がってもずっと持ってあげよう、みたいな。下支えしてあげようみたいな気持ちで買うことが多いですね。

ーー外国の債券や外貨を持っているのも、投資方針と関係ありますか?

ありますね。私は留学をしていたので、(外貨に投資をし始めたのは)その前くらいからですかね。

日本円の魅力がイマイチ感じられないというか、もちろん安定した通貨ではあるんですけど、やっぱりドルの有効性というか、いろんな意味においての「強さ」みたいなのを考えたときに、ドルは持っておいた方がいいんじゃないか、と。

あとは、アメリカで起業しようかと思っていたときがあったんですよね。実際にデラウエアに会社をつくろうみたいに決めてたことがあって、そのときにドルで資金を持って、今もまだそれを持ちつづけているのは、そこに可能性を残しておきたいというのもあるし、夢を残しておきたいというのもあるかもしれません。なんかそういう意味で持ち続けていますね。

ーーやっぱり、応援したいとか、自分の夢があるとか、そういうのが一つ一つの投資先にあるんですね。

そうですね。だから儲けるつもりは一切ないですね。

ーー儲けるというよりは、自分の資産を自分の好きなところというか、思いのあるところに置いておきたい、というイメージですね。

そうですね。

もちろん儲かれば儲かるほどいいんでしょうが、儲かるという言葉よりはそれがプラスになってより夢が叶いやすくなったりだとか、よりその会社が応援しやすい状況にさせるみたいな感覚ではある気がしますね。

この感覚は、一番最初の、いわゆる全財産を失った経験っていうのが関係しているんでしょうね。

よく、初めて入社した会社の経済状況が、その人の一生の金融観だったり経済観を左右するって言うじゃないですか。あれは本当にその通りだと思っていて、私の場合、山一證券での経験を通じてお金への執着がそこでゼロになっちゃったんですよ。ゼロというか、お金っていうのは無意味であるみたいな、ある意味記号であるみたいな気持ちになっちゃったんですよね。その段階で。

なので、私が山一證券で得られたことっていうのは、その後何年か働いて、すでに何百万円になっているはずだと。それをお金で換算するか経験値として換算するかみたいな問題であるような気がしていて、私は圧倒的な経験値と圧倒的な素晴らしい思い出をもらえて、それは金額を超えるものであったというふうに今は思えています。

お金って「拍手の数」と言われたりもするじゃないですか。だから多ければ多いほどいいに決まっているんですけど、だからと言ってゴリゴリ値上げをするとか、こうじゃなきゃ嫌だっていうのは全然なくて、対価としてもらえるもの、というイメージですね。

ーーそうすると、ずっと積み立てていた自社株がゼロになったときも、「きゃー、お金がなくなった!ショック!」という感じじゃないわけですね。

そうです。なぜかと言うと、私の周りには、私の何十倍、つまり何十年と自社株を買ってきた人たちばかりがいたから。

みんな何千万円ものお金を費やしていたわけですよね。そうすると200万~300万円のお金なんてはした金で、そこにもったいないとか、どうしてくれるんだみたいな感覚を持ってはいけないというものが刷り込まれてしまって、(お金がなくなってショックとは)一切思わなかったですね。

ーーなるほど。それで、経験を得たんだっていう価値に自分の中で自然と置き換わっていったと。

そうですね。置き換わったし、あとは、そう思わないとやってられないというか、自己否定しないためにそういうふうに思った部分もあったかもしれませんね。

■私が買った投資信託は1つもプラスになっていません

ーーちなみに投資信託での失敗はあるんですか?

あります。私が買った投資信託は、たぶん1つもプラスになっていないですよ(笑)。

ーーほんとですか?

今(※取材は2017年3月6日に行われました)はさすがに相場全体が上がってきているので、プラスかトントンになったかもしれないですけど、ここ10年間はマイナスでしたね。

あれほど自分自身も、キャスターとして「長期で持ち続けたら元が取れますよ」ってテレビとかで言い続けていますが(笑)。

ーー投資信託がマイナスになった原因は何だったんですか?

高値づかみ、なんですよ。

投資成績が一番いい「イケイケドンドン」というときに、運用会社の社長さんとかが大きいことを言うわけじゃないですか。そういうときにテレビにいっぱい出られるわけですよね。すると、私との接点がものすごく増えるわけです。

そこで毎回すごいことを言われていると、「これは買っておかなきゃ」という気持ちになって、どんどん買っちゃうわけですよ(笑)。

どんどん投資額を膨らませて、その結果、あとで価格が下がってしまって、マイナスになってしまったってことがありましたし。

自分自信の「夢」ってすごく大事なんですけど、「夢だけ」とか「好きだけ」で必ずしも利益が出るわけではないということは気づかされたました(笑)。

ーー夢や応援したい気持ちも大事だけど、それだけじゃない、ということですよね。

そういうことです。夢や応援したい気持ちが大事とは言っていますけど、本当に投資先として適しているかはちゃんと見なきゃいけない、と。あとは、買う時期も重要。

つまりは総合的な判断が必要だなっていうのを実感した出来事でしたね。

ーーただ、夢や好きという気持ちがあって投資をしていれば、失敗しても自分で納得できる部分はあるかもしれませんね。

そうです。そうです。納得は全然しています。

失敗があって「わーっ!」て頭をかきむしるようなこともないし、毎日株価見ちゃうことも全然ないです。

■自分で選んでやる、と思っていました

ーー谷本さんが投資でさまざまな失敗を経験されていることが分かってきました。ただ、そもそもなぜ、山一証券に入社したときに、自社株をそんなにいっぱい買おうって思ったんですか?

バブル時代を、私は学生として見ていたのですが、当時、たまたま私の親戚に証券会社の人がいたんですよね。で、ものすごく儲けているわけですよ。わかりやすく成金みたいになっちゃって、突然車買っちゃったりとか、家建て直しちゃったりとか……。そういう人が身近にいて、証券会社って面白いなと思いました。景気がよくなれば一番繁栄できる会社っていうのは、証券会社なんだな、ってまず思ったわけです。

私が山一證券に入ったときは確かにバブルが崩壊した頃なんですけど、痛みを感じたぶんこれから盛り上がるだろうっていう自信がありました。だったら、今株を買っておけばあとは上がっていくだけだよね、みたいな気持があったんですよね。

ーー谷本さんのご両親も結構、投資には積極的な方だったんですか?

全然(積極的じゃない)です。そもそも祖父の遺言が「株だけは買うな」だったんですよ(笑)。だから株はやらない一家、やらない一族でしたね。その証券会社のおじさん以外は。

ーーそんな一家に育ったけれども、証券会社のおじさんを見て投資をしようと。

学生のときにはやっぱり夢があるわけじゃないですか。私も大人になったらこういう生活できるんだって、バブルの人たちを横目で見ながら育ってきて。なのに、バブルが崩壊して、一気に就職氷河期になって、経済に対する恨みみたいなものが一番強かった世代でもあります。

「自分よりも上の人たちはこんなにバブルの恩恵を受けているのに、なんで私たちの世代から」みたいな気持ちがやはりあるわけです。実際に、就職活動も、ものすごく大変で。あの頃コンプライアンスなんて言葉もないじゃないですか。だからより一層、経済とか国とか企業に対して不信感があり、自分しか信用できない、自分の感覚で選ばなきゃいけない、みたいな気持ちはあった気がします。

ーーそれにしても、社会人になって一番最初に始めた投資が「株」だったのはなぜなのでしょう?

自分で選んでやる、みたいな気持ちがあったんだと思います。結局、資産運用とかも自分が選ぶとか、能動的に動いたところに「解」がある気がします。

何もかも信じられなくなったわけですよね。それまで、たとえば銀行にお金を預けたら高い金利がついていたのが、バブル崩壊によって一気にゼロになったりするのを見て、「貯金なら大丈夫」という貯金神話に不信感を抱いていて、それなら自分で選んだ方がいいな、と。

あとは、騙されたりとか裏切られたりするのがすごく嫌だったんです。学生時代、あんなに「どこにでも就職できるよ、これからばら色の人生が待っている」って上の世代に言われていたのが裏切られてしまいました。だったら、信用しないでおけばよかった、というような後悔があったわけです。

自分で選んだことに関しては自分の責任なので、裏切られたとか、なんかモヤモヤも残らないだろう、という気持ちがあって、人に言われた通りじゃなくて自分で選んで買う、みたいな。同期の一般職の人たちは誰も(自社株を)買わないけれども、私は選んで買う、みたいなことをしていました。

■最終回は、投資で成功するコツです

「自分で選ぶ」ことが納得感につながっているのは素敵なことだな、と思いました。

最終回となる次回は、これまで谷本さんが投資家の方にインタビューをしてきた中でわかってきた、投資で成功するコツをお伺いしてみました。すると、有名投資家のジム・ロジャーズさんの意外な姿や、谷本さんが情報収集のために普段行っているというライフワークをお聞きすることができました。(③<4月1日公開予定>に続く)

■取材に協力してくれたのは…

谷本 有香(たにもと・ゆか)さん
Forbes JAPAN副編集長 兼 WEB編集長。証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、2004年に米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスター、同社初の女性コメンテーターとして従事し、2011年以降はフリーのジャーナリストに。多数のテレビ番組に出演の他、メディアへのコラム寄稿、経済系シンポジウムのモデレーター、企業のアドバイザーなども務める。これまで1000人を超える世界のVIPにインタビューした実績をもつ。著書に自身のノウハウを凝縮した「アクティブリスニング なぜかうまくいく人の『聞く』技術 」(日本・台湾・韓国で出版)など。

くすい ともこ
DAILY ANDS編集長。北陸の地方紙で5年間記者として勤務後、Web編集者に。「無理のない範囲でコツコツ」をモットーにインデックス投資を始めるも、含み損がコツコツたまっている。

(提供:DAILY ANDS)

最終更新:5/7(日) 11:10
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