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【いま大人がこどもにできること(42)】科学絵本を音読してあげる

5/7(日) 12:30配信

ニュースソクラ

学術用語に快感をおぼえる幼児たち

 おととしから、新樹社という出版社で“もっと知りたい”という科学写真絵本のシリーズを作り始めました。

 いまの小学校課程では、何かを観察して感想を書こうだの、なにかを調べて報告書を書こうだの、いろいろいろいろいうのですが、それをどうやってやればいいのかはよくわからない……。

 それに日本の子どもの本は科学の本であっても非常に情緒的で、いろいろな土を集めて比べてみよう…… その結果が、いろいろな色がある! で終わってたり(なんでその色になるのかの説明はないのです! なんじゃそりゃ、ですよ)動物の本も植物の本も、ほとんど分類も定義も書いてない……。

 「カエルは両生類です」から始まるのではなく、「ほら、かわいいアマガエルですね」から始まったりする……。
 外国の子ども用の科学の本は、絵本であっても索引ついてるし、分類だって、著者が何を説明したいかだってクリアなのに!

 なので、なにかをやれ、っていうんならとりあえずモデルくらい見せなきゃいけないよね、どうやって観察すればいいかとか、まとめかたも……と思って始めたシリーズなので、対象は小学校一年生から……のつもりでした。

 それでも大人のかたには、なかなか低学年用だとわかってもらえない……。
 子葉だの雌しべだの、がく、だの、という言葉を使うと低学年には難しすぎるのではないか……と思われてしまうのです。

 でも逆なんだよね。

 5、6、7歳くらいのかたがたは一度聞いて意味がわかれば覚えてしまう……。
 そうして学術用語がものすごく好きなのです。
 なにせ、言語習得期ですから……。

 その年齢の人たちは意味が二つ以上あったり、範囲が広かったり、どっちでもよかったりするものには極端に弱い……。

 でも、意味がひとつしかなくて、ここからここまで、と範囲がきっちり決まっている学術用語は楽なのです。

 たとえば「さかな」という、言葉には「魚」と「肴」と二つ意味がありますよね?
 その、縁がぼやけた「さかな」よりも「魚類」という学術用語のほうが好きで、そういう言葉を使うことに快感を感じるのです。

 そうして、水のなかにいる脊椎動物でエラで呼吸し、手足のないもの(例外はいるけど……)を魚類といいます……というような文章が大好きなのです。
 だって、こういう文章なら言葉の意味がわかるんだもの。

 それが高学年になると……。
 もう面白くないのです。
 中学生になる頃には、もうブランコが楽しくなくなってしまうように……。

 絵本ですから、誰かが読み聞かせて面白く感じるように作りました。
 イメージとしては学校司書か先生が教室で40人の生徒の前で読んでやる……ですね。

 ところが、ふたを開けたらある子どもの本屋さんに、なんと二歳の女の子が五回続けて音読させたあげく買って帰った(お母さんが負けたらしいです(笑))といわれ、ええっ? でした。

 そうしたらおととい、一才半の孫にとてもウケた、というかたにお会いしました。このお孫さんも女の子だそうです。

 このシリーズは、だいたい、種を蒔いて芽が出て花が咲いて枯れて種ができて……という流れをシンプルに追っているので、話としては確かにわかりやすいとは思います。

 そうして、チューリップのみそは、種からだと花が咲くまでに五年かかる、ということで、一年生に読んでやって「ですからこのチューリップはみなさんと同い年なんですよ(入学のときに、たいてい小学校にはチューリップが咲いているので)」というと、たいていの一年生は驚き、そのあとチューリップを尊敬する(笑)ようになります。

 でも一才半が?
 「そのあとチューリップをさしては、なんやかんやいってるんだよ~」とおっしゃっておられました。

 確かに女の子は成長が早いけど……早いけど……。

 ということは、もういまの日本では一才半から(もしかしたらもっと前から?)「定義」と「分類」の時代に入っちゃうの?
 それとも、もともとそういうものだったのにいままで気がつかなかっただけなのか?

 確かに……。
 たいていの女の子は一年生の12月には「定義」と「分類」の時代から抜けてしまい、それが面白くなくなってしまうのですが……。

 というわけでお父さんたちにお願いです。
 読んでやって嫌がったらもちろん読むのをやめて欲しいのですが、ふーん、といってきいていたら一才半くらいから科学の本を音読してやってください。

 このシリーズは今年、10冊になる予定です。
 あいにくどの本でも面白い、わけではない(どんなジャンルでもそう)ですが、特に大人用の外国の図鑑も使えます。

 一万円もする図鑑を一歳や二歳の子が楽しむ……とは思ってもらえないのですが、動物や植物の図鑑は一流になればなるほど楽しいのです。
 できるだけ、世界のトップクラスの写真を見せてやってください。

■赤木 かん子:いま大人がこどもにできること(本の探偵)
1984年、子どもの本の探偵としてデビュー。子どもの本や文化の評論、紹介からはじまり、いまは学校図書館の改装からアクティブラーニングの教えかたにいたるまで、子どもたちに必要なことを補填する活動をしている。
高知市に「楽しく学校図書館を応援する会」として学校図書館モデルルームを展開中……。
著書多数。

最終更新:5/7(日) 12:30
ニュースソクラ