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100年以上続く銭湯「X月X日閉店」 ボイラー限界で張り紙/青森・五戸

デーリー東北新聞社 5/7(日) 12:01配信

常連客「寂しくなる」「続けてほしい」

 「X月X日もちまして閉店させて頂きます」―。そう入り口に張り紙を出したのは、青森県五戸町中心部に唯一残る銭湯「松の湯」。老朽化した施設の改修に多額の費用がかかるため、ボイラーなどの設備が使えなくなった時点で100年以上の歴史に幕を下ろすという。「最後の銭湯として頑張ってきたが、限界がきた」と3代目店主の久保田泰寿さん(65)。現時点で、はっきりした日にちが決まった訳ではないが、常連客からは「寂しくなる」「続けてほしい」と、間近に迫る閉店を惜しむ声が上がる。

 明治中期の創業。久保田さんの祖父・申松(さるまつ)さん(故人)が当時、“五戸大工”の棟梁として北海道で「ニシン御殿」を手掛けて財をなした。それを元手に、申松さんの妻きわさん(同)が銭湯を始めた。店の名前は申松さんの名前から取ったもので、2代目で父の壽三郎さん(同)が1968年に現在使っている建物に建て替えている。

 久保田さんが後を継いだのは18年ほど前。かつて町中心部には民間が営む銭湯が4カ所あったが、後継者不足や利用者の減少などで約10年前までに他の3軒がのれんを下ろした。

 松の湯は10年前から赤字経営となっているが、町が設置する公的浴場と同額の入浴料を維持。副業のアパート経営の収入でマイナスを穴埋めしながら店を続けてきた。

 営業時間を短縮するなど経費削減策にも取り組んできたが、ボイラーの老朽化が近年進んで、浴槽や天井の傷みも顕著に。「全部直そうとすれば、2千万円以上かかる。もうできない」と久保田さん。設備の限界をもっての閉店を決めた。

 存続を願う常連客の声はやまない。長年通い続ける太田ひろみさん(79)は「楽しみが無くなるとみんなで困っている」。川守田綾子さん(72)は「初めて来た時に財布を忘れたが、入浴料を貸してくれた。店主の人柄も魅力」と話す。

 公的浴場では65歳以上は150円で入浴できるが、「料金が高くても、歩いて通えるここを使いたい。街中に、お風呂屋さんが1軒もなくなるのは困る」と78歳の女性は訴える。

 久保田さんはボイラーの調子を見ながら、閉店の1カ月前に張り紙の“X”に数字を明記する考え。「まだあと2、3カ月は続けられると思う。ここがなくなることで、街中がもっと寂しくなってしまうのではと心配だ」

 長く親しまれ、地元の人々の汗を流してきた松の湯。役目を終えるカウントダウンは始まっている。

デーリー東北新聞社

最終更新:5/7(日) 12:01

デーリー東北新聞社