ここから本文です

若年性認知症の人ら活躍 三芳の「子ども食堂」で夕食作り笑顔の貢献

埼玉新聞 5/7(日) 10:30配信

 65歳未満で発症する若年性認知症の人の社会参加の促進や家族支援を目指して、埼玉県の三芳町社会福祉協議会は昨年7月から、デイサービス「けやきの家」で若年性認知症に特化した支援を行っている。けやきの家では、家庭の事情などで放課後の居場所がない子どもに無料で食事を提供する「子ども食堂」も運営。若年性認知症の人たちが地域のボランティアと協力して子どもの夕食作りに励み、社会参加と地域貢献を実感できる場となっている。ただ、こうした場所は各地でまだ少ないのが実情だ。県内には約2千人の若年性認知症の人がいると推計されており、居場所づくりが課題になっている。

■平均発症年齢は51歳

 「タマネギが目に染みるね」「このコロッケ少し大きいんじゃない?」。調理場は笑い声が絶えない。この日は子ども食堂用にコロッケ50個とチョコバナナを作った。けやきの家には、県西部に住む58~64歳の男女4人の若年性認知症の人が毎週金曜日に訪れ、子ども食堂用の食事作りを担う。食事後にはテーブルを移動して即席の台を作り、仲間と共に卓球を楽しんだ。

 厚生労働省の推計によると若年性認知症の平均発症年齢は約51歳で、会社などを退職せざるを得ない人がほとんどという。しかし、若年性認知症の人はまだ体力があり、社会の中で何らかの役割を持ちたいと願う人が多い。けやきの家の管理者で社会福祉士の内城(ないじょう)一人さん(43)は「誰かの役に立ちたいという思いを形にしたい」と話す。けやきの家では仕事の対価として謝礼を払い、仕事への実感につなげている。

■「毎週楽しみ」

 けやきの家に通う所沢市の男性(61)は約2年前に若年性認知症と診断された。勤務していた大手メーカーを退職し、アルバイトで警備員の仕事に就いたが、夜間勤務など体力的に厳しかったという。警備員も退職して家にいることが多くなったが、妻がけやきの家の存在を知り、昨年の秋ごろから通うようになった。男性は「毎週金曜日が楽しみ。この仕事で少しでも人の役に立てたら。こういう場があるのはすごくありがたいですね」と充実した表情だった。

 ただ、こうした場所はまだ少ないのが実情だ。40歳以上は介護保険を利用できるものの、若年性認知症の人に特化したサービスは少ない。レクリエーションが中心の高齢者向けデイサービスは、若年性認知症の人が利用しても違和感を抱くことが多い。社会の中で行き場がなく、同じ境遇の人と接する機会も少ないのが現状という。

■県内2事業者のみ

 県地域包括ケア課によると、若年性認知症に特化したデイサービスを実施しているのはけやきの家と、広くデイサービスを提供している「アップネス」(春日部市)の2事業者のみ。いずれも県が若年性認知症の人の社会参加などを支援するため、昨年度に始めたモデル事業だ。

 県は本年度もモデル事業者を募集し、新たに二つの事業者を選定する予定。県内に若年性認知症の人は約2千人いると推計されており、同課は「本人の居場所づくりが重要。仕事を辞めると家にいることが多くなるが、外に出て活動できる場所を増やしていきたい」と話す。

 内城さんも「若年性認知症の人たちが自分の気持ちを分かってもらえる場として、仲間と集える居場所が必要だと思う。社会や地域とつながりながら、やりがいを持って活躍できる場になれば」と話している。

最終更新:5/7(日) 10:30

埼玉新聞