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警察犬の出動件数が過去最多 神奈川県警、認知症などによる行方不明者増受け

カナロコ by 神奈川新聞 5/7(日) 12:03配信

 高齢化に伴い、認知症などによる行方不明者が増える中、捜索活動を手伝う県警警察犬の鼻が頼もしさを増している。2016年の出動件数610件は過去最多で、そのうち事件とは無関係の行方不明者の捜索が8割近くに上る。「警察犬だからこそ、助けられる命がある」と言う県警鑑識課員とともに、きょうも出番に備えている。

 昨年3月28日、雨がぱらつく肌寒い夜だった。

 藤沢市で認知症の90代女性の行方が午後6時半以降、分からなくなった。所轄署からの出動要請を受け、ラブラドルレトリバーのシロとバリーの2頭は鑑識課員2人とともに現場に向かった。

 午前1時25分ごろの捜索開始からわずか10分、自宅から180メートル離れた場所でシロが反応した。担当の鑑識課員を引っ張るようにして向かったのは、立ち入り禁止の鎖が張られた工場の敷地内だった。

 同居している家族の連絡が所轄署にあってから数時間。女性は雨にぬれてうずくまり、肩を骨折した疑いがあった。体温低下が危ぶまれ、一刻を争う緊迫した状況だった。

 「このケースのように、人の予想がつかないような場所で見つかることも少なくない。早期に発見できていなければ最悪の事態も考えられた」。警察犬担当者をまとめる鑑識課の赤坂一彦警部(51)はそう振り返った。

 いま、警察犬の働きがより求められている。

 警察庁の発表によると、認知症や、その疑いで行方不明になったとして全国の警察に届けられたのは15年の1年間で、前年より1425人(13・2%)増の1万2208人。3年連続で1万人台に達し、統計を始めた12年以降、毎年増加している。発見時に病気や事故などにより亡くなっていた人は過去最多の479人、15年中に所在が分からなかった人も150人だ。

 一方で、全国の直轄、嘱託を合わせた警察犬の捜索活動の出動件数は右肩上がりという。2008年からは犯罪捜査の出動件数を上回る状況が続く。

 県警でも警察犬が捜索した行方不明者に占める60歳以上の割合は10年前の07年は26%だったが、16年は75%。ことしの出動件数も前年を上回るペースで推移しているといい、赤坂警部は「(捜索活動では)特に高齢の認知症患者の増加が目立つ」と指摘する。

 必要性が高まっているのを受け、県警は今春、警察犬の担当者を8人から10人に増員。より多く出動できる体制を整えた。

 11年からは日本警察犬協会主催の競技会で8度の優勝経験を誇る指導者、安達俊夫さん(76)=横浜市旭区=を招き、警察犬の能力をより引き出そうと試みている。

 県警が現在、飼育、管理している直轄警察犬はシェパードを中心に15頭。仕事が犯罪捜査から捜索活動に転じていることなどから、警察犬が自発的に動いてにおいを捜し出す訓練も取り入れている。

 指導する安達さんは「本来持っている能力をいかに引き出せるかが警察犬指導の鍵」と話し、赤坂警部は「人命に関わる事案も少なくない。使命感を持って日々の訓練に励みたい」と力を込めた。

最終更新:5/7(日) 12:03

カナロコ by 神奈川新聞