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規模を追いすぎない成長へ 特集・JAL中期計画17-20年度

5/8(月) 8:20配信

Aviation Wire

 「成長というものを誤解していただきたくない。一般的には、規模や売上高を競うものだと思われるが、われわれの目指すものは企業理念の達成であり、世界で一番選ばれ愛される航空会社となること」。4月3日、東京・羽田の格納庫で開いた入社式で、日本航空(JAL/JL、9201)の植木義晴社長は1672人の新入社員を前に、こう訓示した。

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 2010年1月19日に経営破綻したJALは、国土交通省航空局(JCAB)が2012年8月10日に示した文書「日本航空への企業再生への対応について」(いわゆる8.10ペーパー)に基づき、新規の大型投資や新路線開設が、今年3月末まで監視対象になっていた。

 4月28日に発表した2017年3月期通期の連結決算は、売上高が前期(16年3月期)比3.6%減の1兆2889億6700万円、営業利益は18.6%減の1703億3200万円、経常利益は21.1%減の1650億1300万円、純利益は5.9%減の1641億7400万円と減収減益。2016年4月に発生した熊本地震による国内線の減収のほか、エンジンの整備費や人件費の増加が減益要因となった。

 そして同日、2017-20年度の中期経営計画を発表。機材面では、エアバスA350-900型機を国内線から導入するといった記載があったが、“規模や売上高を競う”ものとは異なっていた。8.10ペーパー後、初となる中期計画で、JALはどのような未来像を描いたのだろうか。

◆世界のJALへ

 2012年2月15日に発表した2012-16年度の中期計画で、5年連続で営業利益率10%以上、2016年度末の自己資本比率50%以上とした財務目標は、ともに達成。2017年3月期は営業利益率13.2%、自己資本比率56.2%に達した。

 2017年度からはこうした強固な財務基盤を背景に、世界のマーケットに打って出る。主に日本人が利用する日本の航空会社から、世界各国の利用者が乗る日本の航空会社を目指す。同時に、他の航空会社に先駆けて価値を創造する航空会社を目指す。

 海外市場ではプレゼンスを高め、国内では競合他社や新幹線のような他の交通機関と比較した際に選ばれる航空会社を目指す。こうした中で、自社の強みを生かした新たな収益源を確保していく。

 経営企画本部長の西尾忠男常務執行役員は、「成長と安定性を両立したエアライン」を目指すと説明する。

 2020年度の売上のうち、「コア領域」と位置づける「国際旅客」「国内旅客」「貨物郵便」の3事業は2016年度比1.1倍を目指し、パイロット訓練事業や、4月18日に発表したビジネスジェット事業など、「航空関連事業」「新規領域」を合わせた「新領域」は1.3倍に伸ばす。本業であるフルサービス航空会社(FSC)の事業を成長させるとともに、事業領域を広げていく。

 収益性や安定性については、営業利益率は引き続き10%以上、自己資本比率は60%程度を維持する。成長性について、植木義晴社長は「17年度に支出を集中し、20年以降に効いてくる」として、先行投資が一巡する2018年度以降に増収増益へ転じさせ、2020年度以降の成長にもつなげていく。

 JALグループの総機材数は、2016年度末時点で国際線84機と国内線146機の計230機。2017年度は、国際線機材としてボーイング787-9型機を3機受領予定で、国際線85機と国内線141機の計226機となる予定で、2020年度末時点では国際線92機と国内線139機の計231機を計画している。機材面でも見ても、規模を闇雲に追わない中期計画と言えるだろう。

◆国際線:フルフラット路線拡大

 国際線は北米と東南アジアを結ぶネットワークの強化や、他社との提携を拡大・強化する。また、2020年までに配分が見込まれる羽田の発着枠活用も明記した。

 生産量は、2016年度の座席供給量を示すASK(有効座席キロ)である506億2100万席キロに対し、2017年度は2016年度比3%増、2020年度は国際線単体で同23%増、国内線を合わせた全体で同15%増を目指す。

 ロードファクター(座席利用率)は2016年度実績の80.3%に対して2017年度見通しは80.7%、2020年度も80%台を目指す。植木社長は「マイルの特典航空券など無償分も合わせると85%前後になり、これ以上増やすのは難しい」と説明した。

 また、2016年度は44%だった海外での販売比率を、2020年度は50%に高める。

 サービス面では、ビジネスクラスにフルフラットシートを採用した機材を、東南アジア路線でも順次拡大。国内と海外の空港ラウンジの刷新を進めていく。

◆国内線;那覇にもDPラウンジ

 国内線は、2019年度にエアバスA350-900型機を導入。地方路線にはリージョナルジェット機のエンブラエル190(E190)や、仏ATR製ターボプロップ機のATR42などを投入し、快適性を向上させる。

 生産量は2016年度のASKである354億2300万席キロに対し、2017年度は2016年度比1%増、2020年度は国内線単体で同5%増、国際線を合わせた全体で同15%増を目指す。ロードファクターは2016年度実績の69.3%に対して2017年度見通しも69.3%、2020年度は70%程度を目指す。

 空港のラウンジについては、マイレージサービス「JALマイレージバンク(JMB)」の最上位であるダイヤモンド会員と、上位会員制度「JALグローバルクラブ(JGC)」のプレミア会員、国内線ファーストクラスの乗客が利用できる最上級の「ダイヤモンド・プレミアラウンジ」を5空港に展開するとしている。すでに羽田と新千歳、伊丹、福岡の4空港に展開していることから、残る幹線空港の那覇が有力とみられる。

◆植木社長「長く続けてよいものだと思わない」

 4月1日付の役員人事で、植木社長の続投が決まった。この日に羽田空港で開かれた羽田-ニューヨーク線就航式典で、後継者について植木社長は、「社長から見れば、どの役員もなかなか自分のところまで来てくれない。これは私が一番優秀ということではなく、社長にならないと持てない目線がある。私もそうだった。これからの成長を期待した中で、どこかでしっかり見定めて社長を譲っていきたい」と、複雑な胸の内を明かした。

 28日の中期計画発表の場では、「社長というものは、いつまでも長く続けてよいものだと正直思っていない。若い人に譲る時期が当然来ると思う」(植木社長)と述べ、中期計画の期間中に後進に道を譲る可能性を示唆した。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:5/8(月) 8:33
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