ここから本文です

“クラウド後進国、日本”は、変われるか ガートナーの見方は

ITmedia エンタープライズ 5/8(月) 9:22配信

 「日本のクラウドコンピューティングは“本格利用前夜”を迎えた」

 こう語るのは、ガートナージャパン ガートナーリサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀(またが)忠明氏だ。同社が2017年4月26~28日に都内で開催した「ガートナーITインフラストラクチャ&データセンターサミット2017」で、同氏が日本のクラウド市場動向をテーマに行った講演のひとコマである。

【画像】図2:IaaS市場におけるユーザー企業の調査結果(出典:ガートナージャパンの資料)

 本稿では、亦賀氏の講演から、筆者が興味深く感じた内容を幾つか取り上げたい。

 まず、図1は、注目される技術の動向を示すガートナー独自の「ハイプサイクル」におけるクラウドの現状を表したものだ。この図によると、日本でのクラウドはここ数年「幻滅期」にあったが、いよいよ「普及活動期」へと移行する節目を迎えた。この節目が、冒頭の発言にある「本格利用前夜」を迎えたことを意味している。

 なぜ、本格利用の「前夜」なのか。その根拠となるのが「16.9%」という数字だ。これは、ガートナーが2017年1月に調査した日本企業におけるクラウドの採用率である。ちなみにクラウド形態別の採用率では、SaaSが31.7%、PaaSが18.3%、IaaSが16.1%、ホステッドプライベートが16.3%、プライベートが24.7%、ハイブリッドが14.4%となっている。

 亦賀氏はこのクラウド採用率について、「全体として着実に増加しているが、実はIaaSが2106年から、横ばいで推移している。これは、企業が既存システムをクラウドへ移行するのに、時間がかかっているのではないかと推察される」との見方を示した。つまり、IaaSの動向が今後のクラウド採用率の伸長、さらには「本格利用」に向けて大きなカギを握っているというのが、同氏の見立てだ。

 では、企業はどのようなIaaSを選ぶべきなのか。同氏が、「IaaS選定時の重要項目トップ10」として挙げたのが図2である。ただ、実は「プロバイダー自身がクラウドの本質を理解していること」が、ここ5年連続してトップのままだ。これについて同氏は、「IaaSをめぐる最大の課題が払拭(ふっしょく)されていないということ。プロバイダーは深刻に受け止めるべきだ」と警鐘を鳴らした。

 図2の右側には、日本における主要IaaSの利用状況も示されている。ただ、このグラフについては「個々のIaaSの利用率における勢いを示したものとして捉えていただきたい」(亦賀氏)としている。

●日本のクラウドIaaS「マジック・クアドラント」初公開

 さて今回、筆者が亦賀氏の講演から最も取り上げたかったのが、日本におけるクラウドIaaSの「マジック・クアドラント」の最新状況を示した図3である。この図は、日本におけるIaaSベンダーの勢力図をひと目で分かるように示したものである。ガートナーが日本のIaaSベンダーを対象にしたマジック・クアドラントを公開するのは、これが初めてだ。主要な評価項目は図の右側に示されている。

 個々のベンダーのポジションが興味深いところである。加えて、2016年8月15日掲載の本コラム「クラウドサービス市場の覇者は? 最新勢力図を検証する」において、世界におけるクラウドIaaSのマジック・クアドラント(2016年版)を掲載しているので、ぜひとも見比べてみていただきたい。また、同コラムでは、マジック・クラドラントの見方についても詳しく説明しているので参考にしていただきたい。

 さらに、亦賀氏の講演からもう1つ、「クラウドに関する『今でもよくある誤解』と推奨」と題した図4を取り上げておきたい。「誤解」「リアリティ」「アクション」の3つの観点から、同氏ならではの洞察と分析によって、クラウドに関する誤解を解くポイントを記している。例えば、4番目の「クラウドにすれば安くなる」との誤解は、「同じクラウドでも価格は大きく変わる」のがリアリティなので、「価格モデルを理解する」ためのアクションを起こすべし、といった具合だ。

 亦賀氏のこうした洞察と分析については、2016年5月2日掲載の本コラム「業務システムのクラウド化、成功のカギは『松・竹・梅』の見極めにあり」、2015年6月1日掲載の本コラム「あらためて問う『クラウドの本質的なメリット』」でも解説しているので参照していただきたい。

 IT業界ではこのところ、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)をめぐる話題がにぎやかだが、クラウドはこれらを支える存在としてもますます大きな役割を担うことになる。その意味では、まさにガートナーが言うように「本格利用前夜」を迎えたところである。本格利用に向けて、クラウドがどのようなビジネスイノベーションをもたらすか、引き続き注目していきたい。

最終更新:5/8(月) 9:22

ITmedia エンタープライズ