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『バイオハザード:ヴェンデッタ』スペシャル鼎談 制作陣が映画を語り合う!

5/8(月) 15:42配信

ファミ通.com

文・取材:ライター メスカブト森田、撮影:カメラマン 小森大輔

●『バイオハザード』シリーズ最新作はフルCG長編映画!
 2017年5月27日公開予定の『バイオハザード:ヴェンデッタ』は、人気サバイバルホラー『バイオハザード』(以下、『バイオ』)シリーズをモチーフにしたフルCG長編映画の第3弾。ゲームでもおなじみのレオンに、フルCG映画では初登場となるクリスやレベッカが加わり、世界規模でのバイオテロとの戦いが展開していく。本記事では、その劇場公開に先駆けて行われた制作陣3人によるスペシャル鼎談の模様をお届け。本作に込められた思いや意気込み、次回作へ意欲、裏話などを忌憚なく語っていただいた。

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【写真左】
エグゼクティブプロデューサー
清水崇氏(文中は清水)
(代表作:『呪怨』シリーズ、『魔女の宅急便』など)

【写真中央】
監督
辻本貴則氏(文中は辻本。“辻”の字は一しんにょう)
(代表作:『THE NEXT GENERATION パトレイバー』シリーズ、『High & Low Season2』など)

【写真右】
脚本
深見 真氏(文中は深見)
(代表作:『PSYCHO-PASS サイコパス』、『ゆるゆりさん☆ハイ!』など)


●恐怖演出のために一度ひっくり返った物語
――まずは、お三方が本作に関わることになった経緯をお聞かせください。

辻本 自分が参加したのが最後で、最初は清水さんです。ということで、その経緯を、言えることと言えないこ とを全部含めてどうぞ。

清水 カプコンのプロデューサー(本作の原作監修を務める小林裕幸氏)と共通の知り合いがいまして、彼から「カプコンで小林さんと話して、こういう企画があるんだけど興味はないか?」と話をいただきました。で、原点回帰のホラー描写に関するアドバイスを含め、脚本のドラマ部分の補強など、プロデューサーとして携わることになりました。

――『バイオ』のフルCG映画の1、2作目を見た印象はいかがでしたか?

清水 アクションはもちろんですけど、銃器関係にこだわりを感じたんですよね。『バイオ』ってどうしてもゲームのイメージとして、まず怖いものだと思っていたので、「あ、“こっち”にシフトしているんだ」と思いました。そこはそこでファンもいますし、大切な要素ですが、自分としては「怖さやドラマをもっと見たいな」という思いもあったんです。なので、プロデューサーから「原点回帰で怖くしたい」という意見をいただいたとき、そういうことであれば自分が参加する意義があるかもしれないと思いました。

深見 清水さんのつぎに参加したのが僕で、マーザの方たち(CG製作を務めるマーザ・アニメーションプラネット)が自分が前に手掛けていたアニメを見てくださって、たぶんサスペンスやアクションに強い脚本を書けるんじゃないかという感じで声をかけていただきました。あと、僕はゲームが好きで『バイオハザード』シリーズはナンバリングタイトルは全部プレイしてますし、『アンブレラ・クロニクルズ』などの外伝系も一応プレイしていましたので、ぜひにとお引受けしました。

辻本 深見さんがこの中でいちばん『バイオ』に詳しいんですよ。

深見 いまも『バイオ7』を遊んでいます。ちょうどこのお話をいただいたときは『リべレーションズ2』をやっていました。そのあとに参加されたのが、辻本監督ですよね。

辻本 小林プロデューサーやマーザさんは、今回の『バイオ』は原点回帰と言いつつもアクション要素も多くなるだろうと、アクション系に強い監督を探されていました。そこでちょうど深見さんと僕は昔からの知り合いで、深見さんが僕の名前を出してくれてオファーがあったという形です。

清水 映画が形になっていって、自分にはできないアクションを目の当たりにして「すげえな」と思いましたね。原点回帰と言っていたわりに、後半はけっこうアクションだなとも(笑)。

辻本 いつもの『バイオ』というか(笑)。

清水 脚本の時点で、その臭いはあったんです(笑)。ただ、入り口はじんわりと怖くしたいと。

辻本 そう、そうです。最終的には、いつも皆さんが見られている映像化された『バイオ』っぽい感じにはなったのかなという感じですけどね。

清水 途中で、「怖さはもういいの? 俺の出番はもうないのかな?」くらいに感じたことがあったんで(笑)。「怖くするならもっとこうしたら」と、話をひっくり返すようなことも言ったりしたんですけど、そこはこうしたいという構想が第一段階ですでにあった。なので、僕も辻本監督と同じく実写畑の人間ですけど、CGのキャラクターとはいえ、心情やドラマの部分でどう役に立てるか、という方向にシフトしていったんです。

辻本 そうか、原点回帰やホラー演出で、「もっとパーソナルな部分」って言ってたのは、それだったんですね。

深見 そうです、1回ひっくり返ろうとして(笑)。

清水 1回ひっくり返して、けっきょく元に戻ったみたいな(笑)。

辻本 その時期、僕は入りたてだったのでおとなしくしてたんです。こいつはなんか違うなって弾かれたので、周りを見ていた時期ですね。清水さんはこう言ってるんだ、深見さんはこういう感じなんだっていうのを見てました。

清水 僕も監督としての立場だったら違っていたかもしれません。実写畑から、CGでの演出に挑む不安や、人気シリーズに新参で入る辻本監督の気持ちはわかります。あんなに好き勝手は言えなかったかも(笑)。「レオンの幼少期を出そう」とか、「大都市が出ないまま終わる話でもいいんじゃないか」とか。

――1月に発売された『バイオ7』に近い話ですね。

辻本 『バイオ7』といっしょとは言わないですけど、それくらいパーソナルな、半径20メートルくらいの物語でもいいんじゃないかという話もあったんです。たしかに、それは清水監督っぽいなとは思っていたんですけど……。

清水 周囲から「えっ!?」っていう雰囲気を感じたんです(笑)。

辻本 僕は出してないですよ(笑)。

清水 それで、マーザさんから諭されて……。

深見 クリスとレオンでいきたい、実在の都市をパニックに陥れたいという構想が、自分に話が来たときにはすでにマーザさんにはありましたね。

辻本 そうだったんですね。

深見 いま明かされる事実(笑)。

辻本 清水さんが提案された方向だったら、ぜんぜん違う作品になってましたね。

清水 でもアクションもあっての『バイオ』だというのは、今回関わってみてよくわかりました。敵との対決に ドラマを加えられた気はしているので、そこは「辻本監督、ありがとう」という感じです

辻本 脚本打ち合わせで毎日会っていたわけじゃないですけど、ドラマはちゃんとしないとマズイよねという話は初期の段階から共通認識としてあったので、そっちの方向に持っていけたなって気はしましたよね。

清水 アクションは僕の想像もつかないすごいことをやってくれるだろうという期待があったので、心配はして いませんでした。

辻本 それは、脚本にすっごい描写が書いてあるんですよ。深見さんはもともと小説家だし、小説の中でアクション描写を延々書いてなかなか話が進まないみたいな……怒られるでしょうけど、そのノリで書かれてるから、やりたいことがものすごく詰まっている。僕は実写映画をやってるといっても、そこまで大作をやっていなかったんですが、ふつうは大作じゃないとできないようなことが書いてあるんです。

深見 せっかくの『バイオ』の脚本だったので、とりあえずたくさん書いておこうと思って。そうしたら、書きすぎちゃって(笑)。

清水 それで、がっつり削らされて(笑)。

深見 監督が自分の脚本の初稿を読んだときに「このままやったら2時間半になります」と(笑)。

辻本 深見さんの脚本の書式は、僕たちがいつも使ってるいつものフォーマットじゃないんですよ。なんか怪しいなと思って、いつものフォーマットにしてみたんです。

清水 そしたら2時間半(笑)。

辻本 「これはヤバい、騙されてる!」と思って(笑)。それで、ふつうはト書きに書かないことなども含めていろいろと整理していきました。もちろん、ちゃんとすべてのキャラクターをフォローしてくれているから、いちばん正しい脚本だと思うんですけどね。


●それぞれが抱く『バイオ』のイメージ
――『バイオ』といえば、ホラーだったり、アクションだったり、捉えかたは人それぞれだと思いますが、皆さんが抱いているイメージを教えてください。

深見 もしかしたら少数派化もしれないですけど、僕は『バイオ』は4作目からのほうが好きなんですよ。『バイオ』が好きな人って初代がいちばんという人が多いですけど、自分は『バイオ4』~『6』が好きです。

辻本 じゃあ、今回の『バイオハザード:ヴェンデッタ』はまさにドンピシャだった?

深見 『バイオ6』にかなり近い印象ですね。『バイオ6』は“戦争映画みたいな『バイオ』”とよく言われるんですけど、オープニングが『ブラックホーク・ダウン』みたいな『バイオ5』も好きだし、『バイオ6』の市街戦みたいな部分も好きです。

辻本 『バイオ』っていろいろなんでしょうね。『バイオ7』ではぜんぜん違う方向に振りきっちゃたし。

清水 本作では、ゲームのようなインタラクティブ性はないけれど、同じ世界観ではあるので、映画ならでは醍醐味が必要です。この映画を観て、よりゲームも楽しんでもらえるようになるとうれしいですね。その意味もあって“まだ誰も手を付けていない背景を”と考えたりしたんですが(笑)。

辻本 レオンの幼少期を出そうとしたりね。

清水 ちょっと無謀過ぎたみたい(笑)。ただ、『バイオ』には歴史があって、シリーズが続いていくに従って人気キャラクター、レギュラーキャラクターが出てきて、今回はCG映画でどういうオリジナルキャラクターを出すかという問題もありました。やたらめったら人気のレギュラーキャラクターを殺せないという状況で、どういう怖さを入れ込むか、ドラマを盛り込むかというのは、最初は手探りでしたね。

辻本 僕は『バイオ』は初代と『バイオ2』をプレイして、『バイオ3』をやったのかどうかというくらいですね。あ、初代『バイオ』はちゃんとクリアーしましたよ!(自信ありげに)

一同 (笑)。

辻本 『バイオ2』が自分には難しくて、途中で1回挫折して以降、あまり記憶にないんです。どちらかというとミラ・ジョボヴィッチ主演の実写映画版の印象が強いんですよ。僕の印象としてはそっちが強いから、最初に話をいただいたときに、「ゲームも実写映画もひっくるめた内容にできればいいな」って思いました。もちろん神谷誠さんが監督された1、2作目のCG作品も見ていたので、あのミリタリー描写に俺は勝てないから、そこで勝負しちゃダメだなってずっと思ってましたね 。

――実写版のほうはゲームとはパラレルな世界で、CG映画はゲームと地続きの世界ということになっていますが、そのあたりで気をつけたことはありますか?

深見 気をつけるところは、だいたい脚本を書いている段階でカプコン側からの監修が入ったので安心していましたね。

清水 僕は隙間を縫っては「レオンが飲んだくれてたらダメですかね?」とか(笑)。

一同 (笑)。

清水 強いのはわかったけど、ダメなレオンも見ないとキュンとしないよ、と。それは人気キャラクターの、より人間的な面を掘り下げたいってこともあるし、シリーズの新参者であるからこそ言える強みでもあるんですけど。

――およそ20年もバイオテロと戦ってきたレオンが本作でPTSD(心的外傷後ストレス障害)みたいな状況に陥っていて「そうきたか」と思いましたが、そういった経緯があったんですね。

清水 PTSDとまではいきませんけどね(笑)。まあ、人間味がないとドラマも怖さもカッコよさにも限界がある、悲哀みたいなものもないと。ずっと追いかけてくれているファンの方たちからすると、「なんで急に?」と思うかもしれませんけどね。

深見 急にというよりは『バイオ6』の対になるイメージなんです。『バイオ6』だとクリスが落ち込んでいて、レオンが元気なので、本作だと反対に、クリスが元気でレオンが落ち込んでいるという。

――『バイオ6』ではクリス対レオンのようなシーンもありましたが、今回は口ゲンカもしつつも、ピンチのときには協力していましたね。

深見 監督はバディ(相棒)ものを意識されてましたよね。

辻本 そうですね。クリスやレオンの動きを演じている役者さんが芝居をしている姿を見ていると、とってもバディ感が出ているんですよ。彼らが撮影以外でも仲よくりしてるのを見てそれもいいなと。それで、ふたりの佇まいとかを意識し始めましたし、バトルになるととくにふたりのバランスを考えましたね。

清水 『バイオ6』の関係性と対になっているとおっしゃっていたので、僕は「飲んだくれレオンの話をしつつ、レベッカがふたりを叱咤激励して制する……というのもダメですか? ダメですか?」って何度も主張したりして(笑)。

深見 タフガイふたりに女の子がひとり入るとバランスがいいですもんね。


●『バイオ』とホラー映画の相性は最悪!?
――『バイオ』はゲームからいろいろな方向へ展開していったのですが、サバイバルホラーというゲームのジャンルと映画との相性はいかがですか?

深見 相性はよくないですよね。ホラーは清水さんの専門分野ですけど……。

清水 僕的には、じつはそうでもないんですけど(笑)。

深見 ホラーって、当たり前ですけど主人公が弱いほうが怖いんですよね。『バイオ』はカッコよくて強いという。それがとくに顕著になったのは『バイオ4』からだと思うんですけど、レオンは強い、クリスも強い、これで怖くするのは相当難しい。

清水 難しいですよ。レギュラーメンバーだけを立たせて、怖くしようとするとすごく難しくて、それで僕もあの手この手で、少年時代を作ろうとしたり弱みを膨らませようとしたりして……ダメって言われるだろうとは思っていたんですけど(笑)。

――ゲームが本筋であるから、あまりムチャもできないですよね。

辻本 そうなんですよ。今後どう展開するかわかりませんから。

清水 言ってみればカプコンさんの『バイオ』の世界の、大事な俳優さんですからね。

辻本 それをお借りしているだけなんでね。

清水 なので、本作の脇役のキャラクターを生きていたことにできないかとか、いろいろなことを考えました(笑)。

深見 法の網をかいくぐるように、なんとか合法的に怖くしていく(笑)。

清水 いまやアクションがあってこその『バイオ』の世界だと思うんで、そこは今回すごいですね。関わっている僕が言うのも何ですけど、肉弾戦、銃撃戦含め。

――今回はレオンがバイクの曲乗りもやってましたね。

深見 バイクの曲乗りは監督のこだわりなので(笑)。

辻本 そう、バイクを出してくれってお願いしたんですよ。細かい演出は完全に僕の趣味です。

――あそこは完全にケレン味の方向に振られていましたね。

辻本 振りましたね。

清水 気持ちいいですよね。

辻本 それを見た川井さん(本作の音楽を担当する川井憲次氏)も、いきなりギターサウンドにしてましたからね(笑)。あの曲乗りはもともと、バイクを運転してると銃が抜けないからどうすると考えたときに、一瞬だけハンドルを足で保持して銃を持たせようと考えたんです。じゃあブレーキをかけるときはどうするんだと考えたときに、もうブレーキも足でやっちゃえと(笑)。

清水 あれはドゥカティ(本作とコラボしているイタリアのバイクメーカー)も喜びますよ。あのチェイスシーンだけじゃなくて、最後まで出てきますから。ドゥカティなら俺もできるのかなと思っちゃいますよね。

辻本 ゾンビが出たらぜひお願いします(笑)。

――本作はゲームの要素もいろいろ入っているなと思ったんですけど、冒頭の洋館も初代『バイオ』を彷彿とさせられましたね。

深見 洋館はもともと構想にあって、せっかく製作総指揮で清水さんが入っているので、ここだけはなんとか超怖くしようとしました。

清水 最初の洋館の話が出たときに、ああ場所から戻すんだと(笑)。まあ、別の場所だったんですけど、あそこは結果的に、怖い入り口を作れたんじゃないかと思います。

――食堂の構図は初代『バイオ』で最初に入る部屋にすごく似ていますね。

深見 そういうネタは随所にあります。

辻本 観客にそういう気分に浸ってもらうというのは、ちゃんとやったほうがいいなと。

清水 そこは期待して観ていただきたいですね。

辻本 見ていて『バイオ』の設定とは違うことはすぐにわかる。ただ「これは初代『バイオ』のアレだ」みたいな楽しみかたはできるのかなと思います。

――屋敷に潜入したクリスの仲間たちが食堂から出るシーンは実写映画版を思い出しました。

辻本 あれはその通りですね。あそこは最初、深見さんの脚本では違う展開だったんですよね。

深見 壁からのこぎりが出て、全員足を切られて、倒れてたところに油が降ってきて、火をつけられる。

一同 (爆笑)。

深見 CGじゃ無理がある。

辻本 CGで表現するのにたいへんなことが3つ、4つ重なってて、どれかを削ろうと考えた中で、僕にとって印象が強く残っている『バイオ』は実写映画版だから、あそこからもオマージュがあってもいいなと思って。あの実写版の人体がバラバラに切断される仕掛けって、けっこう荒唐無稽ではあるんですけど、もともと壁からのこぎりが出るようなト書きだったし、まぁやってもいいかと(笑)。いまの状態になるのもいいかなと思って、CG的にも負担が少ないということで、やらせていただきました。


●歩いても走ってもオーケー! ゾンビの魅力とは?
――『バイオ』といえばゾンビだと思いますが、皆さんの考えるゾンビの魅力とは何でしょうか?

深見 自分にとって『バイオ』のゾンビは特別で、すごいと思うのが“B.O.W.(バイオ・オーガニック・ウェポン:生物兵器)”という部分ですね。『バイオ』のゾンビって出自がはっきりしてるんですよ。たとえば、謎の隕石とか、原因不明とかではなく、はっきりと人災なんです。そこが好きで、やろうと思えば『バイオ』の世界で海外ドラマの『24』のようなこともできる。当然、そこが嫌だという人もいると思いますけどね。

清水 それがあるからシリーズもいろいろ広がりを持てる。

辻本 だからこそ、話もちょっとアクション寄りになっていくんでしょうね。

深見 こういう、はっきりと誰かが作ったとわかるゾンビものって少ないと思うんですよね。

辻本 そういう意味では特殊なのかもしれないなあ。

――ちなみに、ゾンビ作品には大分して歩くゾンビと走るゾンビがいますけど、どちち派だとかはあったりしますか?

辻本 まずそこで線引かれますよね(笑)。

深見 どっちもいいですね。『ワールド・ウォーZ』という作品がありますが、あれは原作小説が超おもしろかった。そして映画版が出て原作とはだいぶ違う内容になったけど、これはこれでおもしろいな、走るゾンビいいなと思いました。でもドラマの『ウォーキング・デッド』を見ると歩いているゾンビもいいなあと。

清水 僕は走るゾンビも歩くゾンビも、どちらの映画もあっていいと思うし、楽しめるんですけど、やっぱり世代というか、(ジョージ・A・)ロメロの『ゾンビ』を最初に見てしまったので、ゾンビ発生の原因がはっきりしないのが好きなんですよね。『ゾンビ』で見た夢遊病患者的な動きが怖くてトラウマになったので、“キョンシー”もそうですけど、死体だからだんだん死後硬直が始まってきてカクカクとゆっくり動いてと、いまは大人だから理屈をつけてますけど、初めて見たときは何か感じたんですよね。ヤバいことを考える人がいるなあって。あれってアジア圏とか亜熱帯の地域だと、死体がすぐ腐っちゃうしどうなっちゃうんだろうと、いろいろな想像をかきたてられるんですけど、日本だと幽霊のほうが先じゃないですか。むしろ器である肉体は置いておいて魂だけ独り歩きする。ゾンビは器だけが残っていて中身がなくなった状態で動くという、そのまったく逆の発想がおもしろくて。それを融合させたりしても、いろいろなものが作れるし……作れると言っちゃうと作れってなるけど(小声)……どっちもおもしろいですね。

辻本 僕は、なんかゾンビが世間的に盛り上がってるなというところから入ったから、走るゾンビは肯定派なんですよ。“もともとあったものがこのようにアレンジされた”というのはけっこう好きなんです。『エイリアン』は最初は1体だったのに、『エイリアン2』になると大勢出てきて「いっぱい、いるんだ!」と思ったり(笑)。

清水 アクション映画になりましたからね。

辻本 そうそう。ゾンビもそうなんですけど、歩いていたのに「うわ、走った!」ってなって、その驚きの怖さがあるじゃないですか。うちのルールでは走らなかったのに「何、走るの?」って(笑)。そのアレンジやプロセスを含めて好きだから、今回で『バイオ』のフルCG映画は3作目ですが、そのアレンジを楽しめる部分がある。そういう意味では『バイオ』という作品に僕は途中から参加させてもらいましたけど、逆によかったなと思います。


――『ヴェンデッタ』を作るうえで『バイオ』以外に影響を受けた作品などはありますか?

辻本 僕が映画を撮るうえでの信条でもあるのですが、お客さんに満足して帰ってほしくて、(ジェームズ・)キャメロンの『ターミネーター』のように、これでもかと要素を詰め込んでいます。『ターミネーター』は、もう終わると思っても、延々ターミネーターが追いかけてくる。ああいうスピリットは残さないとダメだなと思っています。

清水 初めて見たときはすごかったですからね。「まだくるのかよ! 最後はコマ撮りになってもくるのかよ!!」って(笑)。

辻本 あのスピリットを本作にも出している感じですね。それに冒頭のホラー要素が強いシーンは清水さんに直接指示を受けたわけではなく、すでに脚本にあって、せっかく清水さんにも入ってもらってるからこういう演出にしようと……そういう意味では清水作品を参考にしています(満面の笑みを浮かべながら)。

清水 言わされてる感がすごい(笑)。

辻本 いやいやいや、キャメロンの前に言えばよかったですね(笑)。なんとなく、そこを期待されるファンもいるだろうし、こっちもふだんはそんなにホラーは撮らないですけど「俺だって、ちゃんとできるさ」みたいなところもあるから(笑)。それをちゃんと清水さんに見てもらおうというのもあって、意識して撮りました。

――洋館の食堂のシーンは怖かったですね。

辻本 そこは昔やった仕事で蓄積されたノウハウを使って、いつかやろうと思っていたシーンなんですよね。マントルピースの中にこっそりとゾンビを隠して、心霊写真みたいに初見では気づかないという恐怖演出。最初は気づかれなくてもいいやと思ってたんですけど、次第にやっぱりみんなに知ってほしいなと思って(笑)。

清水 音つけちゃってましたからね(笑)。

辻本 やっぱり気づいて欲しいなと思って、最後は「ヴォエ」って声まで入れちゃった(笑)。

清水 やりたくなるときはありますね。ダリオ・アルジェントもやってますしね(『サスペリア』のワンシーン)。僕も『呪怨2』のときにわかるようにやったら、宣伝部がわざとやってるって気づいてなくて電話してきたんですよ。「監督、すごいの見つけちゃったんですよ! 幽霊映ってます!」って(笑)。

――登場人物が海外ドラマの『ブレイキング・バッド』について話すシーンがありますけど、どなたかが思い入れのある作品だったりするんですか?

辻本 『ブレイキング・バッド』は僕がハマりました。海外ドラマはあまり最後まで見ることはないですけど『ブレイキング・バッド』は最後までちゃんと見ましたね。完結まで見た自分にすごいって感動したのと、そこまで飽きさせずに見せてくれたドラマもすごいなって。

――それで作中に名前を出したと。

辻本 そうですね。もともとは違う作品だったんです。

深見 そのシーンに出てくる人物が打ち切りになったドラマのマニアという設定があったんですよ。「俺のことは悪くいうのはいいけど、あのドラマの悪口はやめてくれ!」っていうくだらない話をしていたんですけど、やっぱり打ち切り作品の話をするのはよくないんじゃないかということで。

辻本 おもしろい作品を褒めるような方向だったら大丈夫だろうと考えて、ソニーさんから出ているタイトルで調べたら『ブレイキング・バッド』があって、「あ、これ俺の好きなやつじゃん!」ってソニーさんに確認してもらったらOKが出たという流れです。

――あのシーンは楽しいですね。『レザボア・ドッグス』で登場人物がマドンナの『ライク・ア・ヴァージン』の話をする場面を連想しました。

深見 あそこは、ほかにもたくさん小ネタがあったんですよ。ある人物が本を読んでいて、それも実在の本だったけど、途中で変えました。権利関係が危ないかもしれないということで(笑)。

清水 深見さん、けっこう描き込んでいましたよね。

深見 あそこに出てくる面々は“シルバーダガー”というんですけど、彼らの中身がわかるシーンはそこしかないんですよ。あとは断片的に推測してもらうしかないので、あそこで個性を出すためにはくだらないことをたくさん話させるしかない。

辻本 そこは(クエンティン・)タランティーノの手法に近いものがあるかもしれないですね。しゃべり倒してキャラクターを見せる。

深見 だけど、本物を出すのは危ないっていう(笑)。


●フルCG映画第4弾では、ハトが飛ぶ……かも!?
――気が早い話ですけど、もしフルCG映画の第4弾の製作が決まって、皆さんが関わることになったら、入れてみたい要素などはありますか?

辻本 次回作の話をした瞬間に、それが実現しなくなるっていうジンクス……ありませんか?

清水 (笑)。何度もその目に遭ってます。

辻本 同じく。10年後とかにその記事を自分で見ると……。

清水 ツラいんですよ。だいたいプロデューサーが言うじゃないですか「つぎも頼む!」って。

辻本 そうそう。で、つぎの時は監督が変わっていたりするんですよね。まあ、いいや。深見さんどうぞ。

深見 じゃあ、二丁拳銃とハトが飛ぶシーンを。

――ジョン・ウーじゃないですか!(笑)

辻本 なんで、時代を逆行するの(笑)。せっかく我慢してたのに。

深見 二丁拳銃も今更感ありますけどね。

辻本 二丁拳銃がやりたいってことがバレないように、ちゃんと必要に迫られた感じで二丁拳銃を出したいよね。

深見 まだはっきり気持ちが切り代わってないから、恥ずかしながらそんなものしか出てこない(笑)。

清水 そうだ、次回はクリスとレオンの顔が入れ替わればいいんですよ!

――ジョン・ウーじゃないですか!!(笑) ……それはともかく、本作のラストに意味深なショットが挿入されていましたね。

辻本 復讐ものには“復讐の連鎖”という永遠のテーマがあるじないですか。そこをちゃんとやりたいなと思って挿入しました。

清水 あのショットの後、バンとタイトルが出ますからね。

辻本 まだ終わっていないよ、むしろこれからだよというのと……次回作をやりたいな、ということです(笑)。


――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

深見 いちゲームファンとしてレオン、クリス、レベッカを動かせるという喜びを噛みしめつつ、アクション映画として楽しめるようなシナリオを心掛けました。楽しんで見ていただけると幸いです。

辻本 映画ファンだけでなく、ゲームファンにも楽しめる造りにしたつもりです。ゲームキャラクターがこんなに大活躍するんだ、という場面が作品の随所に出てますので、ぜひお楽しみください。

清水 僕はフルCGの長編映画は今回が初めてで、レオンたちの感情表現をどうするかというのが懸念だった点ですけど、思いのほか表情豊かに立ち回ってくれている人物たちを見てびっくりしました。そこは辻本監督の力もあるし、CGを作ってくれたクリエイターの方たちのおかげですね。そのおかげで、怖くもなり、カッコよくもなっているし、悲哀のあるドラマができあがりました。前2作を見ていない方も見られる、怖がって楽しんで、そして大満足で帰れる映画になっていると思います。


●カプコン小林氏からコメントが到着!
 僕は原作監修ということで、映画にどのキャラクターを出すか、監督やそのほかのスタッフを誰にするか、という骨組の部分から関わらせていただきました。本作の製作陣は本当に贅沢な布陣で、とくに清水さんは僕が『呪怨』が好きだったこともあり、いっしょに仕事ができたのはうれしかったです。「レオンの幼少期を出したい」という要望は、ゲームが本編となる『バイオ』としては少し問題があったために渋々却下させてもらいましたが(笑)。
 本作はホラー部分には清水さんらしさが出ていて、辻本さんの得意なアクションも豊富で、おふたりのいいところがうまく入った作品になっています。それに、メインの3人を含めて『バイオ』の世界観をうまく演出していただいていますし、深見さんに『バイオ』ファンならより楽しめる細かい設定も盛り込んでもらえました。『バイオ』を知らない方でも楽しめる映画になっているので、より多くの人に見ていただけるとうれしいです!

最終更新:5/8(月) 15:42
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