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機械学習による予兆診断が生む価値、日立に聞く

5/8(月) 12:20配信

スマートジャパン

■機械学習を活用した予兆診断システム

 IoT(モノのインターネット)の普及により、さまざまなモノやセンサーがつながり、得られたデータを用いて新たな価値を生み出そうとする動きが増えている。一方で、どのようにデータを活用したらいいか分からないという声を多く聞く。

【HiPAMPSでは設備の状態を色で一覧画面に表示】

 そこで日立製作所が、IoT導入効果の最大化に向けて提供するのがIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」である。Lumadaの1つで、同社子会社の日立パワーソリューションズが注力するのは予兆診断システム「HiPAMPS(ハイパンプス)」だ。

 HiPAMPSでは産業用設備にセンサーを搭載し、センサーから得られた状態データを自動で収集する。収集したデータの変化を機械学習を用いて早期に検出することで、予想外の停止による損失を回避するとともに、保守管理の手間やコスト削減に貢献するという。

 日立パワーソリューションズの予兆ビジネス推進センタでセンタ長を務める塩原伸一氏によると、HiPAMPSはこれまで同社が培ったデータマイニング技術と保守サービスのノウハウを組み合わせ、産業用設備に応用した。

 データマイニング技術は、日立製作所の横浜研究所で開発した診断エンジンを活用。センサーデータを“ただ見る”のではなく、機械学習により設備の品質を数値化する。塩原氏は「しきい値を設けてアラートを出すだけでなく、センサーデータを複合的に判断して異常があるかを判定している」と語る。

 保守サービスのノウハウは、ガスエンジン発電設備にHiPAMPSを導入した事例を挙げる。HiPAMPSを提供開始したのは2013年8月だが、日立パワーソリューションズでは2008年から実証実験を進めてきた。約170台のガスエンジン発電設備に約30種類のセンサーを取り付けて、温度や圧力、回転数などを30秒ごとに測定。これらのデータを集約し、一覧画面を見れば誰でも故障の予兆を抱えた設備が分かる仕組みを開発した。

 これによりガスエンジン発電設備の故障発生率は、予兆診断開始後で45%削減したという。故障対応コストを大きく削減できるとともに、定期保守でも予兆がみられない部品の交換が必要なくなり、保守コストの抑制にもつながった。塩原氏は「実際の保守作業まで実証実験で行ってきたことが、HiPAMPSの構築に生きている」と語る。

■故障原因推定サービスなどを追加

 HiPAMPSはサービスの発表後、さまざまな機能拡充を行っている。2016年6月には予兆診断にエッジコンピューティングを取り入れた。エッジコンピューティングとは現場により近い位置で、センサーで取得したデータをクラウド基盤に上げるべきかどうかを選別し、必要なデータだけを送り込む仕組みのことである。HiPAMPSの診断エンジンをイタリアEurotechのIoTゲートウェイに組み込み、現場にあるゲートウェイで簡易予兆診断を可能にした。ネットワークの負荷軽減、通信費用の削減などのメリットがある。

 また塩原氏は「設備にセンサーを取り付けてデータを収集しているが、情報は社外に持ち出したくないという要望が多かった。エッジコンピューティングによる簡易予兆診断はクラウドにデータを上げないため、セキュリティ向上にもつながる」と語る。

 2017年4月からは「故障原因推定サービス」と「故障予測サービス」を新たに追加した。原因推定では過去の故障対策やメンテナンス記録等の情報と、異常を検出した部位のセンサー情報を登録しておく。故障予兆を検知したときに、センサーとの相関関係などから類似情報を検索し、故障部位の特定に有効な情報を表示する機能だ。

 故障予測は過去の診断データから設備の状態推移をグラフ上に見える化し、稼働の継続可能時間を推定することで、故障発生時期の予測を行ってくれる。

 現在は自動車やロボット分野などの生産ラインを中心に、概念実証(PoC:Proof of Concept)で引き合いが増えているという。同社が導入した風力発電設備でもHiPAMPSのPoCを始めた。塩原氏は「顧客からみると、予兆診断は今までかかっていないコストが必要となる。設備が壊れなければ効果も分からないため、HiPAMPSが一気に広まることはないだろう。PoCを続けることで、その価値を知ってもらいたい」と語った。