ここから本文です

Dell EMCに聞く、ハイパーコンバージドインフラの適用基準と今目指すべき企業ITの姿とは?

5/8(月) 13:08配信

@IT

 デジタルトランスフォーメーションのトレンドが国内でも進展し、社外向け/社内向け問わず、ITサービスを開発・改善する「スピード」がビジネス差別化の一大要件となりつつある。これに伴い、ITインフラの運用管理者には、開発者や事業部門を支援すべく、ITサービスを安定運用したり、要望に応じて仮想サーバやストレージなどのITリソースを迅速に配備したりする「サービスブローカー」としての役割が求められている。

 だが現実には、運用効率化やコスト削減を狙ってサーバ仮想化を導入しているものの、「障害原因の特定に時間がかかる」「求めるパフォーマンスを担保できない」など、いまだ運用管理に手間取っているケースが多い。その他、運用管理ノウハウの属人化、人的リソース・スキル不足など、「リクエストに迅速に応える」以前に、多くの課題を抱えている状況だ。

 こうした中、あらゆる運用課題を解決できるとして注目を集めているのがハイパーコンバージドインフラだ。低予算でスモールスタートして必要に応じて拡張できる、単一の管理ツールでインフラをシンプルに管理できる、仮想サーバなどITリソースを迅速に配備できるなど、“パブリッククラウドライクなインフラ”をコスト効率良く導入できるとして支持を集め、国内でも導入企業が急速に増加している。IDCジャパンの調査によると、国内コンバージドシステム全体のCAGR(販売年間平均成長率)は2015年~2020年で13.8%。うちハイパーコンバージドシステムが2020年の国内コンバージドシステム市場に占める割合は、2015年の9.4%から26.5ポイント上昇して35.9%になるという。

 ただ、@IT編集部が2016年12月~2017年1月にかけて行った読者調査によると、ハイパーコンバージドインフラについて「十分に理解している」と答えたのは4.2%、「ある程度理解している」と回答したのは17.7%(有効回答数594)にとどまるなど、まだ十分に理解が浸透しているとはいえない状況にあることが分かった。加えて、ハイパーコンバージドインフラは複数のベンダー製品が存在し、それぞれ強みや方向性が異なる。では年々複雑化するインフラ、増大し続ける運用負荷といった課題を効率的に解決するためには、ハイパーコンバージドインフラをどのような基準で選び、適用すればよいのだろうか?

 ハイパーコンバージドインフラ/コンバージドインフラに幅広い製品ラインアップを展開している米Dell EMC コンバージドプラットフォームズ&ソリューションズ バイスプレジデントのサブラマニャン・カーティック(Subramanian Kartik)氏に、あらためてハイパーコンバージドインフラの基本的なメリットと適用の考え方、また企業ITの目指すべき姿を聞いた。

●あらためて、「ハイパーコンバージドインフラ」とは何か?

編集部 昨今、国内でもハイパーコンバージドインフラの導入企業は急速に伸びています。本製品を取り巻く、日本を含めた市場環境をどのように見ていますか?

カーティック氏 ハイパーコンバージドインフラで鍵となるのは、やはり専用ストレージを採用する従来型インフラや、コンバージドインフラとは異なり、ソフトウェア定義型ストレージを採用していることです。これによって汎用的なハードウェアを使って低価格なシステムを作ったり、シンプルに管理したりすることができるようになりました。

 そしてムーアの法則通り、メモリやCPUは低価格化する一方で、性能や処理スピードは年々向上しています。かつては高価なSANファブリックでしかできなかったことが、今はソフトウェア定義ストレージで可能となっているのです。現在、多くの顧客企業がインフラのシンプル化と運用効率向上、すなわちコスト削減と運用のスピードアップを求めているわけですが、スタックのシンプル化と低価格化が、そうした顧客ニーズにぴったり合致したのが今だといえるでしょう。

編集部 確かに現在は、多くの企業がシンプルなアーキテクチャと運用スタイルを望んでおり、そうした文脈でハイパーコンバージドインフラは受け入れられていると思います。しかし単に「ソフトウェア定義型のストレージだから」というだけでは、必ずしも「管理が簡単になる」とは言えないのでは? 例えば導入、維持、パフォーマンス担保などの面で、ソフトウェア定義型ストレージである故に、ユーザー企業にとって複雑性が増してしまう側面もあるのでは?

カーティック氏 単に「ソフトウェア定義型のストレージを採用した」というだけでは確かにその通りでしょう。しかしハイパーコンバージドインフラは、例えばソフトウェア定義ストレージである「VMware vSAN」(以下、vSAN)と、サーバハードウェアを個別に用意して、ただ組み合わせ、VMwareのスタックを乗せて作る、といった単純なものではありません。すぐに使い始められて確実にメリットを享受できるよう、高精度なエンジニアリングを施して統合し、検証済みの状態で納品するものです。

 弊社製品で言えば「Dell EMC VxRail」「Dell EMC VxRack」「Dell EMC XC」(以下、VxRail、VxRack、XC)がこれに当たりますが、複雑な設計・構築は全て弊社側で行います。つまりソフトウェア定義型ストレージの複雑性を全て排除し、管理者のスキルを問わずシンプルに使えるようにしたものがハイパーコンバージドインフラなのです。

 もう1つ強調したいのは、ハイパーコンバージドインフラの拡張性です。コンバージドインフラは、同じ統合インフラといっても、サーバ、ネットワーク、専用ストレージといった従来型のスタックを統合したものであるため、どうしても初期投資が大きくなってしまいます。具体的には100万~300万ドルほど必要です。また事前にサイジングを行う必要があるため一定の導入期間が必要な他、ある程度使い込んでいくまでは利用率が低いままになりやすいのが一般的です。

 一方、ハイパーコンバージドインフラは、ネットワークにつないで電源を入れるだけですぐ使い始められます。数10万ドルから始めて必要に応じて少しずつ拡張できますから、全容量を使いきれないといった無駄がありません。

編集部 コンバージドインフラとハイパーコンバージドインフラの使い分けはどう考えるべきでしょうか?

カーティック氏 基本的に用途によります。ハイパーコンバージドインフラとコンバージドインフラの最も大きな違いは「データサービスの豊富さ」です。コンバージドインフラは専用ストレージを使う点で、データサービスが非常に洗練されています。具体的にはローカルレプリケーション、リモートレプリケーション、暗号化、重複排除/圧縮などです。専用ストレージにおけるこれらの機能は非常に成熟度が高い。

 一方で、ソフトウェア定義型ストレージは、市場に出てまだ2~3年のため専用ストレージほどは洗練されていません。例えばvSANにしても暗号化機能が入ったばかりです。また、サーバでソフトウェア定義ストレージを稼働させるハイパーコンバージドインフラとは異なり、コンバージドインフラはこれらの処理を専用ストレージが担当するため、サーバに負荷を掛けない点もポイントです。

 そうしたアーキテクチャの特性を踏まえると、非常に高度な堅牢性、安定性が求められるSAP、Oracleなど一部の基幹系は、コンバージドインフラが適しているといえます。逆に、信頼性、可用性を自身で備えているようなクラウドネイティブなSoEアプリケーション、豊富なデータサービスに依存しないアプリケーションについてはハイパーコンバージドインフラが向いています。

 一言でまとめると、「一部を除いた基幹系と、ティア2、ティア3のアプリケーションはハイパーコンバージドインフラで十分に安定稼働できる」といえるでしょう。弊社ではコンバージドインフラとハイパーコンバージドインフラをラインアップしていますが、共に重要な製品群であり、企業の要望、目的に応じて最適なものを提案したいと考えています。

編集部 しかしソフトウェア定義型ストレージのデータサービスも、今後、進展していくのでしょうね。

カーティック氏 その通りです。多くのソフトウェアベンダーがこの分野に投資をしています。例えばVMwareも大規模な投資をしてvSANのサービスを進化させようとしています。今後はソフトウェア定義型のストレージも、専用ストレージと同レベルのデータサービスを備えるようになることが期待されます。

●ハイパーコンバージドインフラ、製品選定の基準とは?

編集部 2016年2月、VMwareはvSANのサーバ認定プログラム「ReadyNode for vSAN」を強化しました。従来、パートナーは認定ハードウェアを提供するだけでしたが、この強化によって、パートナーはvSAN、VMware vSphereも事前インストールした状態で自社ハードウェアを提供し、ハードウェアとソフトウェアの一括サポートも行えるようになりました。2017年3月現在、100社以上がこの認定を受けており、多様なベンダーがハイパーコンバージドインフラを開発・提供しやすくなっていることについてはどうお考えですか?

カーティック氏 例えばvSAN、VMware vSphereを採用したVxRailは、旧EMCとVMwareが共同開発した製品です。そして周知の通り、弊社はVMwareとは以前から緊密な協力体制を築いてきました。ハイパーコンバージドインフラという「構築・検証済みであること」「すぐに使えること」がポイントになる製品において、そうした協力体制によるエンジニアリング精度の高さは市場における弊社の独自性であり、強みでもあると考えます。事実、弊社の2016年第4四半期の売上は9400万ドル。グローバルで8000超のノードが約700社の顧客企業で使われていることも、その裏付けといえるでしょう。

 また、サーバハードウェアについては、多くの製品で「Dell PowerEdge」を採用しています。今後は全てをDell PowerEdgeに切り替えていく予定です。グローバルでサーバ出荷台数No.1(出典:IDC’s WW Quarterly Server Tracker 2016Q4)のベンダーであるDellの知見とサプライチェーンは弊社グループの財産です。ハードウェア、ソフトウェアを自社グループで一元的に構成したり、製品をワンストップでサポートできたりする点は大きな強みではないでしょうか。

編集部 一方、2016年8月、VMwareはハイパーコンバージドインフラ技術の「VMware Cloud Foundation」を発表しました。VMware vSphere、vSAN、「VMware NSX」を搭載しており、「VMware SDDC Manager」でハードウェアのプロビジョニングやインフラの運用を自動化できる点が特徴ですが、こちらもハードウェアとしては貴社の「VxRack System with SDDC」の他、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)なども利用可能としていますね。これもやはりVMwareと同じグループ企業である点が差別化のポイントになるのでしょうか?

カーティック氏 HPEは製品開発としては素晴らしい仕事をしています。ただわれわれは、ソフトウェア、ハードウェア、ともにシングルベンダーとして、サポートからライフサイクルマネジメントに至るまで、全てを最適化できる点が強みです。例えばVMware Cloud Foundationの最新バージョンが出れば、顧客先でハードウェアにインストールする必要は生じるものの、テスト・確認作業の全てを弊社スタッフが行います。「使える状態で提供する」というハイパーコンバージドインフラのメリット、また弊社ならではのワンストップサービス/サポートというメリットは、どの製品でも変わりません。

●ハイパーコンバージドインフラの基本的な適用基準とは?

編集部 ハイパーコンバージドインフラとして、貴社にはVxRail、VxRack、XCの3種類があります。貴社の場合、これらの使い分けをどう考えているのか、適用基準を教えていただけますか?

カーティック氏 VxRailは2Uの筐体に4ノード、または1Uの筐体に1ノードを搭載可能なアプライアンス製品です。ハイパーバイザーとしてVMware vSphereを搭載し、ストレージソフトウェアにはVMware vSANを搭載しています。1クラスタで3ノードから64ノードまで拡張できる点で、スモールスタートに向いています。

 ラック単位で構築・拡張していく規模のインフラにはVxRackが向いています。アプライアンスとは違い、ネットワーク機能を含んでいる点がVxRailとの違いです。具体的にはVMware NSXや「Cisco ACI」といったSDN(Software Defined Networking)を利用できます。これにより、規模が大きなインフラでもパブリッククラウドのようにシンプルに一元管理できるようになります。

 一方、XCは1Uもしくは2UのPowerEdgeサーバに、米Nutanixのソフトウェアとストレージソフトウェアを搭載した製品です。VMware vSphere、マイクロソフトHyper-V、オープンソースソフトウェアのKVMに対応している点が特徴で、マルチハイパーバイザーを使いたい企業に適しています。弊社では、ハイパーバイザーとしてVMware vSphereしか使っていない、あるいは新たにハイパーコンバージドインフラを導入しようという顧客には基本的にVxRailを勧めています。

編集部 オープンを志向する大企業も多い近年、マルチハイパーバイザー対応のニーズが伸びる可能性についてはどう思いますか?

カーティック氏 顧客企業のインフラも要望も多様ですから、ニーズが偏ることはないと思います。例えば弊社でしたら、特定のハイパーバイザーに依存しないということなら「VxRack System FLEX」も選択肢として用意しています。XCとの違いは、一定規模において拡張しやすい“ラックスケール”であることと、ネットワーク機能が含まれていること、またベアメタルサーバも同一の運用基盤として組み込めることです。これにより、仮想化しないアプリケーションも含めて、大規模なマルチベンダー環境を迅速に統合管理できるようになります。

編集部 先ほどお伺いした、VxRailが向くとされる「中堅・中小企業で恒常的にIT人材が不足している」ようなケースは国内でも多そうですね

カーティック氏 確かにVxRailはリモートオフィスや病院など、小規模なインフラを一元管理したいというケースで数多く採用されています。ただ、必ずしも規模だけが採用基準になるわけではありません。例えばVxRailは北米の大手銀行でも導入されています。そこでは92のVxRailを支店に導入し、SQLサーバ、Webサーバなどを稼働させています。これにより全支店のインフラ運用を標準化・効率化することに成功しました。同様に、オハイオ州の大規模な病院でも、各拠点が独自に使ってきたインフラをVxRailに統一することで運用標準化・効率化を果たした、という事例があります。

 一方、物理/仮想環境が混在したマルチベンダー/マルチハイパーバイザーによるインフラをシンプル化したいというニーズについては、世界的ホテルチェーンの事例が挙げられます。同チェーンでは VxRack System FLEXを導入することで、ベアメタルも含めてインフラの一元管理を実現しました。

 コンバージドインフラとハイパーコンバージドインフラを組み合わせた航空会社の事例もあります。同社の場合、複雑化・大規模化したマルチベンダーの既存インフラにおいて、アプリケーションの可用性やパフォーマンスに深刻な問題を抱えていました。そこでアプリケーションの特性に応じてインフラを使い分けることで、アプリケーションの可用性、運用効率化の問題を同時に解決したのです。顧客ニーズは実に多様です。それぞれの製品において、市場は大きく伸びていくと見込んでいます。

●インフラのユーティリティー化は、デジタル変革に必須の構成要素

編集部 デジタルトランスフォーメーションが進んで、企業ITに一層の収益性やスピードが求められている中、開発者、運用者ともに役割が変わっていくといわれています。こうした中で、企業ITはどのような変革を目指すべきだとお考えですか?

カーティック氏 デジタル化のトレンドが進む中で、企業にはSoI(System of Innovation:革新システム)、SoD(System of Differentiation:差別化システム)と呼ばれる収益・ブランド向上に直結するアプリケーションを、DevOpsのアプローチでスピーディに開発・リリースすることが求められています。これに伴い、インフラについても、「モード1」「第二のプラットフォーム」と呼ばれる既存のインフラから、「モード2」「第三のプラットフォーム」と呼ばれる新しいインフラに移行することが必要とされています。

 例えば、開発者がSoD、SoIアプリケーションをスピーディに作るためには、コードを書くことに集中する必要があります。そのためにはCIでビルド、テストを自動化したり、Dockerなどコンテナ仮想化ツールを使うことで、テスト済みの成果物を最適なインフラに自動的にデプロイするCDの仕組みが求められます。このためにはデプロイ先が自動的に配備される仕組みや、複数のインフラを使い分けるマルチクラウドの仕組みも必要です。

 こうした変革に必要な構成要素の1つとして、ハイパーコンバージドインフラ/コンバージドインフラがあると考えます。これらはITリソースの管理・配備をシンプル化・迅速化することで、インフラをユーティリティ化するものだからです。

 例えば弊社ではハイパーコンバージドインフラを使ったクラウドネイティブアプリケーション開発プラットフォーム「Native Hybrid Cloud」も提供しています。これはVxRailまたはXC上にPivotal Cloud Foundryを統合することでインフラも含め“すぐに使える状態で”開発環境を提供するソリューションです。このPivotal Cloud Foundryを通じて、vCloud Air、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureなど他のパブリッククラウドに開発環境を拡張したり、オンプレミスも含めて統合的に運用管理したりできるようにしています。

 もちろん、デジタル時代に向けた変革を起こすためには、技術面だけではなく文化面、人の変革も必要であり決して容易なことではありません。弊社としては、ただ単に製品を提供するのではなく、技術面、財務面など顧客企業におけるさまざまな問題を包括的に捉えつつ、すぐにメリットを享受できるターンキーソリューションを用途に応じて提案することで、変革を支援していきたいと考えています。

最終更新:5/8(月) 13:08
@IT