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焦点:仏大統領選勝利のマクロン氏、改革の道は多難

ロイター 5/8(月) 12:12配信

[ベルリン/パリ 7日 ロイター] - 低成長、失業増加、競争力低下の10年を経験したフランスは7日、景気低迷からの脱却を約束した39歳の元投資銀行家、エマニュエル・マクロン氏を大統領に選んだ。

オランド政権の経済相に起用されながら改革のペースの遅さに業を煮やして辞任したマクロン氏は、労働市場改革、税・年金制度の簡素化、技術革新を阻む規制の緩和を掲げる。最終的に、欧州連合(EU)離脱・反移民の極右政党・国民戦線(FN)党首、マリーヌ・ルペン氏との一騎打ちを制したが、大統領として数々の課題に直面することになる。

マクロン氏は、グローバリゼーションの破壊的な力にどう対応するかで国民意識の分裂がこれまでないほど深刻ななか、改革に取り組む。マクロン氏は経済への国の関与を弱めることを標榜するが、国民の約半数は経済において国が果たす役割を高める統制的アプローチを望んでいる。

改革実行には議会の承認が必要。その意味で、6月の国民議会(下院)総選挙で、マクロン氏が立ち上げた超党派の市民運動「前進」がどの程度議席を確保できるかが鍵を握る。

ただ、首尾よく過半数議席を確保できたとしても、改革の多くは成果を出すのに数カ月、あるいは数年かかる可能性もある。実現が遅れれば、「アゲンダ2010」と称する構造改革を打ち出しながらも景気低迷で退陣に追い込まれた独シュレーダー政権と同じ轍を踏むことになりかねない。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの欧州チーフエコノミスト、ギレス・モエク氏は、マクロン氏は漸進的アプローチをとると約束しているが、その成否は組合との交渉にかかっていると指摘。「その戦術は理解できるが、即座に結果を出せるものでない」と述べた。

<漸進的アプローチ>

マクロン氏の経済政策は、今回の大統領選に出馬した中道右派のフランソワ・フィヨン元首相の掲げた公務員のリストラや就労時間延長といった「衝撃と畏怖」のアプローチとは一線を画した。マクロン陣営は、フランスが抱える経済問題の根幹によりうまく対応するものだと主張しており、独立系エコノミストの多くもそれに同意する。

フィヨン氏は、週35時間労働制度の撤廃を約束したが、マクロン氏は制度は撤廃せず、企業が個別に労務条件について交渉することを認める方針を示した。

年金に関しては、62歳という法定退職年齢の引き上げはせず、複雑な年金プランを時間をかけて統合するとした。

財政についても、フィヨン氏に比べてマクロン氏の提案は穏健な内容で、法人税率も段階的に33%から25%に引き下げるとしている。

こうしたアプローチは、改革を頓挫させかねない市民の抗議デモのリスクを抑える効果が見込める。一方、より積極的な改革が必要と主張する保守派の批判を浴びる恐れがある。

<厳しい現実>

オランド大統領は、就任後最初の2年は、富裕税の導入など、出身政党である社会党内のガチガチの社会主義者の懐柔に追われ、マクロン氏を起用して企業寄りの改革に着手できたのはその後だ。

その前任のサルコジ大統領は、退職年齢の引き上げはできたものの、それ以外はかばかしい成果も挙げられないまま、世界金融危機やユーロ圏危機に巻き込まれた。さらにその前のシラク政権は、市民の激しいデモで改革を断念している。

マクロン氏が対峙する現実は、歴代の大統領よりもはるかに厳しい。国民にグローバリゼーションやEUへの支持を促す政治課題に失敗すれば、5年後の大統領選挙でルペン氏を再び撃退するのが難しくなるだろう。

前週、ベルテルスマン財団が行った調査では、フランス有権者の分裂ぶりが明らかになった。調査では、約20%が極右ないし極左と回答し、中道と回答した割合は36%だった。EUの平均(極右ないし極左が7%、中道は62%)と比べて極端な思想に偏っている。

マクロン氏に突きつけられた状況は厳しいが、明るい材料もある。ひとつは景気が回復局面に入っていること。消費者マインドはここ10年で最も良好で、企業の信頼感は約6年ぶりの高水準。失業率は依然10%近くに高止まりしているが、雇用は順調に創出されている。

もうひとつの追い風は、労組をめぐる状況の変化だ。今年、強硬姿勢の労働総同盟(CGT)に代わり、穏健な仏民主労働同盟(CFDT)が民間セクターで最大勢力となった。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのモエク氏は、組合との交渉がうまくいく可能性が出てきたと指摘した。

(Noah Barkin、Leigh Thomas記者)

最終更新:5/8(月) 18:16

ロイター