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今どきメジャーリーガーが知らない、殿堂入り投手の“伝説”

スポーツ報知 5/9(火) 7:02配信

 かつて、通算400勝の金田正一さんを知らなかったプロ野球の投手がいたことが話題になったことがある。実はメジャーでも同じような事があった。7日(日本時間8日)、マリナーズのサービス監督はレンジャーズ戦の前に、「若手選手に聞いたが、(始球式をやったOBを)誰も名前さえ知らなかった。彼らは2000年以降に活躍した選手しか知らないんだろう…」とあきれ顔だった。

 そのOBとは6日のマリナーズ・レンジャーズ戦が行われたセーフコ・フィールドで始球式を務めたゲイロード・ペリー氏(78)のことだ。マリナーズに所属していた35年前の5月6日に、当時の本拠地キングドームでメジャー通算300勝を達成。球団創設40周年の節目に当たる今季の始球式特別ゲストの1人として招かれていた。

 現役22年間で通算314勝をあげ、1991年には球界殿堂入りを果たした投手ながら、今やイチローを見て育った世代がメジャーでプレーする時代。マリナーズ在籍期間が現役最後の1年半と短いことと、引退後はめったに球団行事に顔を出さなかったペリー氏の名前を知らない選手がほとんどだという。

 1990年生まれの救援右腕トニー・ジックは、ペリー氏に「(私は)何試合完投したと思う?」と聞かれ、「130試合ぐらい?」と返したそうだが、答えを聞いて仰天した。歴代39位の303試合だ。690先発試合は歴代9位。3534奪三振は歴代8位。最多勝利投手に3度輝き、シーズン20勝を5度達成。両リーグでサイ・ヤング賞を受賞した初めての投手。

 ジャイアンツ時代の1967年9月1日のレッズ戦では延長16回まで零封するなど、今では考えられない偉業を成し遂げている。

 そんな輝かしい功績を誇るペリー氏を語る上で、忘れてならないのはイリーガルピッチ(不正投球)の疑いだ。当時の投手は少なからずやっていたという不正投球の数々。つばをつけた「スピットボール」を言うに及ばず、ボールの表面に松脂(やに)などを塗って滑りやすくしたり、紙ヤスリでボールを傷つけ変化球をより曲がりやすくさせる事は日常茶飯事。滑り止め用のロージンを多めに使い、球を投げた瞬間に煙を立てることで打者から見えにくくする「パフボール」を投げていたとされる。

 不正行為が疑われているのを逆手に取った心理戦にも長けていた。投球モーションに入る前に帽子や顔、ユニフォームのあちこちをむやみに触り、ボールに何か塗っているのではないかという不安を打者の脳裏に植えつける。当時「ビッグレッドマシン」と恐れられていた強打線のレッズとの対戦前には、ワセリンを塗った手でわざわざピート・ローズ氏などと握手しに行ったというなどエピソードに事欠かない投手だった。

 サイ・ヤング賞を受賞してからは特に不正監視の目が厳しくなったが、退場宣告を受けたのは通算300勝目をあげたメジャー21年目の1982年8月23日、キングドームで行われたレッドソックス戦が初めてというから驚きだ。

 始球式に登場したペリー氏は、マウンドよりも約5メートル手前から、アンダースローで捕手のミットへゆっくりと投げ込んだ。捕手を務めたのはチームの選手で唯一1970年代生まれの控え捕手カルロス・ルイーズ(38)。フィリーズ時代にロイ・ハラデーの完全試合でバッテリーを組んだ選手で、今季からマリナーズへ移籍している。通常なら捕手役がボールにサインをして始球式で投げた人に手渡すのが慣例だが、そこはチーム一の年長選手。ペリー氏にサインをしてもらったボールを受け取った。彼だけはペリーの偉大さを知っていたようだった。(シアトル在住・金岡美佐通信員)

最終更新:5/9(火) 7:02

スポーツ報知

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