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エース菅野が4試合連続完封に挑む!WBCで投じた”気持ち”の1球と共に

スポーツ報知 5/9(火) 11:03配信

 約1ヶ月半が経過した今でも、「あの1球」を鮮明に覚えている。

 3月22日(現地時間21日)のWBC準決勝の日本-米国戦。0-1のビハインドで迎えた6回2死。先発の菅野智之(27)=巨人=が対峙したのは米国の4番、ノーラン・アレナド(26)=ロッキーズ=昨年まで2年連続でナ・リーグの本塁打王を獲得した強打者だ。

 カウントはノーボール、2ストライク。ここまでの球数は80球。準決勝で1人の投手が投げられる制限の95球にはまだ余裕がある。終盤に向けてこれ以上の失点はしたくないことを考えても、慎重に攻めていい状況。それでも、捕手・小林誠司(27)は外角低めのストライクゾーン一杯にミットを構えた。小林のマスク越しの表情と体全体の雰囲気が遊び球のない3球勝負だと伝えていた。菅野は投球動作に入った。

 コントロールの良い投手と悪い投手を分ける一番の違いとは。3年ほど前、菅野に聞いたことがある。返ってきた言葉はいたってシンプルだった。「気持ちです。絶対にそこに投げるっていう気持ちがどれだけ強いかだと思う」。

 「気持ち」というのは取材する側が困る答えの一つだ。誰かが活躍したり成功を収めたとき、わかりやすい理由を探したがるが、「気持ち」と言われたらそれ以上は突っ込めない。だから、その言葉を聞いて物足りなさが残った。でも、今はこう思う。

 「あの1球」を投げるために菅野はどれだけのものを積み重ねてきたのだろう。キャッチボールで、テレビ番組でおなじみの「ストラックアウト」に見立てて1球ごとに番号を言ってから投げることがある。実際に目の前に9枚のパネルはない。常に自分自身に課題を与えながら技術を磨いている。

 新人時代の投球練習中、右打者のインハイのボールの高さが中途半端だとブルペン捕手に指摘され「自分は構えられたミット通りに投げた。本当はどこに投げて欲しいのかもう一度構え直してください」と言い返した。自分が真剣だからこそ、練習相手にも真剣を求める。ストレートの軌道の乱れを修正するために4シームの握りに沿ってマジックでボールに印を付けたりもした。菅野の言う「気持ち」とはその場だけのものではない。「絶対にそこに投げる」と高い意識を持っての練習や言動の積み重ねが結果としてマウンドでのパフォーマンスにつながっているのだ。

 制球の良さを重視したコンパクトなフォームから繰り出された直球はこの試合で最速の153キロ。アレナドのバットは動かない。小林のミットが乾いた音を立てた。見逃しの三振で3アウトチェンジ。今大会での最後の1球にするとの強い気持ちを込めて投げたのは、右腕が投球の基本と公言して磨いてきたアウトローのストレート。菅野の言った「気持ち」の意味が、少しだけ分かったような気がした。

 巨人に戻ってからも3連続完封中と好調を維持する右腕の次回登板予定は5月9日本拠地・東京ドームの阪神戦だ。強い気持ちに支えられる抜群の制球力で”エースのジョー“城之内邦雄氏(巨人)以来52年ぶりの4試合連続完封に挑む。(記者コラム・矢口 亨)

最終更新:5/13(土) 8:07

スポーツ報知

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