ここから本文です

ビルオーナーが事業承継を支援/八戸

デーリー東北新聞社 5/8(月) 9:00配信

 ビルのオーナー企業と、入居するテナントが一緒になって店舗経営について考え、事業を始める取り組みが4月、八戸市中心街で実現した。従来、オーナーとテナントのつながりは主に貸借契約だけで、関係は希薄になりがちだった。今回はテナント側が事業を後継者に引き継ぐ「事業承継」の際にオーナー側が初期の段階から支援。両者が信頼関係を構築し、スムーズに手続きが進んだ。青森県内ではこれまであまり例がなく、関係者はビル全体の魅力を向上させる好例として注目している。

   ◇   ◇

 4月中旬、同市六日町の飲食店「ビアファクトリー」の眞島和重さん(45)は、これまで店長を務めていた店舗の事業を引き継ぎ、オーナー兼店長として新たなスタートを切った。

 店舗は、青森市内に本社がある企業のチェーン店として2014年に開店。しかし昨年に入り、企業の経営方針の転換などにより、閉店する方向で話が進んだ。ちょうど、周囲の飲食店や地域にも溶け込みつつある時期でもあり、立ち上げ時から店長を務めていた眞島さんは「店を続けたい」と店舗経営に手を挙げた。企業とも話し合い、事業を引き継ぐことで了承を得た。

   ◇   ◇

 「新たな経営者を応援し、共存共栄の道を探っていきたい」。ビアファクトリーのビルが入居するビルオーナーである八戸酒造の駒井庄三郎社長は、ビルの運営に関し、以前からそんな思いを抱いてきた。

 今回、経営者として店を続けたいという眞島さんの声を聞き、同社として初めて、事業承継に係るさまざまな手続きをサポートすることを決めた。

 詳しい社員が定期的に店舗に出向き、八戸市が設置している「はちのへ創業・事業承継サポートセンター(8サポ)」や金融機関など関係機関を紹介。収支計画や家賃、今後の具体的な事業計画など専門的な部分について相談に乗った。

 眞島さんは「日々の業務もある中、事業承継についての知識が全くなく不安だった。書類作成の方法などを教えてもらえたことが大きかった」と話す。今後の店舗経営について「楽しんでもらえる“酒場”として新たなイベントも企画していきたい」と意欲を見せる。

   ◇   ◇

 8サポや、県内の事業承継を支援する関係者によると、ビルオーナーとテナントが手続きの初期段階から協力し、話し合いを進めていく例は珍しい。家賃や店舗形態について折り合いが付かず、交渉に時間がかかる例がほとんどだという

 8サポの担当者は「特に市中心街では飲食店の入れ替わりが頻繁で、空き店舗も課題になっている」とした上で、「日頃からテナントと良好な関係を築き、ビル全体に目を向ける姿勢は廃業の減少にもつながる」と強調。今回の事業承継を、ビルの空き店舗増加の歯止めにつながる好例と捉える。

 事業承継に詳しい中小企業診断士の小野寺毅さん(八戸市)によると、都市部を中心に、ビル全体を企業が一括管理してテナントを誘致したり、店側と一体となってにぎわいを創出しようとしたりする手法が行われている。

 八戸で同様の効果が得られるかは未知数だが、小野寺さんは「にぎわいを周囲に波及し、ビル同士の競争力を生むには有効だ」と述べ、市中心街を活性化する方策の一つであるとの認識を示す。

デーリー東北新聞社

最終更新:5/8(月) 9:00

デーリー東北新聞社