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「稼ぐ大学」へ、東大や名大などがしかける産学連携の可能性と危うさ

5/8(月) 9:18配信

ニュースイッチ

企業から大学への投資を3倍する政府目標は本当に可能なのか

 大学が“稼ぐ組織”への改革に踏み出そうとしている。政府は企業から大学などへの投資を3倍の年間3500億円に増やす成長戦略を掲げる。研究者同士のつながりによる共同研究から、大学と企業が組織同士で契約して技術と事業を開発する「組織」対「組織」の産学連携への転換を促す。

 東京大学は産学協創推進本部で専門弁護士を雇用し、ベンチャー支援機能を拡充した。名古屋大学は研究の企画段階から企業の声を反映する体制を整備。東京工業大学は2017年度に学長のリーダーシップの下で産学連携部門を強化する。より機動的にプロジェクトを管理、実行する。

 各大学は研究企画や産学連携部門など民間企業の企画や営業にあたる部門を強化している。先行する海外大学は企画や戦略の立案力・実施力に優れ、日本企業から大型資金を獲得してきた。米スタンフォード大学は80人、米マサチューセッツ工科大学は140人以上の営業部隊を抱える。

 日本の大学は企業で言えば営業体制を整えたばかり。企業に投資効果を説明するには、プロジェクト管理機能を備えねばならない。企業の先端的な研究を扱うには、機密管理や進捗管理、計画遅延時の対策など高い管理体制が求められる。

 ただ、体力のある総合大学と比べて中堅大学や地方大学が、独自に体制を整備するのは難しい。複数の大学で技術移転機関(TLO)を共同運営する試みはあるが、苦戦している。全国の大学に改革を促すには、共同運営組織の設置など新たな枠組みも検討しなければならない。

野依JST研究開発戦略センター長に聞く

 野依良治科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター長は、産学連携の推進について、このままでは混乱を深めると危機感を持つ。専門組織「イノベーション特区」が必要と説く。

 ―課題の本質は。
「大学は教育と学術研究の場だ。だが産から学への投資は短中期的な産業競争力の強化が主な目的だ。研究者が事業性優先の共同研究に追われれば、大学のガバナンス(統治)が効かなくなる」

 「外部と連携し技術営業や事業開発を担うフロントオフィスと職務教育やコンプライアンス管理、事務局を担うバックオフィス機能を整備すべきだ。『特区』をつくり、研究開発法人や大学を省庁横断的に支えるプラットフォーム機能を整える必要がある」

 ―機能を担うのはどこが適切でしょうか。
「司令塔たる内閣府がふさわしい。JSTは研究資金の配分を担ってきたが研究開発法人に転換した。自ら研究戦略を打ち出し、優秀な人材を集めて研究を実践できる。研究者を抱えない研究機関として未来を実現する」

 ―企業のように統制された組織が必要です。
「まずは『特区』でモデルをつくる。企業には機密管理の点で、大学との共同研究を危ぶむ声がある。パソコン利用の公私混同など情報管理ができず重要な研究を任せられないという企業もある。連携が本当に機能する規律と互恵関係をつくるプロの組織が必要だ」

 ―資金と人材は。
 「米国のように大学教員の雇用期間を年間9カ月にし、残りの3カ月は産学連携研究やベンチャーの運営に充てて自ら稼げる形にすればよい。大学の人件費を減らせ、現在はタダ同然で働かせている大学院生への対価と教育に充てられる。産と学の共創で新しい価値をつくることが社会の要請であり、産学連携の目的が資金獲得になっては本末転倒だ」

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