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マクロン氏勝利 欧州は投資家の期待に応えられるか

ウォール・ストリート・ジャーナル 5/8(月) 9:47配信

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 フランス大統領選で中道派のエマニュエル・マクロン氏が勝利を収めた。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の決定やドナルド・トランプ氏の米大統領就任に端を発したポピュリズムの波を欧州が受け入れるのではなく、それに抵抗を示したこれまでで最も大きなサインだ。市場は同氏の当選を予測していたが、次の試練は、欧州政治に再び生まれたこの結束感が、長期にわたって地域経済の足かせとなっていた諸問題の解決につながるかどうかになる。

 短期的には、欧州における政治的リスクが低下しつつあることに市場は鼓舞されている。オーストリア、オランダ、そしてフランスでの選挙結果は、欧州の人々がEU解体や統一通貨ユーロの廃止ではなく、その修復に傾いていることを示した。

 2週間前に実施された仏大統領選の第1回投票以降、欧州の株価は4.3%上昇した。フランスに限定すれば7%以上の上昇だ。クレジット・スプレッドは縮小し、フランス国債の利回りも低下した。ユーロは5日の時点で1.10ドルで取引されており、4月23日から3セント上昇している。これはつまり、マクロン氏の勝利が投資家にもたらす安堵(あんど)感を市場が織り込み済みであることを示す。欧州市場は比較的堅調で回復しつつある欧州圏の経済データにも支えられている。

 マクロン氏の当選によって、欧州市場のこの勢いは維持されるだろうか? まず注目すべき点は、同氏がフランスとドイツの関係を再構築できるかということだ。これは欧州圏の銀行同盟強化や危機対応力を高めるなど、より統一された欧州を実現するために必要な点となる。欧州資本市場の機能をさらに高める努力も歓迎されるだろう。財政統合のような考え方は今後も計画段階にとどまるとしても、長期にわたってユーロが繁栄を続けるとの信頼感を植え付けることになる。

 その中で重要となるのは、マクロン氏がフランスの改革をどの程度進めることができるかだ。同国は近年、経済面でドイツに後れを取っているが、ユーロ圏の二大経済大国が歩調を合わせればその力は大きなものになる。フランス国内では10%に達した失業率を下げるため、より柔軟な労働市場の形成が大きな任務となる。政府の支出削減にも取り組まなければならない。

 もうひとつの試金石となるのが、経済危機が7年も続くギリシャだ。フランスとドイツが新たな軸を築ければ、ギリシャの債務負担を軽減させる枠組みに合意できる可能性もある。債権国との新たな合意への期待はすでに高まっており、ギリシャ国債10年物の利回りは2014年以降で初めて6%を下回っている。

 イタリアを中心とした経済低迷と巨額の債務も、悪い意味で目を向けなければならない。マクロン氏が当選した影響で、欧州中央銀行(ECB)が債券購入買い入れを縮小する可能性に投資家は注目するかもしれない。その結果、イタリア債券の利回りが上昇する可能性もある。イタリアでは来年まで選挙が実施されない予定だが、政治情勢も先行きが見通せない。ユーロ懐疑派で反体制派でもある政党「五つ星運動」への根強い支持が、市場を再び混乱させる可能性もある。

 マクロン氏の当選は欧州にとっては一歩前進だ。しかしこれだけ多くの可動部分があるシステムが前に進むためには、同氏の当選は必要条件であって、十分条件ではない。とはいえ企業収益の改善や堅調な経済指標を考慮すれば、今回の選挙結果は欧州経済の先行きにとってプラスと受け取ってもいいだろう。

By Richard Barley

最終更新:5/8(月) 9:47

ウォール・ストリート・ジャーナル