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「A320で編隊飛行できるのはピーチだけ」 特集・ピーチ社員から見た就航5周年(4)

5/9(火) 12:31配信

Aviation Wire

 今年のゴールデンウィークも5月5日のこどもの日には、航空会社が空港などで子供向けのイベントを開いた。子供たちにとってパイロットや客室乗務員といった空の職業は、いつの時代も人気の的だ。

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 3月1日に就航5周年を迎えたピーチ・アビエーション(APJ/MM)にも、多くのパイロットがいる。ほかの航空会社や自衛隊の出身者もいれば、これまで旅客機とは別の分野で空を飛んできたパイロットもいる。

 本特集では、就航当時からピーチに在籍するさまざまな職種の社員に、入社に至ったきっかけや、5年間の仕事を振り返ってもらっている。第1回と第2回は、ブランドや社内システムに携わる、オフィスでの仕事が中心の社員に登場してもらい、第3回では新卒採用された女性整備士に話を聞いた。

 第4回目となる今回は、ピーチが就航した2012年の暮れ、12月1日に入社した運航本部乗員部の副操縦士、横山真隆。「もともとはエアラインに興味がなかった」という横山は、なぜピーチのパイロットになったのだろうか。(文中敬称略)

---記事の概要---
・アクロバット飛行から転身
・A320で編隊飛行を
・180人の20倍、30倍の命を背負う

◆アクロバット飛行から転身

 広告代理店のパイロットとして、航空ショーなどでアクロバット飛行をやっていた横山。ニュースを見て存在を知ったピーチには、就航直後の2012年春にエントリーした。

 「エアラインの世界を見てみようと、前職を辞めることにしました。この会社は、どこにも属していない会社(記者注:取材当時。17年4月からANAホールディングスの連結子会社)。人に夢を与える会社だと思ったんです」と、ピーチを選んだ理由を挙げる。

 横山は、ピーチの採用試験のうち、これまで航空会社では操縦したことがないパイロットを採用する1期生の一人。実際に入社すると、「飛ばし方を含め、すべてが違って新鮮。そして、会社自体が面白い。外から見ていたよりも、やりがいがある」と感じた。

 旅客機では当然のように使用する「オートパイロット」(自動操縦)も、頭に描いていたものとは違ったようだ。

 「オートパイロットを使っていても、計器をモニターし続けなければならないので、自分で操縦しているような感覚ですね」と話す。「どんどん国際線を飛ぶようになると、エアラインのパイロットになったんだなと、実感が湧いてきました」と、同じ飛行機を飛ばすパイロットでも、違いを感じるようになった。

 しかし横山は、単にエアラインのパイロットになりたかった訳ではなかった。ピーチは従来の概念を壊しながら、国内初のLCCとしてさまざまな市場を開拓したり、新しい取り組みにチャレンジしてきた。「会社自体が面白い」と言うように、横山が夢を実現するためには、ピーチでなければならなかった。

◆A320で編隊飛行を

 「飛行機って、無条件に人に夢だったり、勇気だったり、活力を与えるんですよ。ある監督さんのアニメ映画、だいたい飛ぶものが入ってますよね?」と、横山はいたずらっぽく笑う。

 横山がピーチを選んだ理由の一つが、会社自体が面白いこと、社員が面白いと感じたことに対して、チャレンジできる社風だった。横山は自分が抱いている夢を実現するには、日本の航空会社ではピーチしかないと感じたという。その夢の一つが、ピーチの機材である、エアバスA320型機を使った編隊飛行だ。

 「海外では、車で言うとレーシングカーのような、小さい飛行機で若手はアクロバット飛行をやります。そして、経験を積んだおじいちゃんたちが“この飛行機でやるの?”という大きな機体でアクロバットをやっています。僕もそういうことをやってみたいという、夢があるんです。この会社だったら、チャレンジしたら出来るんじゃないか、とね。もちろん、まずはキャプテンに昇格しなければなりませんが」と、熱く語る。

 パリで開催されるパリ航空ショーや、ロンドン近郊で開かれるファンボロー航空ショーでも、エアバスA380型機やボーイング787型機が、まるで戦闘機のような高い機動性を駆使して、ダイナミックなデモンストレーション・フライトを披露する。軍用機と旅客機の編隊飛行も、航空ショーや建国記念式典などでは、おなじみの光景だ。

 「アクロバットや編隊飛行は、目の錯覚も利用しているんです。地上から見ると、ぶつかるのでは、というシーンも、安全な距離を保っています」と説明する。

 小松空港のように、自衛隊と民間機の共用空港で航空祭が開かれる際は、アナウンスで民間機のキャプテンの名前や行き先などが紹介される。しかし、海外のようなダイナミックなショーの実現には、さまざまな課題がある。

 「ピーチのA320で、編隊飛行をやってみたい。うちのキャプテンの中には、自衛隊で編隊飛行の経験者もいるんですよ。A320で編隊飛行が出来るのは、日本ではピーチしかない」と、将来の実現に向け、密かにプランを練る。

◆180人の20倍、30倍の命を背負う

 入社から5年が過ぎた横山に、ピーチに入社して良かったかを尋ねると、「もちろん!」と即答だった。「副操縦士に昇格して4年目。他社よりも飛べるので、成長する機会がありますね」と、パイロットにとって重要な飛行時間を、伸ばしていける良さを感じている。

 会社の規模も、就航前は100人程度だった社員数が今では1000人に届こうという勢いだ。「会ったことがない人が増えました(笑)。これからは大学を出たばかりの人にどう教えていくのか、5年後、10年後どうなるのかを、考えていかないといけないですね」と、これまでとは会社の規模感が変わってきている中で、就航当時からの社風を伝えていく難しさもあるようだ。

 就航10年に向けた次の5年、横山はどのようなパイロットを目指すのか。

 「まずはキャプテンに昇格します。入社前とは違い、今はお客様の命を守る立場。定員の180人の家族や友人を考えれば、20倍、30倍の人の命を背負っています。日々責任を持って運航するのがこの世界です。これからというより、引き続きそういう意識で飛びます」。

 航空会社の機体による編隊飛行は、実現するまでの課題が多いだろう。しかし、横山はピーチの社風に可能性を賭けている。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:5/9(火) 12:31
Aviation Wire