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深海の熱水噴出域、天然の発電所であることが判明

スマートジャパン 5/9(火) 7:10配信

■海底熱水噴出孔は「天然の発電所」

 海底熱水噴出孔は金属イオンと電子を放出しやすい硫化水素や水素、メタンなどのガスを大量に含む熱水が放出されている。熱水が周囲の海水によって急激に冷やされることで、硫化鉱物が沈殿し、海底に鉱床を形成する。

【自発的な発電現象の概念図】

 海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)と理化学研究所の研究グループは、2013年9月に海底熱水鉱床の硫化鉱物が高い導電性を持つことや電極として利用できること、熱水と海水を用いて人工的な発電が可能なことを発表した。これにより海底熱水噴出孔が“天然の燃料電池”として機能し、発電現象が生じることが予想されてきた。

 同研究グループは沖縄トラフの深海熱水噴出域において、現場電気化学計測と鉱物試料の採取を行い、持ち帰った鉱物試料について実験室で分析を行った。その結果、深海熱水噴出域の海底面で発電現象が自然発生していることを明らかにした。

 具体的にはJAMSTECの海洋調査船「なつしま」「かいよう」と無人探査機「ハイパードルフィン」を用いて、熱水鉱床表面の酸化還元電位*)の現場計測を行った。

*)酸化還元電位:数値が高いほど電子を受け取りやすく、低いほど電子を放出しやすい。

 沖縄トラフの深海熱水噴出孔にはキノコのような形の硫化鉱物「フランジ」が形成され、キノコの傘の下に熱水がたまっているという。傘の上面の酸化還元電位は、約+49mVを示した。周囲の海水の酸化還元電位(+466±7mV)に比べて低い値を示していることから、硫化鉱物表面が電子を放出しやすい状態であることが分かる。

 同様に別の熱水噴出孔「HDSKチムニー」の酸化還元電位を計測したところ、熱水噴出孔の間近が最も低く、孔から数メートルずつ遠くなるにつれて鉱物表面の酸化還元電位が上昇していく様子が観察できたとする。同研究グループは「熱水と海水を境界する硫化鉱物の厚みが薄いほど、海水側における硫化鉱物表面の電子が放出されやすく、硫化鉱物が厚くなるにつれて電子が放出されにくくなることを示唆している」と語る。

■新しい微生物生態系が存在する可能性

 同研究グループは次に、HDSKチムニーを中心に約150×150メートルエリアの海底面における酸化還元電位の計測を行った。HDSKチムニーおよび他の熱水噴出孔近傍では、+0.1Vほどの低い酸化還元電位を観察。また熱水の放出が確認できない海域の鉱物表面でも、比較的低い酸化還元電位(約0.15~0.30V)がしばしば示されたという。

 硫化鉱物は酸化還元電位が+0.30Vより低い場合、海水中の酸素に電子を渡す反応が進行することが確認されていることから、海底熱水鉱床のエリアで海底下から海水中への電子の受け渡しが行われていることが示唆される。

 採取した硫化鉱物試料の熱水および海水中における電気的な挙動を解析したところ、硫化鉱物は熱水と海水の間で主に導電体として振る舞い、硫化鉱物自体の変質による電子移動の作用は小さいことが確かめられたとする。

 活動的な海底熱水噴出孔では、海底下の熱水から海底面への海水へ硫化鉱物を介した電子の伝達による電流発生が、広い範囲で自発的に生じることが示されたのだ。

 同研究グループによると、この自然発生的な発電現象は周辺のエネルギー、物質循環に影響を与えることが予想される。特に微生物生態系などに影響を及ぼすことが考えられ、海底に電気エネルギーを利用する微生物生態系が存在する可能性があるとした。

 なお今回の発表内容は、2017年5月10日付のドイツ化学会誌インターナショナル版「Angewandte Chemie International Edition」のWeb版に掲載される。JAMSTECの山本正浩氏と、理化学研究所の中村龍平氏らによる共同研究グループの成果だ。

最終更新:5/9(火) 7:10

スマートジャパン