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「解析と実測のコリレーション」で自動車用コネクターの開発期間が3分の1に

5/9(火) 7:40配信

MONOist

 コネクター大手のヒロセ電機は2017年4月27日、研究開発拠点の横浜センター(横浜市都筑区)に導入した「EMC試験室」を報道陣に公開した。EMC試験室の導入により、自動車向けコネクターの開発期間を従来比で3分の1程度に短縮し、製品投入を加速させていく。

【EMC試験室の室内などその他の画像】

 現在同社のコネクターは、スマートフォンを中心にコンシューマー製品向けが約6割を占め、自動車向けは約2割にとどまる。この約2割についても、車載情報機器の関連で用いられる同軸系のコネクターが多かった。2012年ごろからはECU(電子制御ユニット)向けや電動システム向けなどの製品開発にも注力しており、製品ラインアップの拡充によって自動車向けコネクターの売り上げを伸ばしていく計画である。今後は、自動車向けをコンシューマー製品向けや産業機器向けに並ぶ3本柱に育てていきたい考えだ。

●シールドルームと電波暗室から成るEMC試験室

 EMC試験室は、シールドルームと電波暗室の2つから構成されている。シールドルームでは、設計したコネクターに外来ノイズを加えても正常に動作するかを確認するイミュニティ試験を行う。このため、シールドルームの内部で発生させる外来ノイズが外部に漏出しないように“シールド”された部屋になっているのだ。

 シールドルームで行う代表的な試験は2種類ある。1つは、BCI(Bulk Current Injection)試験だ。10M~最大2.5GHzの外来ノイズをワイヤハーネスの周囲で発生させて、コネクターへの影響が顧客の要求レベル以下に抑えられることを確認する。もう1つは、耐誘導ノイズ試験/バースト試験になる。一定以上の長さのワイヤハーネスから発生する外来ノイズによって、コネクターの動作に影響が出ないかを確認したりする。

 一方、電波暗室は、設計したコネクターや、コネクターと接続したワイヤハーネス、ECUなどが放射するノイズを計測するエミッション試験を行うための施設だ。このため、外部からのノイズが電波暗室の内部に侵入しないような構造となっている。

 電波暗室では、車載機器のノイズのエミッションに関する国際規格であるCISPR25に関わる試験を行う。また、将来的には顧客からの要望があり得るとのことで産業機器のノイズのエミッションに関する国際規格であるCISPR22の確認試験にも対応できるようにした。

●「“スーパーティア2”を目指す」

 これまで横浜センターでは、自動車向けコネクターを設計する一方で、そのノイズ関連の評価試験は社外サイトを使って行っていた。しかし「長い場合だと半月~1カ月待ちということもあった。横浜センター内にEMC試験室を導入したことにより、この待ち時間を短縮できる」(ヒロセ電機 取締役 技術本部 副本部長 兼自動車事業部長の岡野広明氏)という。なお、EMC試験室導入のための投資金額は数億円にのぼる。

 ただし、自動車向けコネクターの開発サイクルを従来比で3分の1程度に短縮するという目標は、単に横浜センター内にEMC試験室を導入するだけで実現できるものではない。解析技術との組み合わせが重要な役割を果たしている。ヒロセ電機では「解析と実測のコリレーション」と呼び、解析専任の技術者を置いて取り組みを進めているところだ。

 解析を担当するヒロセ電機 技術本部 SB事業部 解析課副参事の吉田智氏は「設計の初期段階における解析は、試作開発の手戻りを減らすとともに、短期開発を実現する上で極めて重要だ。そして、EMC試験室内での測定結果と解析パラメータの相関関係(コリレーション)を見ていく中で、解析モデルを簡素にして解析の作業や解析に掛かる時間を短縮できれば、開発期間をさらに短縮できる」と説明する。

 解析環境については、CSTやANSYSといった電磁解析で広く利用されているソフトウェアに、自社開発のツールも組み合わせて運用しているという。

 岡野氏は「EMC試験室、そして解析と実測のコリレーションによって、コネクターだけでなく最適なワイヤハーネスの提案なども行えるようになってきた。実際に、自動車のアンテナ関連では大手自動車メーカーと直接やりとりするようになっている。よりティア1サプライヤーに近い“スーパーティア2”を目指したい」と述べている。

最終更新:5/9(火) 7:40
MONOist