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『Fate/Grand Order VR』の制作事例をもとにUnityを用いたPS VR開発環境を紹介【Unite 2017 Tokyo】

ファミ通.com 5/9(火) 22:27配信

文・取材:編集部 ばしを

●最新のPS VR向けコンテンツ制作事例を紹介!
 2017年5月8日、9日の二日間、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは、Unity開発者や学生を対象に最新の情報と実践的なセッションを提供するカンファレンス“Unite 2017 Tokyo”を、東京国際フォーラムにて開催。Unity for PS4を用いて開発が行われているプレイステーション VR(以下、PS VR)用ソフト『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』について、最新の制作現場の裏側が語られたセッション“最新PS VRコンテンツ制作事例紹介 with Unity”の模様をお届けする。

 本講演でスピーカーとして登壇したのは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)ソフトウェアビジネス部 次長 SIEJA制作技術責任者 秋山 賢成氏、カヤック クリエイティブ・ディレクター 天野 清之氏、ディライトワークス 新規事業開発室 VRセクション テクニカルディレクター 荻野 洋氏、同じくディライトワークス シニアグラフィックデザイナー 潘 志浩氏の4名。
 まず始めに、秋山氏による議題として、“VRコンテンツ表現方法”の紹介が行われた。秋山氏が称えるVR表現手法は、“360度動画をベースにしたVRコンテンツ制作”、“VR空間を活かして、既存の動画素材を活用する表現技法”、“フルCG世界の実在体験・世界への干渉”の3点。
 まず、360度動画については、両端が綺麗に連結するようにステッチング(画像をつなぎ合わせる処理)されたパノラマ動画を3D天球に貼り付け、その映像をVRを通して見ることで、360度の全方位が見渡せる映像表現のこと。これは、既存の映像技術を使い、比較的シンプルにできるVR体験になる。それでは、360度動画をPS VR上でどのようにしてアプリにしているかについては、PS VR向けに最適化された“4K対応360同動画再生用のUnity Plug-in”を、SIEが制作しているとのこと。お試し版も用意されているので、こちらを利用したいデベロッパーの人は、SIE Developerサイトまでリクエストをいただきたいと、秋山氏。

 もうひとつ、既存の動画素材をうまく活用しつつ、VRで最適化をしていく表現技法についても紹介。こちらの表現技法については、カヤックとのコラボによって、新しいコンテンツがいままさに生み出されようとしているとのことで、これよりカヤックの天野氏にスピーカーをバトンタッチ。

 天野氏は、対象物に映像を投影することで新たな体験をもたらす表現手法、プロジェクションマッピングをVRに用いた“超立体空間 VRプロジェクションマッピング”についての説明が行われた。VR空間上でプロジェクションマッピングをすることで、現実的な空間で感じられる迫力のある映像体験が提供されるだけでなく、VRプロジェクションマッピング空間でしか体験できない仮想現実ならではの立体的な空間演出も再現されると語る天野氏。現在、西尾維新・作の青春怪異小説『傷物語』を用いたコンテンツの制作を進めているとのことで、公式サイトでは2017年5月20日に開催される先行体験会の応募受け付けが、2017年5月10日23時59分まで行われている。

『傷物語VR』公式サイト
https://app.aniplex.co.jp/kizumonogatari-vr/(⇒こちら)


 360度映像というと、球体のモデリングに映像を貼り付けたものが一般的になっているが、VRプロジェクションマッピングでは、まったく新しい映像視聴体験を提供するため、“オールラウンド・マルチディスプレイ”、“ショートディスタンス・サウンド”、“バーチャルフラット・シェーダー”という3つのオリジナル技術を開発。
 “オールラウンド・マルチディスプレイ”は、VR空間上に自然な方法で映像を表示するための技術。天野氏は、VR空間上でいきなり過剰な演出を行うと、ユーザーがそのシチュエーションを理解できず、結果的にVR空間に没入するまでに時間を要してしまったり、酔いを発生するなどの弊害が発生すると語る。そこで、誰でもがすんなりと世界に入り込める演出法として、VRプロジェクションマッピングが用いられているとのこと。
 “ショートディスタンス・サウンド”は、近距離や遠距離といった空間での位置関係によって音を出す演出技法に、さらに仮想空間上の音の演出を合わせた技術。
 “バーチャルフラット・シェーダー”は、立体空間と組み合わせたオリジナルのシェーダー(陰影処理)で、平面的なシェーダーと立体空間とを混ぜ合わせた特殊な演出が可能になっている。

 最後の“フルCG世界の実在体験・世界への干渉”については、『Fate/Grand Order』や『バンドやろうぜ!』などのコンテンツ制作を手がけるディライトワークスの荻野氏、潘氏の2名が登壇。現在開発中のコンテンツ『Fate/Grand Order VR feat.マシュ・キリエライト』の制作事例をもとにした講義が行われた。本コンテンツは、VRデモのカテゴリーに入る、“Fate VRドラマ”というジャンルの作品とのこと。企画起ち上げ時より、SIEと相談しながら制作が進められており、制作のプロト段階となる“字コンテ”、“Vコンテ”の段階からSIEがVR制作のアドバイスを行う“VRコンサルテーション”による指示を受けながら、2017年3月に開催されたAnime Japan 2017への出展に漕ぎ着けたとのこと。

 本コンテンツの開発にUnityを採用した理由については、“(メインヒロインの)マシュが現実にいるかのように思えること”、“クオリティと開発期間、開発難易度の両立”のふたつの要件を満たすゲームエンジンとしていくつか試した中で、必要な要件を満たしつつ、リスクが少なかったためと、荻野氏。
 続けて、本コンテンツの制作に用いた“Unity for PS4”について、ほぼ完全に通常のUnityと相違ないと荻野氏は語りつつ、プレイステーション MoveのモーションコントローラーやDUALSHOCK4のトラッキングなどのプラグインが提供されていたり、ビルドの容易さ、アップデートの素早い対応なども含めた使い勝手の良さを指摘。通常のUnityを触っている人であれば、まず問題なく使用できるだろうとのこと。
 Unity for PS4でのPS VR開発についても、PlayerSettings内の“Virtual Reality Supported”にチェックを入れるだけで基本的な動作をするとのことで、ヘッドセットやカメラが外れたりといったPS VRならではのイベント処理などでいくつか気をつけるポイントはあるものの、想像以上に快適な開発環境であると語っていた。

 次に、グラフィックデザイナーの潘氏による、デザイン面の講義に突入。潘氏は、Unity for PS4の利点として、“スマホゲームを開発してきた人でもすぐに使える点”、“Asset Storeに優秀なアセットがたくさん用意されており、時間短縮が可能な点”、“わからないことがあっても、本やネットで調べやすい点”をあげ、デザイン制作のフローと構成概要を紹介。

 マシュをいかにかわいらしく見せるか。そのための手法のひとつとして、服と髪の揺れは“Dynamic Bone”を利用し、胸の揺れは“3ds Max”内でシミュレーションを行うなど、揺れる部分によって分散処理が行われていることが語られた。処理を分散した理由については、シーンの最後までシミュレーションだけで行うと破綻が起きやすかったり、細かくシミュレーションすればするほど負荷が高くなるなど、さまざまな要因によるものと説明。とくに胸の揺れについては「常に優雅たれ」と、徹底したこだわり振りを披露していた。

 セッションの最後には、秋山氏より2016年の7~8月に実施されたUnityで制作したPS VRコンテンツを募集するコンテスト、“Made With Unity Contest with PlayStation VR”の進捗報告が行われた。このコンテストでは、優秀賞こそ出なかったものの、佳作として選出された数タイトルの開発をサポートしているとのこと。現在も絶賛開発中とのことで、今後の進捗次第では、イベントなどで試遊体験が行われるかもしれないと秋山氏。続報については決まり次第、Webやイベントなどで告知すると語り、本講演は締めくくられた。

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最終更新:5/11(木) 16:01

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