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仏極右阻止はトランプ氏のおかげ? 再建担う「21世紀のナポレオン」

産経新聞 5/9(火) 7:55配信

 ポピュリズムを止める。フランスはこの目的になんと犠牲を払ったことか。保革二大政党は早々に惨敗。オランド大統領ら大物政治家がこぞってマクロン氏の援軍に回り、ようやく極右「国民戦線」の権力掌握を止めた。

 だが、最大の貢献者は、米国のトランプ大統領だろう。フランスのメディアは年明けから丹念にその失態とドタバタを伝え、有権者も「これはまずい」と頭を冷やした。トランプびいきだったルペン候補すら決選投票前の2週間は、「トランプ」という言葉をほとんど発しなかった。

 マクロン氏は今回が生涯初の選挙。議員ですらない。世論調査で「政策を評価する」と答えた人は37%。実績は目下「極右政権を阻止した」ことだけだ。

 ところが、そんな次期大統領を英雄ナポレオンになぞらえる声もある。

 フランスを代表する知識人で政治学者のドミニク・モイジ氏はその一人。「マクロン氏は『21世紀のナポレオン』になるかもしれません。何より2人が登場した時代状況が似ている」と興奮気味に語った。

 ナポレオンが歴史の舞台に登場した18世紀末、フランスは革命後の恐怖政治が終わったものの、王党派の反乱やクーデター騒ぎで混乱し、力のある指導者が待望されていた。

 今も状況は同じ。二大政党が失墜し、左右両極のポピュリストが跋扈(ばっこ)する。「そこに突然、マクロンが現れた。ナポレオンが崩れた国家を立て直したように、ポピュリズムを撃退した勢いに乗って、古いフランスを変えられるかもしれない」とモイジ氏は言う。

 39歳のマクロン氏は仏史上最年少の大統領になる。ナポレオンは34歳で皇帝となった。しかも、マクロン氏が大ナタを振るえる環境がある。政敵が皆無なのだ。

 今回の選挙で「政党政治の終焉(しゅうえん)」(フィガロ紙)というべき巨大な空白が生まれた。最近の世論調査ではマクロン氏の政治運動「前進」が、6月の国民議会(下院)選挙で首位になる勢いだ。昨年誕生したばかりの前進はまだ14人しか公認候補が決まっていないにもかかわらず、である。一方で、社会党も共和党も、誰が党再建を担うのかすら決まっていない。

 7日、マクロン氏の勝利集会には20代の若者が多かった。陣営には、選挙権のない高校生がボランティアとして多数参加した。

 少子化を食い止めたフランスは4人に1人が20歳未満。日本に比べ格段に「若い国」が、若い大統領にかけた。古い階級や習慣でがんじがらめになった社会に革命を起こせ-。そんな若者の熱意は、冷めるのもまた早い。(外信部編集委員 三井美奈)

最終更新:5/9(火) 7:55

産経新聞