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八田像修復、台湾慰霊祭で対日温度差 市長「絆強く」/蔡総統は欠席

産経新聞 5/9(火) 7:55配信

 【台南=田中靖人】台湾南部・台南市の烏山頭ダムで日本統治時代の技師、八田與一の銅像が損壊された事件で、像の修復が終わり8日、例年通り慰霊祭が行われた。日本統治時代の評価によって支持政党が大きく分かれる台湾では、八田像をめぐる立場が政治的な論争の具となった。

 没後75年のこの日の式典には約700人が出席。日本側は八田の親族や出身地、金沢市の市長、対台湾窓口機関、日本台湾交流協会台北事務所の沼田幹男代表(駐台大使に相当)らが、台湾側は行政院農業委員会の林聡賢主任委員(農林水産相)らが参列し、地元メディアも注目した。

 事件は、反日的な中台統一派の政治団体に所属する男女が実行。この日も数十人が会場外で「日本人は出ていけ」などと叫んだ。これに対抗する台湾独立派の約50人も現場を訪れ、双方がにらみ合った。

 頼清徳台南市長は式典で「像を破壊した者のたくらみは成功せず、日本と台湾の友情は以前よりも強まった」と強調。頼氏は事件後、日本語で慰問の手紙を送るなど日本側関係者への配慮をみせた。頼氏は与党、民主進歩党で次の総統候補の一人と目されており、対日感情が良好な党支持者に改めてアピールできた形だ。

 対照的に、同じ民進党の蔡英文総統は距離を置いた。自由時報は4月24日付の東京特派員のコラムで、八田像は「台日友好の象徴」だとして、蔡氏に式典を主催するよう呼びかけた。ダムの管理者、嘉南農田水利会も招待状を送ったが、蔡氏は北西部・桃園市で漁港を視察するなどして式典に顔を見せなかった。蔡氏は事件後、八田に関する発言をしておらず、八田像を「植民地時代の美化」とみる野党、中国国民党系の一部支持者からの批判を恐れた可能性がある。

 一方、国民党では、主席選に出馬している呉敦義前副総統が、過去に慰霊祭に参加したことを「八田を崇拝した」などと批判され、釈明に追い込まれた。国民党の関係者には公有地から蒋介石像を撤去した頼氏への不満が強く、頼氏を「媚日派」などと批判している。

最終更新:5/9(火) 8:08

産経新聞