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【BARKS編集部レビュー】Unique Melody MASON IIのサウンドの秘訣はローにあり

BARKS 5/15(月) 8:35配信

正直に言えば、2014年秋に初めて登場したときの初代MASONのサウンドはとても衝撃的だった。イベント会場という騒がしいところでの慌ただしい試聴だったので、果たして正しい判断ができていたのかはちょい怪しいのだけど、少なくともその時の自分の耳には、目をひん剥くほどぶっ飛んで高品質なサウンドに聞こえた。バランスド・アーマチュアの特性が前面に出ておりダイナミック・ドライバーを思わせる甘さや滑らかさはゼロ、触るだけでスパッと切れてしまうような鋭利さを持った危険なほどに研ぎ澄ましたサウンドが鳴っていた。それはまるで執拗なストイックさでフォーミュラーカーをチューンするような、カリッカリに攻めたトーンだった。

◆Unique Melody MASON II画像

ふくよかさや暖かさは微塵もなく「これは10分でどっと疲れてしまいそうだな」とも思ったものの、「12個ものドライバーをかっちりシンクロさせれば、こんなナイフのようなサウンドもできるんだな」と感銘を受け、いつかカスタムIEMとしてオーダーするぞと小躍りした。…のも束の間、ほどなくしてメーカーからチューニング変更のアナウンスが入り、初代MASONは幻のモデルとなってしまった。うわ残念…と思いつつも、あまりに攻めすぎたサウンドは酔狂な廃人にしか響かないであろうから、それもやむなしと思ったものだ。

そんな経緯もあり、MASONといえばどうしてもカリカリチューンを期待してしまう悪い癖が抜けないのだけれど、大きくチューニングを変え2016年12月に登場したのが、このMASON IIとなる。名前自体と12ドライバーというスペックは変わらないものの、使用ドライバーからネットワークまで中身は一新されており、完全に生まれ変わっての登場となった。


初代MASONから大きく正当進化を遂げ、MASON IIは極めて常識的なバランスを持ち、決して逸脱しないお行儀の良さを携えている。低域の量もごく標準的で決して量感が多いわけではないのだけれど、超低域の再生能力が高いのか、空気が震えるような「ドフッ」という空気の動きを感じさせるような“重たくも俊敏な質感”が味わえる。にわかにBAドライバーからの低域とは思えないような肉感的なサウンドで、26インチ・ベードラの低域の心地よさもそのまま堪能できる余裕を有している。

この低域が作り出す音楽の地盤こそが、その上に乗る中~高域の伸びの一助となりイヤホン独特の圧迫感を軽減させているようだ。開放感のある天井の高い空間を感じさせてくれるMASONの秘密は、どうやら上質な低域の再現能力の高さにあるというわけだ。ことイヤホンにおけるサブウーハー領域の再生能力に関しては、音楽/音源/プレイヤー/聞き手という全ての条件が高次元にマッチしないと評価対象にすら上がらない現実もあり、ここまで端正に追い込んだモデルはさほど多くない。表層的な美貌よりも内面の品質にコミットした設計思想という意味では、初代MASONの精神性はそのまま脈々と生きているのかもしれない。

なお、12ドライバーのカスタムIEMということで、JH AUDIO Laylaとの比較だが「おらおら、わしがJH AUDIOのハイエンド、天下のレイラ様じゃ」と言わんばかりの濃密さと押しの強い音圧を誇るモデルなので、MASON IIとLaylaはキャラが違いすぎて比較するのもナンセンス…と思ったのだけど、実際に聴き比べてみるとMASON IIの方がクリアながらもむしろパワフルに聴こえるという、予想外の印象だった。MASON IIの高域が分析的な鳴り方に聴こえることが分離とメリハリの良さにつながり、そのような感想に至ったのかもしれない。これは素直に「12ドライバーを乗せたのは伊達ではない」といったところだろうか。ちなみに、Laylaの低音調整はセンターにセットした状態での比較だけれど。

MASON IIの場合、各帯域のディテールが簡単に聴き取れるので、ボーっと聴いていても表情豊かな音楽が脳内を満たしてくれる。端正なサウンドバランスながら音楽表現もお得意とくれば、オーディオファイルにとっての高級イヤホンという位置付けのみならず、いわゆるステージ・イヤモニとしてアーティストが使用するカスタムIEMとしても非常に優秀な機材なのではないかと思うんだけど、アーティストの皆さん、いかがですか?

ちなみに、イヤホンマニアにとってはMAVERICKとの比較も気になるところだが、使い込むほどに心地よいサウンドに変貌していき、近年すっかりお気に入りとなっていたMAVERICKなのだけど、我ながら現金なもので今ではMASON IIの方が使用頻度が上がっている状況だ。ま、MAVERICKに関しては先日発表されたMAVERICK IIカスタムのサウンドが一聴して“完璧”と言いたいほどのフレッシュ&ジューシーな素晴らしいサウンドだったので、気持ちがそっちへぐいっと引き寄せられちゃっているのもあるんですが…。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●Unique Melody MASON II

・ドライバー:バランスド ・ アーマチュア型(BA 型)
・ドライバー構成:12 ドライバー Low x 4, Mid x 4, High x 4
・クロスオーバー:3 ウェイ ・ クロスオーバー
・周波数特性:20Hz - 20kHz
・入力感度:111.4dB@1kHz
・インピーダンス:22.1Ω
・入力端子:3.5mmミニ端子
・出力端子:2Pin 端子
・付属品:メタリックキャリングケース、IEM Cable、クリーニングツール、保証書(1年間 )

最終更新:5/15(月) 8:35

BARKS